12/2版
紅葉も終盤。境内を訪れる人も一気に減って、比較的ゆっくりと散策できるようになってきました。 あまりもの人出に、境内に出る気も失せていましたが、今日はカメラを持って何度も境内に繰り出しました。 毎年、紅葉の頃には自坊の大屋根の上から境内を撮りますが、「こんな天気のいい今日こそ!」と屋根に登りました。残念ながらすでにピークは過ぎてしまっていましたが、いつもながらの絶景です。雲一つない青い空、黄や赤の木々、そして三重塔。感動のあまり、瓦を踏み割ってしまいました。 自坊の前のもみじも今が最高潮。日に透かされた黄色いもみじの葉っぱが、天を覆うように茂っています。ハッとするような光景です。 でも、多くの人はこの素晴らしい場所を見ることもなく、境内をあとにされます。団体は本当にお気の毒。坂を登ってきたのに、境内の滞在時間がわずか10分だけという団体も今日はありました。 こんなに素晴らしい景色があるのに・・・。
ただ、「8年ぶりの紅葉の当たり年」だと言われた割には、本堂裏は期待はずれでした。 途中まではよかったのですが、後半‘伸び悩み’ました。 雨が降らずに、葉が乾燥してしまったのも原因の一つです。冷え込みも足りませんでした。 赤くならずに茶色っぽくなったり、葉先が縮れていたりで、落ちて‘敷き紅葉’となるはずだった葉も生気がなく、赤褐色です。 それでも元気な葉もあって、赤・黄・緑と複雑な色合いがとてもきれい。本堂裏は人の往来も多いので、日が当たって綺麗なもみじには人が群がっていました。
赤や黄色のもみじ、山茱萸のちょっとくすんだ黄色の葉、お茶の木や羊歯の緑。地面を覆うもみじ葉。そして、それらを照らしてくれる陽の光。 今日は、この場所で何枚写真を撮ったことでしょう。落ち葉の中で大の字になって寝転びたい気持ちでいっぱいでした。 人出の多い時はゆっくり写真を撮っている時間などありませんでした。今日は今季初めてウキウキと写真を撮ることが出来ました。 でも、僧衣姿で写真を撮っていると、あからさまにこちらにカメラを向ける人がいるのには閉口。いつもながらの初老のアマチュアカメラマンたちでした。
濡れた落ち葉は滑って危険。石畳の上は特に滑り、毎年といっていいほど転倒事故が起きてしまいます。 ところが、あっという間にまた落ち葉だらけ。こんなに落ち葉の多い日も今季初。 風が吹く度にサァーッと落ち葉が落ちてきます。それがまた日に照らされてキラキラときれいなこと! 参道を歩くと、カサコソと落ち葉がささやきます。石畳の上の落ち葉は、風にたなびいてスーッと一方向へ集合したり。何とも楽しい光景です。
本堂の回廊も書院へ通じる廊下も落ち葉だらけ。書院の涅槃の庭に面した部屋もたくさんの落ち葉が吹き込んできました。 その落ち葉は人にくっついて移動するものですから、あちこちが落ち葉だらけ。おまけに踏まれて粉砕されるので、落ち葉の細かい欠片もいっぱい。掃除をしても、掃除をしても追いつきませんでした。 それもまた楽し・・・。 落 葉 す る 音 と 落 葉 を 踏 む 音 と 岡田順子
玄関前には貫主作の菊の鉢が、少し進むと野路菊が露地に咲いています。 野路菊の脇には説明書きが添えてあるので、それを一所懸命に見ている人もおられます。花がお好きな方なのでしょう。 去年の11月末、2株の野路菊を姫路で分けてもらい、それを40〜50株まで挿し芽で増やして境内に植えました。紅葉の境内に野路菊がよく似合います。来年はもっともっと増やそうっと! 自坊では十月桜もよく咲いています。何となく場違いな感もしないでもないこの季節の桜。‘桜は春’という先入観のせいでしょうか? 夜になって雨が降り始めました。風も吹いていて、雷鳴のような音もしています。 この雨で今日にも増して落ち葉が増えるでしょう。明朝も雨。掃除ができません。1日掃除がお休みできるのはうれしいですが、後が大変そうです。乾燥していたもみじの葉には、うれしいオシメリです。 紅葉はまだもうしばらくは楽しめます。人の少なくなった境内でゆっくり紅葉を楽しむにはいい頃です。落ち葉と紅葉の境内へどうぞ。 寒 菊 を 匂 ふ ご と く に 描 け と い ふ 今瀬剛一 |