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     汗を拭き拭き本堂へ着く / 静まりかえる正面参道   マウスを載せれば写真が変わります

 九州の大雨のニュースを見るにつけ、心が痛みます。「これまでに経験したことのないような大雨」という表現に恐ろしささえ感じます。皆さんのところは何も被害はありませんでしょうか?
 京都は天災の少ない土地だと思います。だから長い間、都があったのだ、「京は王城の地」という言葉をいまだに聞きます。
 しかし、今の京都は、1年のうちで、もっとも過ごしにくい時期の一つです。
 「東京は30度を超えました」などとテレビで言っているのを聞くと、「30度がどうしたっていうの?」と、思わず突っ込みたくなります。京都では、今月の半分は30度を超え、おまけに風がなくて湿度が高く、それはそれは耐えがたいものがあります。
 そんな気候のもと疫病が流行り、それを退散させるために始まったのが、まさにこれからクライマックスを迎える祇園祭です。
 最高気温32.5度の今日でしたが、緑に囲まれた境内は街中よりも気温が低く、まだ我慢が出来ました。
 「六阿弥陀巡拝日」の今日は、参拝の方が次々と訪れました。境内の中でもひときわ涼しい本堂にお参りした人たちは、汗を拭いながらお茶を召し上がったり、しばらく涼んだり。それも‘ご利益’かも知れません。
 先日より蝉も鳴き始めました。耐えがたい蒸し暑さのピークはまだこれからです。




    緑   陰   を   あ   な   た   と   行   く   わ   魚   呼   吸        三宅やよい





  いきなり噴出した茸群 / 食べられると言うけれど、食べたくない マウスを載せれば写真が変わります
 ジメジメした境内のあちこちでは、たくさんの茸が見られます。
 木の古株から生えてきたもの、地面からいきなりニョキッと出没したもの、形も実にバラエティーに富んでいます。
 かつて真如堂に勤めていた人に、そんな茸を採ってきては食べている人がいました。
 回りの制止にも耳を貸さず、古典的な俗説に基づいて、「茎が縦に裂けるのには毒がありませんにゃ」などと言っては茸狩りをしていましたが、とうとう腹痛を起こし、それ以来、公然と茸狩りするのは止めました。腹痛ぐらいで済んで、本当によかったです。
 今も散歩をする人の中に、「これはキクラゲですよ」と、古株に密生した茸を採って帰る人がいます。確かにそうかも知れませんし、天然の茸はさぞかし美味しいでしょうが、ボクはチャレンジする勇気はありません。


              緋色の花と句碑 / 紅白あり紫あり 木槿  マウスを載せると写真が変わります
 花が少なく思える境内ですが、案外、いろいろ咲いてるものです。
 鐘楼脇の紫陽花は、まだもう少し見られます。
 茶所脇の去来句碑の横には、緋扇水仙が鮮やかな花色を見せています。
 緋扇(射干)は桧の扇に似た形の葉に緋色の花が咲くもので、祇園祭には付きものの花です。和歌では「夜」などを導く枕詞として「ぬばたま」という言葉を使いますが、これは緋扇(射干)の黒い種のことだそうです。
  緋扇水仙は色こそ似ていますが、南アフリカ原産で、似て非なるものです。
 見方によっては洋花っぽくて苔庭には不似合いにも思えますが、その鮮やかな色は梅雨のジメジメ感を吹き飛ばしてくれそうです。時おり大きな黒い蝶が来て、ふわりふわりと舞っていますよ。
 総門内の木槿も、先週よりも咲いている株が増えました。10数本ある株のほとんどが品種を異にしているので、咲く時期も微妙に違います。
 「私はこれが好き」「私はこっちがいいわ」と、好みが分かれそう。盛夏にも咲き続けてくれる有り難い花です。
 世は3連休。皆さん、いかがお過ごしでしょうか? 熱中症などにお気をつけください。





     射   干   に   そ   の   花   色   の   蝶   の   来   る        橋爪靖人