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            新緑色の境内     マウスを載せれば写真が変わります
 「寒い」という言葉を使ってもおかしくない昨日・今日。10日には23.5度だった最高気温が、20.7度、17.5度と、どんどん下がり、昨日・今日は10.3度と2月下旬並みです。
 おまけに今日は午後から冷たい雨。春真っ盛りのはずなのに・・・。
 境内は新緑の季節を迎えています。
 寒さのせいか、桜の花がまだ散り切りませんし、もみじの新しい葉も開いていいものか躊躇している感じですが、境内の‘色’は鮮やかな新緑に取って代わられました。
 つい数週間前まで、幹や枝などを露わにしていた木々たちが、あっという間に新しく芽生えてきた葉っぱに包まれ、やわらかい形へと変貌しました。
 「春ってすごいなぁ」「自然って不思議だなぁ」と、毎年新たに感心する季節です。


        あっという間に緑一色     マウスを載せれば写真が変わります
 これほど変化に富んだ季節はないでしょう。日に日に木々の様子が違っています。
 昨日は出ていなかった芽が今日は出ていたり、いつの間にこんなに咲いたのだろうと思うほど花が咲いていたり、「這えば立て、立てば歩めの…」という言葉がありますが、毎日何かが‘プラス’されているのです。秋は逆。一葉落ち、また一葉散り、そして最後には木の‘形’だけが残ります。
 こんな自然の様子を見て、あるいは周りの人たちが新しい生活を始めるのを見て、「自分も何かしなければ」と焦って辛くなる人が多くなるのも春です。
 考えてみれば、植物たちは12月頃にすべての葉を落としてから実に4ヶ月もの間、じっと息を凝らして力を蓄え、この春の日を待ちかねていたのです。だからこそ、こんなに爆発的に芽吹き、花を咲かせることが出来るのだと思います。
 春はすごい、春の植物はすごい・・・。




     春   雨   や   人   の   言   葉   に   嘘   多   き          吉岡 実





               まつげのように可愛いもみじ花の蘂       マウスを載せると写真が変わります
 いま、もみじの花が盛りです。小さな、赤い花です。
 ごく身近な木のもみじですが、もみじに花が咲くことをご存じない方も多いようです。
 赤い花が梢に付いているため、今はもみじもスッキリとした新緑色には見えません。赤と新緑の混じった、複雑な色合いです。でも、それがいかにも春という気がします。
 地面の苔の間などからは、無数の芽が出ています。
 もみじの花はすぐに結実し、やがて実を落とします。それが、春を迎えて芽を出し始めたのです。その数は、境内全域ではいったいどれほどになるでしょう。何万、何十万、何百万?
 ほとんどは枯れ、あるいは草引きの時に引かれ、やがてほとんど消えていきます。毎年毎年そういうことが繰り返されていく。生きるということは、何と厳しいことなのでしょう。
 芽吹きの時は、そんな過酷な営みを内包しています。


          圧倒的に咲く八重桜 / 清楚に静かに白山吹      マウスを載せれば写真が変わります
 境内では、「桜に続け」とばかりに、いろいろな花が咲き出しています。
 鐘楼の周りでは八重桜が咲き出しました。「関山」という種類でしょう。その他にも、一重の少し大きめの花を咲かせる桜があり、咲き始めています。「大山桜」でしょうか? 鐘楼の基壇に登ってご覧になると、息苦しいほどの咲き方に圧倒されそうになります。
 清楚な花を咲かせているのは、白山吹。山吹といっても黄色い山吹とは種類が違い、山吹は5弁花で、白山吹は4弁花の小低木。
 「これは何という花ですか?」とよく尋ねられる、人気の高い花です。
 他にも、灯台躑躅どうだんつつじ、椿、山吹などがよく咲いています。藤の蕾も膨らんで、この寒ささえ去れば、一気に咲き出しそうな気配です。
 桜の時期はどこへ行っても大混雑でしたが、ようやく静けさが戻って来ました。静かに春を楽しむにはうってつけの季節でしょう・・・あたたかい日が早く戻って来てくれますように。




   騒   が   し   き   世   を   お   し   祓   っ   て   遅   桜        小林一茶