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               本堂を眺む / 色づき初めし境内      マウスを載せれば写真が変わります
 あちらこちらから金木犀の甘い香りが漂ってくる季節となりました。花の在処はわからなくても、香りがその存在をアピールしているかのようです。
 また暑い日が戻って来ました。京都市の最高気温は、9日以来、ほぼ30度を下回り続けてきましたが、昨日は31.2度、今日も30.7度と、ちょっと逆戻り。少し動くと汗をかきましたが、湿度は高くなく、過ごしやすい日でした。
 彼岸も26日で明けます。例年よりも涼しい彼岸だったような気がします。
 もうすぐ10月。ほんの少し時が流れただけなのに、つい先日までの炎暑の頃のことは、ボクの記憶から遠ざかっています・・・ただ物忘れがひどくなっただけなのかも知れませんが。
 人が更衣をするように、境内の木々も、枝先から少しずつ秋色に染まってきました。境内をそぞろ歩きするだけで、‘小さい秋’を其処彼処に見つけて楽しむことができます。


               萩とそびえる塔 / 今日も寝る猫       マウスを載せれば写真が変わります
 境内では萩が見頃を迎えています。風に揺れる萩は、何とも風情があります。
 日本人の感性に萩はよく合うのでしょうか、『万葉集』で最もよく詠まれている花は萩だそうです。
 そんな萩の咲く境内を訪れる人が、シルバーウイーク以来、増えてきました。
 境内のベンチでお弁当を召し上がる人、昼寝をする人、萩を写真に収めようという人。のんびりした、真如堂らしい境内です。
 さほど見どころの多くはない今の時期の京都ですが、ゆったり過ごすにはもってこいでしょう。
 イベントがお好きな方は、徳川家康による築城から400年目を迎えた二条城では、19日から様々な記念イベントが催されているそうです。二条城、ボクは一度も行ったことがありませんが・・・。




      栗  飯  の   ま  つ  た  き  栗  に  め  ぐ  り  あ  ふ         日野草城






      一条の光と彼岸花 / そよぐ萩の花     マウスを載せると写真が変わります
 今年も律儀に咲いてくれた彼岸花も、彼岸の終わる頃には、花期を終えようとしています。
 もみじは年によって色付きも違いますし、桜などは年によって咲く時期が変わって、やれ、早い遅いと悲喜こもごもですが、彼岸花に裏切られることは決してありません。
 もっと感謝され、誉められてもいいとさえ思える彼岸花は、境内の‘横道’付近に咲いているためか、「わぁー 綺麗!」という賛辞を浴びることも少なく、「あの花は好きではない」と忌み嫌う人もいて、今ひっそりと咲き終えようとしています。
 花と葉が同時に出ることはない彼岸花は、韓国では「相思華」とも呼ばれるそうです。お互いに決して相見えることのない葉と花。葉は花を思い、花は葉を思う。ますます可哀想になってきそうです。


           本堂前の藤袴 / 自坊の藤袴と花影    マウスを載せれば写真が変わります
 夕方、本堂と本坊の前に、藤袴の鉢を置きました。
 前回のこのページでも書きましたが、いま京都では「守ろう!藤袴プロジェクト」などというキャンペーンが行われていて、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧(NT)種に指定されている藤袴を保護する活動が行われています。
 本堂前などに置いた藤袴も、その活動に参加されているお香屋さんが自社工場で生育したものを、花の時期に合わせて預託してくださったもの。花が終わるまでお預かりします。
 藤袴は「香草」の別名もあり、平安時代の女性は、これを乾燥させたものを香袋に入れて十二単にしのばせたり、水につけて髪を洗ったといいます。防虫剤、芳香剤、お茶などにも利用され、乾かすと桜餅のような香りがするそうです。お香屋さんが積極的なのもうなずけます。その名を冠した香を販売している会社さえあります。
 自坊で栽培しているのも、やはり原種の藤袴。生では芳しいわけでもありませんし、花が特別に美しいというわけでもありません。「源氏物語にも登場する」などというロマン、自然保護に関わっているという参加意識などが、このキャンペーンを盛り上がらせているのでしょう。ボクもロマンを感じて栽培しています。
 お越しの際は、ぜひ本堂前の藤袴をご覧ください。開花は来週半ば頃でしょう。自坊のは5分咲です。




       藤  袴   手  折  り  た  る  香  を  身  の  ほ  と  り         加藤三七子