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西の山を見ると、上のほうがうっすら白くなっていました。朝日が照り始めると、その白さは見る見る薄れていき、山の端にかかる雲と区別がつかなくなっていきました。冬ならば、そう簡単に雪は消えません。そんな情景からも、春を感じることができました。 自転車で境内にお越しになった初老の女性が、「また、降ってきた! 今日のお天気はどうなっているの!」と天に向かって吠えておられました。 怒りたくなるのは無理もありません。今日は晴れたかと思ったら、いきなり曇って時雨れてくる天気の繰り返し。雹が降ったり、虹が出たり。1日中、本当に目まぐるしく空模様が変わりました。最高気温も10度と、2月末並みの寒い日でした。
昨日までは本当によく雨が降りました。この時期には「養花雨」「育花雨」という言葉があります。でも、花を育ててくれる雨というには、あまりにも降り過ぎでした。 桜が満開ならば、散ってしまうのではないかと人をヤキモキさせたり、花見客から‘恨み’を買ったかも知れませんが、時期を選んで降ってくれた気もします。 晩唐の詩人 于武陵の『君に勧む 花が咲く時は雨も多い、嵐も多い。「夜半に嵐の吹かぬものかは」。何を書きたいのか、わからなくなってきました。 今日は東山山麓の料亭で天皇陛下が食事をされるとかで、ずっとヘリコプターの音が絶えませんでした。 春 し ぐ れ や み た る 傘 を 手 に 手 か な 久保田万太郎
でも、雨で気温も上がらず、1週間経った今日でも、ようやく3分咲程度です。 京都市の観光協会から、桜の開花状況を調べるための紙が、数日おきにFAXで送られてきます。用紙には「蕾ふくらむ」「1分」「3分」「5分」などという欄があって、該当するいずれかに○印を付けるようになっているのですが、今日はボクが出かけていたので、職員さんたちが相談して「3分」と回答したそうです。 境内でよく咲いている桜は、総門前の染井吉野に似た、でも染井吉野ではない桜。三重塔の横の枝垂れ桜。そして本堂脇の縦皮桜です。種類などどうでもいいから、桜さえ咲いていればいいという、植物に無頓着な人もおられますが、そういう方にとっては、今日はまだ物足りない咲き加減でしょう。 枝垂れ桜は、開ききってしまうと色が褪せて、情趣が失せてきます。今日はもうギリギリの状態。土日が最後の見頃でしょう。 開花期を迎える前に、枝を支えていた棚をほとんど撤去しました。棚が枝と擦れて、かえって逆効果であると聞いたからです。自由に風にそよぐ枝が何とも美しく、軽やかで、ずいぶん楽しませてもらっています。やはり、青空にはよく映えますねぇ。
この冬は枝の枯れ込みがひどく、何本もの枝を切らざるを得ませんでした。‘九死に一生を得た’桜ですから、何とか元気に成長して欲しいと願ってやみません。 この縦皮桜や染井吉野のおびただしい数の花や蕾が、木の下に落ちていました。鳥の仕業であることはわかっていたので、職員の中の‘鳥博士’に聞いてみると、「イカルやウソじゃないでしょうか・・・」という答えでした。 ちょうど木の下から見上げて写真を撮っていたら、犯人発見!? メジロの群れが一所懸命に桜の花を突いていました。 調べてみると、シジュウカラやメジロ、ヒヨドリ、スズメなどが桜の花を突くのだとか。シジュウカラは桜の木についた虫を食べ、メジロやヒヨドリは甘いものが大好きで、舌を使って上手に花の蜜をなめるのだそうです。そして、桜の花をまるごと落とすのは雀だそうです。雀のくちばしは、種などを食べるのにちょうどよい形ですが、舌で上手に舐めることはできす、パチッと花を切って元を舐めてからクルクルと落としてしまうのだそうです。困りますねぇ。 さて、染井吉野の見頃は来週初め頃でしょうか。まだこれから十分楽しめます。
桜の花が終われば、あっという間に新緑の季節です。 山吹も咲き始めました。風に揺れる山吹はカメラマン泣かせです。 境内では、去年から、山吹を増やしています。今はまだ株も小さいですが、あと数年もすればきっと楽しんでいただけるでしょう。 椿、馬酔木、山茱萸もまだお楽しみいただけます。桜だけではなく、ぜひとも他の花々にも目を向けてやってください。 本格的な花の季節、はじまり、はじまり〜 世 の 中 は 三 日 見 ぬ 間 に 桜 か な 大島蓼太 |