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                        早朝に紅葉燃える        マウスを載せれば写真が変わります

 今季一番の冷え込みとなりました。今朝の最低気温は気象台で1.6度。境内ではおそらく0度台だったでしょう。夜中に寒さで目が覚めました。
 でも、境内は落ち葉だらけ。掃除をしていると、ポカポカと暖かくなってきました。
 今年の紅葉がこんなに早く終わって行くことを、誰が予測したでしょう? 紅葉の盛りは過ぎ、場所や木によっては、もうすっかり終わってしまいました。落ち葉の掃除も次第に佳境に入ってきています。
 早く紅葉が終わるのは水切れが原因だという説もあるようですが、夏以降、雨の降らない日が続いたこともありました。逆に、降り始めたら滅茶苦茶降りました。紅葉が始まる前から、葉先が痛んでいたり縮れている木もありました。
 素晴らしい紅葉が見られるのは10年に1度程度。まぁ、こんな年もありますねぇ。


             紅葉の影に塔あり / 人影まばらな早朝に     マウスを載せれば写真が変わります
 「この木はこの頃に見頃を迎える」という、毎年のパターンがあります。でも、今年はそれも少し違っていました。
 例えば、自坊の前にある無患子は、毎年、見事な黄金色の紅葉をもみじに先駆けて見せてくれるのですが、今年はくすんだ褐色のようになって散っていきました。本堂前の、三重塔を紅葉越しに見せてくれる真っ赤なもみじも、今年は色が冴えないまま終わりつつあります。12月初旬に‘レッドカーペット’を見せてくれる本堂の裏も、今年は見られなさそうです。
 初めてお越しになる人にはわかりませんが、毎年見ている者にとっては、ちょっと期待外れ。朝、落ち葉掃除をしていると、毎年紅葉を見ている散歩の人たちの、「今年はもう一つでしたねぇ」などという評が聞かれます。
 それでも、朝な夕なに「ハッ!」とさせられることもしばしば。そんな瞬間に、ぜひ出会ってみてください。



      紅  葉  散  る   音  立  て  て  散  る   立  て  ず  散  る         星野立子




             早朝の「涅槃の庭」 / 斜光に彫り深き砂紋   マウスを載せると写真が変わります
 僧衣を着て写真を撮っていると、あちこちから‘フォーカス’されるので、今朝は作業着を着て、首から一眼レフをぶら下げながら落ち葉掃除をして、折あらばシャッターを切りました。
 いつ美しい景色に出会うかわかりませんので、カメラは片時とも手放せません。
 書院の「涅槃の庭」に行ってみると、朝の斜光に砂紋が際立って見えました。借景の東山にはポツリポツリと冬色をし始めた木々が見えました。かつてはもっともっと色の移り変わりが楽しめた東山も、「ナラ枯れ」で山容が少し変わってしまい残念です。
 あと30分もするとこの庭も人でいっぱい。静かで人のいない畳の上に腹ばいになって、写真を撮るのに興じました。


        書院「四季殿」の紅葉と菊 / 朝日に霞む野路菊     マウスを載せれば写真が変わります
 書院の中では、貫主の作った嵯峨菊や肥後菊などが楽しめます。菊は、例年とさほど変わらない咲き具合のように見えます。
 境内のあちらこちらでは、白い野路菊が情趣いっぱいに咲いています。
 北参道に垂れて咲く様子や、黒谷に通じる参道にまだ小さいながらもズラッと並び咲く景色は、‘紅’に飽きた目をリフレッシュさせてくれます。何よりも、花屋には置いてないような野性味溢れる様子が何とも可憐です。
 来週のこのページは、冬景色が幅をきかせるようになっていることでしょう。ぜひともお早めにお越しください。目にも鮮やかな最後の紅葉が、皆さんを迎えてくれるでしょう。



    た  ま  し  ひ  の   し  づ  か  に  う  つ  る   菊  見  か  な         飯田蛇笏