12/10版
一時のあの喧噪、人混みが嘘のような静かな境内。残り紅葉を見ようと訪れる人がわずかにおられるので、普段とは少し違うものの、日に日に‘いつもの’真如堂に戻りつつあります。 わずか1週間、10日ほどでこんなにも違うものでしょうか・・・。今年は例年にも増して、引き潮の如く、サッと人影が境内から消えていきました。 やっと、紅葉が楽しめます。人の多い時は紅葉どころではありませんでした。人が多い時は写真を撮るどころではありませんでしたが、今日はやっと思うがままに撮れました。 今の紅葉の美しいこと! 境内の其処彼処にある‘残り紅葉’の色がひときわ澄んで見えます。しかも、ゆっくり、たっぷり、独り占めできます。何という贅沢! 燃 え 残 り ゐ た る 紅 葉 に ほ と 焔 星野立子
いま、境内で紅葉の名残があるのは、自坊の前と本堂裏。例年通りです。 色が澄んでいるのは自坊の前。朝な夕なに実にきれいです。また、散り積もった葉が、朝方の時雨れに生気を取り戻して、紅く、黄色く、これもまたきれい! 圧倒的な紅葉よりも、今のほうが情趣や深みがある気がします。 どこを向いても紅葉だらけという景色よりも、向こうに見える鮮やかな景色を求めてだんだん近付いていき、たどり着いたら澄んだ色の紅葉が眼前に広がるというほうが、楽しみが大きい気もします。 ボクは今の時期の紅葉が一番好きです。
最初は1週間程度遅れていたのが、急な冷え込みで一気に色付きました。雨も適度に降っていたので、もみじの葉も元気でした。ところが、中盤から冷え込みが弛み、雨も降らなくなって葉が乾燥して縮れてきてしまいました。 後半はすっかり期待はずれ。紅くならずに茶色くなってしまうものもありました。そして、例年よりも早く散っていきました。それに呼応するかのように、人の姿も消えていきました。 そして、いまの残り紅葉。枝に付いている紅い葉、そして地面に敷き詰められた紅い落ち葉。静寂とゆったりとした時の流れの中で、そんな景色が心から楽しめます。
本堂裏のもみじが真っ赤に紅葉せず、黄色くなって落ちてしまったのです。その上、落ち葉が乾いて元気がありませんでした。‘真っ赤’というよりは、少し茶色い敷き紅葉でした。 いまも数本の木に赤や黄、緑の葉が残っていて、日が差すと深みのある紅葉が見られます。ここも見どころの一つです。その他の正面参道や本堂の南北などは、ほとんど散ってしまいました。 葉を落とした木は、その枝振りや形が実によくわかります。夕焼けの頃などは木の形がシルエットになって、それもまたきれいです。今の季節は、そんないろいろな楽しみ方ができる季節です。
昨日、お隣の金戒光明寺をバイクで通り抜けしましたが、もみじが少ないながらも、落ち葉の回収作業をしておられました。知り合いの南禅寺の和尚も、落ち葉を吹くブロアの音が賑やかだと言っておられました。 膨大な量の落ち葉。かつては熊手などで集めていましたが、今はほとんどの工程がブロアです。ブロアは、箒よりもよほど効率がいいですし、苔などを痛めることもなく、物陰の落ち葉まですべて回収できます。また、砂利などが混じることも少なくて済みます。難点は大きなエンジン音。それも今では風物詩です。 以前は落ち葉を燃やして焼き芋などを楽しんでいましたが、いまは環境のためということもあって、あまり燃やすことはありません。フレコン(フレキシブルコンテナバッグ)という大きな袋に詰めて近くの総合支援学校に持って行き、そこで畑の堆肥や茸作りの培地として活用してもらっています。(新聞記事) 境内の落ち葉がそんなふうに‘第2の人生’を過ごせるなんて、落ち葉冥利に尽きるのではないでしょうか!? そろそろ運搬作業が始まります。 落ち葉の回収作業が一段落する頃は、もうすっかり年末ですが、境内のどこかには、‘最後の一葉’が残っているかも知れませんね。 静かな残り紅葉の境内、イチ押しです!! 落 葉 踏 み さ だ か に 二 人 音 違 ふ 殿村菟絲子 |