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晴れた日の新緑の、鮮やかでみずみずしく、なんと美しいこと! やわらかい緑が日の光を受けてキラキラ光り、木の下の影も一緒にそよいでいます。 こんなに素晴らしい境内なのに人の姿はあまりなく、新緑を独り占めしているような気分になります。新緑の美しさを一人でも多くの人に享受してもらいたいものの、人が増えるとこの清々しさが減じてしまうようにも思えてしまうのは我が儘でしょうか? 境内で作業をしていたら、顔見知りの、でも名前もどこのお寺の人かも知らない作務衣姿の和尚さんが、大股で本堂前を横切って来られました。 二人で新緑を称え合いましたが、お聞きすると、ご自分の寺の辺りは人だらけなので、逃げて来られたとか。正門から出ると人が多いので裏口から出て来られたのだそうです。おそらくお寺は哲学の道あたり。世は連休とあって、さぞかし人が多いのでしょう。 「これから吉田山をぐるっと回って帰ります」と、また大股で歩んで行かれました。とてもサッパリした、気さくな和尚さんでした。
腰に鋸と鋏をぶら下げた植木屋さんに近いような風体で剪定作業をしているためか、何人もの方から‘園芸相談’を受けました。椿の挿し芽方法、なぜ剪定が必要なのか? 今は剪定の好期なのか? 毎回のことです。 質問されるたびに作業を止めなければいけないので、正直いってかなり迷惑。仕舞いには、かなり無愛想になってしまいました。 今日も、そんな剪定の合間に写真を撮りましたが、この新緑の美しさ、生気あふれる空気、清々しさは、その場にいないと味わえるものではありません。 毎日見ていても飽きない、毎日毎日少しずつ色が変わり、風にそよぐ様子さえ葉が大きくなるにつれて変わっていく、そんな今の季節です。 新 緑 の 香 に 新 緑 の 風 を 待 つ 稲畑汀子
代わって、色鮮やかなつつじが境内の所々で咲いてきました。今咲いている大半は平戸つつじですが、霧島つつじ系もわずかに咲いています。 新緑の中にハッとさせられるような色のつつじ。素晴らしい組み合わせです。 自坊の前では、卯の花が満開になってきました。 風に揺れる卯の花はとても愛らしく、これまた新緑との相性も抜群です。 5月から6月上旬にかけてシトシト長く降り続く雨を「卯の花くたし」といいます。卯の花を腐らせてしまうほどの長雨という意味です。 幸いこの連休は天気も安定して、卯の花が腐るような心配はありません。ますます綺麗に咲き誇ってくれるでしょう。 今年、この卯の花の仲間である「うつぎ」を5種類ほど境内に植えました。数年後にはうつぎが真如堂の境内に彩りを添えていることでしょう。楽しみです。
あまり目立たない花である上に、まだ半開き状態の咲き方なので、開花していることにあまり気が付きません。ただ、目立たなくても、隠れていても離れていても、この花が咲いたことを教えてくれるのは、その香りです。 数日前の夕方、5メートル以上離れた道を歩いている時、この花の強い香りが漂ってきて、「あっ、オガタマが咲いた!」と気づかされました。 熟れたバナナの香り、バナナガムの香り、バニラの香りなど、いろいろな表現がされていますが、実に特徴的な香りです。 でも、いつでも香っているかというとそうではなく、花に鼻を近づけてもほとんど臭わない時もあります。湿気や時間などが香りを発するタイミングを左右しているようにも思います。 去年までは、「オガタマが開花しました」という札をぶら下げていたのですが、花はそれほど美しいこともなく、香りも気まぐれなので、今年はお知らせするのをやめようかと思っています。吉祥院前付近で甘い香りがしてきたら、犬のように臭いの元を探り当ててみてください。 5月2日は八十八夜、5日は立夏。生きとし生けるものが、その生の証を盛んに表しているかのようなこの季節。ぜひとも野や山に! 境内に! 卯 の 花 の 匂 う 垣 根 に 時 鳥 早 も 来 鳴 き て 忍 び 音 も ら す 夏 は 来 ぬ 佐々木信綱 |