12/22版 




       冬景色に一変した境内 / まだ枝離れしない葉もいっぱい   マウスを載せれば写真が変わります

 すっかり静まりかえった境内。葉を落とした木々たちがその姿を顕わにして、遠くまで見通せるようになりました。
 時々、観光客らしい人の姿が見えたり、歩こう会の人たちが騒がしく通り過ぎたりしていましたが、それ以外に人の気配はなし。
 そんな静寂さを台無しにしていたのはカラス。50羽、ひょっとしたら100羽ほどもいたかも知れません。本堂の屋根、塔の三層目、境内の高い木の天辺などに留まったり、ワァーッと飛び立ったり。その間もずっと、「カァー カァー」と集団で鳴いていました。
 最近、白川通から上がってくる参道の木を剪定しましたが、ねぐらが無くなったとでも怒っているのでしょうか? ここのところ連日です。
 明日からは気圧の谷や寒気の影響で雪が降るかも知れないという予報。今日は時雨れることもありましたが、まずまずのお天気でした。


      落ち葉を満載して疾走する! / こんな袋が百近く!   マウスを載せれば写真が変わります
 人がいなくなった境内は、落ち葉掃除のやり放題! 松葉杖のボクにはうらやましい限り。積み重なった落ち葉をブロアで吹き飛ばして集めるのは、何とも爽快なのです。
 その作業も終盤。ほとんどの場所は掃除し終わって、最後まで本堂裏の‘敷き紅葉’だけが観光客のために残してありました。
 ‘敷き紅葉’も今年はあまりきれいではなく、今となってはただのチリチリに縮れた枯葉と化していました。ブロアで事も無げに吹き集められた落ち葉は、大きな袋に詰められて軽トラックでピストン運送。
 赤茶色の落ち葉がなくなり、冬枯れた緑の地面が顔を出して、景色も一変しました。
 まだところどころに枯れたまま枝にしがみついている葉が目立ちますが、風が吹く度、雨が降る度に、辛抱しきれずに落ちてゆくでしょう。
 落ち葉掃除は、年を越してまだしばらく続きます。




     冬   木   立     お   と   ぎ   の   国   へ   続   く   道          松永静子






       真っ直ぐな銀杏、まがるもみじ / 種だらけのもみじ    マウスを載せると写真が変わります
 紅葉の境内はとても華々しく、新緑の境内も清々しく、共に人を魅了させるのには十分過ぎるくらいです。
 でも、木々を観察するなら、これからの季節が一番。冬は、木の形や枝ぶり、健康状態や樹齢などがよくわかります。
 木々のメンテナンスでも、枝や根が休眠している冬だからこそできることがあります。寒肥を施したり、カイガラムシやハダニなどの防除作業もあります。もちろん、剪定などもやりやすくなりますが、‘寒がり’の木もありますから要注意。
 そして、紅葉の時期に踏み荒らされてしまった地面を‘蘇生’させるのにも大切な時期です。
 落ち葉を掃除していると、踏まれてツルツルになった地面が出てきます。一人、二人が歩くならまだしも、紅葉期は何千人、何万人という人が境内に来て、通路ではないところまで立ち入ります。その踏圧は、木々の根に大きなダメージを与えます。
 冬の間に少しでもそのダメージから快復してくれるよう、境内を回りながら、「ゆっくりしてね」とささやきたい気分です。


       美味しそうな鵯上戸は有毒 / 目に鮮やかな隈笹    マウスを載せると写真が変わります
 境内が次第にモノトーンの世界に変わってきました。わずか1ヶ月足らずの間の劇的な変化です。
 溢れんばかりの色に覆われた紅葉の季節が終わってモノトーンの世界に変わってくると、少しさみしくなって、‘色’の着いているものを探したくなります。
 冬の鳥たちもそんな心境なのでしょうか? 南天、千両、くちなしの実も赤くなっていました。
 「あっ、鵯上戸ひよどりじょうごの実はどうなったかな?」と秘密の場所を見に行くと、少し皺っぽくなっていましたが健在でした。
 熟したこの実をヒヨドリが好んで食べるのがその名前の由来と言いますが、ボクはそんな姿は見たことがありません。でも、なかなか素敵な名前だと思いますね。
 寒くなると、白と緑のコントラストが際立ってくるのが隈笹くままざさ。お飾りや門松、お墓の供花などにも使う、何とも正月らしいものです。
 ボクは子供の頃、この笹は熊が好んで食べるのだと誤解していましたが、長じてから、実は好むのは近くの料理旅館の板場だと知りました。盗って逃げようとするのを、何度か捕まえましたので。
 次第に冬枯れとなりゆく境内も、いろいろな楽しみが待ち受けてくれているものですね。
 年末、お忙しいことと思いますが、どうかご自愛ください。




     杖   先   の    石   こ   ろ   と   て   も    冬   至   か   な           村越化石