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            誰が散らしたか藪椿 / 花色みっけ!      マウスを載せれば写真が変わります

 家の中より外にいる方があたたかい日でした。外は生暖かい風が吹き、土の中のバクテリアが活動を始めた‘春の匂い’があちこちでしていました。
 人の姿も多くなってきて、ベンチに座っておやつを食べたりする光景も見られるようになってきました。春を待ちわびておられるのでしょう。
 境内の変化はまだ爆発的ではなく、うっかりすると見過ごしてしまいそうです。
 先週は盛りだった正面参道下の椿が、今週は花色も褪せ、樹下には花びらがまき散らされています。散り椿ではないのですが、高いところから落ちてくる間に、花びらが散り散りになるのでしょうか? 樹下も見どころです。
 今日、京都市内を走っていて、満開の桜を何本か見ました。染井吉野とは違うでしょう。
 日本気象協会などによると、京都の開花日は4月2日と少し後退しました。いつまでも寒い日が多く、花芽の生長が遅れたためで、見頃は9〜16日頃とか。
 平安神宮付近の琵琶湖疎水を十石舟で巡る「岡崎桜回廊十石めぐり」も29日から始まり、30日からは初の夜桜運航もあるそうですが、まだしばらくは少し膨らんだ蕾を見るだけになりそうです。
 境内に約70本ある桜は、もちろんまだ1本も開花していません。境内の開花は気象台の開花宣言よりも少し遅れるので、染井吉野の開花は3日頃でしょうか?
 境内で一番早く開花するのは、総門前にある4本の桜のうち一番総門に近い木ですが、これも染井吉野ではありません。ほぼ同時に、三重塔脇の枝垂れ桜や本堂南側の縦皮桜が開花して、いよいよ境内の桜シーズンも幕開けです。
 わくわくしますね!


              見上げてハッとする花の木の花      マウスを載せれば写真が変わります
 夕方、三重塔の横を通る時、「花の木」の真っ赤な花が西日に照らされてとても綺麗でした。
 先週は、境内に数本ある花の木でも、花が咲いている木はわずかでしたが、今日はほとんどの木が咲き始めていました。
 動物、植物を問わず、雌よりも雄のほうが‘きれい’なのは常識? 雄株と雌株がある花の木の花も、もちろん雄株の花のほうがきれいです。朝や夕方の光を透かして見るとなおさらきれいですよ。
 桜にばかり見とれていないで、他の花や木々にも目をやってみてください。ビックリするように美しい光景に出会えます。出会うべくして出会った景色よりも、予期もせず見てしまったハッとするような風景に心を奪われる季節。それが春ですね。




    う   ぐ   ひ   す   の   笠   お   と   し   た   る   椿   哉        松尾芭蕉






       頭を垂れる三椏の花 / 満開なのに目立たない馬酔木   マウスを載せると写真が変わります
 この花は何かおわかりになりますか? 三椏(みつまた)です。和紙の原料となる木です。この木は、園芸品種の赤花三椏で、一昨年頃に植えた幼木です。
 枝が必ず三つに分岐するのが名前の由来で、沈丁花の仲間です。
 「春されば まづさきくさのさきくあらば 後にも逢はむ な恋ひそ吾妹」と柿本人麻呂が詠んでいるように、春真っ先に咲くので、万葉の頃は「さきさく」と呼ばれていたようです。わかりやすい・・・。
 鮮やかな花色を見せてくれているのに、気付く人はほとんどおられません。
 本堂裏の山茱萸(さんしゅゆ)は、ピークを過ぎて、花色が少し薄くなってきました。一面が黄色く煙るようで綺麗ですが、もうしばらくで見頃も終わりです。

        山茱萸の黄に染まる景色/ 気の早いもみじの芽吹き   マウスを載せれば写真が変わります
 本堂北側の馬酔木は、絶好調です!
 先日、植木屋さんが来たので、「今年は馬酔木がいいですよ。土壌改良してもらったお陰でしょうかねぇ」と言ったら、「そうですか! 圧力を掛けて、肥料や空気を送り込んだので、土がふんわりしたのでしょう!」とずいぶん喜んでおられました。「でも、今年はどこでも馬酔木が調子よさそうですよ」と重ねると、「・・・ あっ、そうですね」とガッカリ。可哀想なことを言ってしまいました。
 本当に、今年は花も多く、花の色も透明感があって、とても綺麗です。ぜひともご覧ください!
 境内にお越しになって、あっちもこっちも花を探してくださいね!




     三   椏   が   咲   い   て   き   の   ふ   の   夢   枕          手塚美佐