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最初の写真をご覧になった方は、「えっ! もうこんなに紅葉しているの?」と驚かれるかも知れません。‘裏写真’をご覧ください。まだ、緑色でしょう? 境内全体の雰囲気は、ちょうどこの中間ぐらいですよ。
「引声」とは、経文の1字1字に長い節を付けて唱える声明の一種。 真如堂の御本尊を彫られた慈覚大師は、入唐求法の旅の中、五台山において、文殊菩薩から「引声阿弥陀経」を伝授されたといいます。帰国後(847)、大師はそれを比叡山に伝え、また大山寺(鳥取)や魚山(京都大原)、そして真如堂にも伝承されました。 応仁の乱(1467〜1477)の時、真如堂の堂塔は打ち壊しに遭い、その後寺地を転々としますが、その混乱の中、引声阿弥陀経会は次第に衰退していきましたが、江戸時代中期の延享年間(1744-1747)、三井家の援助により、大山寺に相伝されていた譜をもとに再興されました。本堂内陣に引声塔を立て、僧衆が律衣を着用する現在の形は、この時以来のものです。また、法要期間中、脇陣には念仏行者の守護神といわれる摩多羅神をまつります。 普段と違う節回しを使うので、初日はなかなか調子が揃いません。3日目の今日は、ようやく少し‘上手’になってきました。 長くて、あまり抑揚のない法会ですが、年中行事としては真如堂でしか行われていないとあって、今日は浄土宗の僧侶の方など聴聞されました。 この法会が終わると、いよいよ紅葉シーズンが近付いてくるという実感が湧いてきます。
貴船菊(秋明菊)が、境内の所々で風に揺れているのが、秋の趣を増してくれます。石蕗の花も咲いています。 何といっても、秋は実りの季節。銀杏がたくさん落ちるようになったので、職員さんが皮むきに精を出しています。その臭いが寺務所まで漂って来て、風向きに寄っては耐えがたい時があります。 墓所などにたくさん生えている南天の実が、赤く色付いてきました。熟して赤くなるのは、鳥に見つけてもらいやすいようにするため。その甲斐あって、境内のあちらこちらで、鳥が運んだと思われる種が発芽しています。 本堂裏の山茱萸の実も、真っ赤。日が当たるとキラッと輝いて、何とも美味しそうです。でも、鳥も食べないところを見ると、味は推して知るべしです。あっ、ぐみの実を見に行ってこなくちゃ! 10月も半ばを過ぎました。日も短くなって、もうしばらくすると暖房が欲しくなってきそうです。 秋の好期、皆さん、どうぞお楽しみください。 あ き ぐ み に 陽 の 匂 う 風 吹 き 来 た る 金子兜太
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