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          「縁の綱」が渡る夕刻の本堂前 / いま境内一の紅葉の楓 マウスを載せれば写真が変わります

 やっとお天気が安定して、秋晴れの日が続くようになりました。でも、もう‘秋晴れ'ではありませんね。7日は立冬です。
 つい先日まで、「暑い」と言っていたのが、最低気温も10度を切るようになりました。秋はどこへいってしまったのでしょう? ここ数年、‘秋らしい秋'が短くなってしまいました。
 もう早、11月。紅葉の季節が近付いて来ました。観光客らしい人影が、境内にも増えてきました。
 今年の紅葉は? ネットを見ていても、早い、遅い、きれい、ダメなど、いろいろな予想が出ていますが、どんなものでしょう?
 木による個性はありますが、真如堂の今年の紅葉は例年通りかわずかに早いように感じます。11月末が一番の見頃でしょうか?
 「木による個性」と書いたのは、例年見事に色付いてくれる楓や無患子が、今年はちゃんと色付きもしないで散っていっています。すべての楓がそうなのではなく、ある木はぜんぜんダメなのに、例年はパッとしない木が今年は素晴らしい色付き具合を見せてくれています。木の‘年齢'ほぼ同じですから、生えている環境の微妙な違いによって、そんな差が生まれているのでしょう。
 12月半ば頃になって、「今年の紅葉は・・・だった」という全体的な評価は出せますが、人間に体調があるように、それぞれの木にも、毎年‘調子'の善し悪しがあるのだと思います。
 紅葉は、一期一会です。




       眞   青   な   る   紅   葉   の   端   の   薄   紅   葉         高浜虚子






             ひっそりと真っ赤に咲く椿 / 黄金色の菊渓菊    マウスを載せれば写真が変わります
 境内では、花の姿がほとんど見られなくなってきました。そんな中で一番目立っているのは、茶所前の琉球朝顔。花が小さくなって、色も薄くなってきましたが、今日も30輪ほどは咲いていました。
 そんな中、ひっそりと寒椿や山茶花が咲き始めています。
 この花は真っ赤な大輪なので、遠くからでも目立っていますが、白い花は葉に隠れて見落としてしまいそうになります。紅葉が真っ盛りな時でも、境内のどこかに必ず咲いています。
 垣根をよくご覧になると、お茶の木も花を咲かせています。白くて、黄色い大きい蘂の花です。そんな花を見つけると、きっと得をした気分になりますよ。
 境内の野路菊の開花はもう少し先になりそうですが、自坊では菊渓菊(泡黄金菊)が、開花間近になってきました。この菊は、かつて東山区の高台寺の山の「菊渓」に自生していました。
 説明が長くなりますが、高台寺付近の地名を「下河原」といい、その名は菊渓から流れる出る菊渓川と清水・音羽山からの轟川が合流したこの辺りが川原であったことに由来します。菊渓川は東山から高台寺境内の北を西に流れ、 円徳院などの塔頭群と町家貸地の境界を南北に流れ、轟川と合流して西へ進み、建仁寺境内を通って鴨川に注いでいたようです。今はほとんどが暗渠となっているため、川があったことはわかりません。
 数年前に、京都府レッドリスト(2016年版)では絶滅危惧種に指定されているこの菊渓菊の苗を、数年前にご近所の方から譲り受けました。それを挿し木して増やして、境内に地植えしたり、鉢植えで保存したりしています。
 小さく地味な花ですが、自坊にお越しになるとご覧いただけます。紅葉プラスアルファをお楽しみください。
 5日からは、「十日十夜別時念仏会」が始まり、凜と冷えた夜の境内に澄んだ鉦の音が響き渡ります。




        冬  来  る  眼  を  み  ひ  ら  き  て  思  ふ  こ  と          三橋鷹女