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        光は春色なれど… / 雪雲に霞む西山を望む本堂回廊  マウスを載せれば写真が変わります

 今朝も氷の張る寒い朝でした。気象台の記録では氷点下にはなっていませんが、境内は市街地よりも気温が低く、ここ数日は結氷する朝が多くなっています。
 啓蟄も過ぎ、日が長くなって、光の色も春めいてきましたが、風は真冬並。うっすらと雪が積もったり、時には吹雪いたり、今日も比叡山や愛宕山は時おり雪雲の中でした。
 本堂の回廊を回ろうと、東側の影になっているところから、南側の陽の当たるほうへ折れ曲がった途端、「なんて温かいんだろう!」と陽の恵みに驚きました。回廊の床も床暖をしたかのように温々。
 風は冬、陽射しは春、両方がせめぎ合いをしながら共存しているようなここ数日です。




      啓   蟄   や    こ   の   世   の   も   の   の    み   な   眩   し          桂信子





                  ビオラと猫 / 満開の馬酔木       マウスを載せれば写真が変わります
 2週間ほど前に植え替えた茶所前のビオラの向こうで、夕方、猫が目を細めながらうたた寝していました。あたたかそうに見えますが、風が冷たく、猫もさほど居心地はよくないだろうと思います。
 真冬はあまり姿を見せなかった猫たちですが、最近はよく見かけるようになりました。あたたかいところを求めて、1日に何回も居場所を替えています。「真冬はどこにいたのだろう・・・」と、逆に想像します。
 猫嫌いの頃は、猫を見ると追っ払いたくなりましたが、野良の仔猫を育てて急に猫好きになった今、目を細める猫を見ていると何とも幸せな気分になります。勝手なものです。
 今日、滋賀県の山間部からお越しになった方々が、本堂から書院へ通じる渡り廊下から馬酔木を見て、「あっ、馬酔木が咲いてる!」と口々におっしゃっていました。気付かれることの少ない馬酔木の花も、見つけてもらえて本望です。
 きっと、近くの山々に馬酔木が自生しているのでしょう。自然と触れ合う機会の多い方々なのだということが、すぐにわかりました。
 あまり目立ちませんが、馬酔木はいま見頃です。

                     紅白に彩る梅花          マウスを載せると写真が変わります
 人の姿の多さからも、春を感じます。大涅槃図の特別公開が始まってからは、境内を訪れる人が一気に増えました。今日も団体が3組。「ほとんど人の来ないオフシーズンも、涅槃図のお世話になりたいなぁ〜」などと、冗談を言っています。
 桜とは比べものにはならないでしょうが、北野天満宮や梅の宮大社、随心院などの梅の名所も賑わいを見せているでしょう。まだ寒い中に凜と咲く梅の花は、魅力的です。
 自坊の前庭の白梅、紅梅も、今が盛りです。あまりにも小枝が混み合っているので、大胆な剪定をしなければいけないと思っているのですが、剪定をすると梅の実の収穫量が一気に減ってしまいます。それが勿体なくて、思い切った剪定をしないままでいます。花も実も楽しめるのが、梅のイイところです!


             ほころび始めた山茱萸 / 太郎冠者も見頃       マウスを載せれば写真が変わります
 寒くて季節が逆戻りしたかのような1週間でしたが、木々は確実に春に向かっています。山茱萸の花、開花です!
 いつも一番早く咲き始める木はまだ蕾が堅く、それ以外の木がほころび始めています。しかも、例年よりも少し早い気がします。
 人間なら、「あいつには負けないぞ!」というのがありますが、それぞれが淡々と咲いていく木々にはそんな思惑はあろうはずがありません。何が例年と違うようにさせているのでしょうか? 不思議ですねぇ
 椿もあちらこちらで見頃です。一気に木に付いている全部の蕾が開いてしまうのではないところが、椿の知恵のような気がします。
 正面参道の石段の一番下脇にある大きな藪椿の下に、花弁が少し落ちているのに気が付きました。見上げて探してみると、わずかに1輪が咲いていました。「これは斥候だな?」と即座に思いました。この大きな椿の花は、見事なぐらい一斉に咲き、木の下が散った花弁で紅くなるほどなのです。先ずは1輪咲かせて様子を見て、その結果次第で‘次なる手’を考えるのに違いありません。さて、椿は咲いてよしと思ったのか、まだ早しと思ったのか、どちらでしょう?
 今の季節、あたかも幼子が「これも出来た! あれも!」という具合に、次々と花が咲き、芽が出るのが楽しみです。さて、次は?




       チ  ュ  ー  リ  ッ  プ  買  う  て   五  分  の  遅  刻  し  て          岡田順子