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        参道を狭くする濡れもみじ / 境内に人影はなく    マウスを載せれば写真が変わります
 予想よりも遅く、明け方から降り出した雨は、お昼過ぎまで、時には強く降り続きました。おそらく、今年一番の雨量でしょう。
 花の時期の雨は、花見を楽しみにしていた人から怨みを買うことも多いでしょうが、今の時期の雨は新緑に趣を添えてくれるので、ひょっとしたら喜ばれるかも知れません。
 「木の下闇」という夏の季語があります。雨が降ると、木の下が薄暗くなるというのですが、今の季節は木の下に入っても「闇」というほどではありません。多くの木の葉はもう開き切ってはいますが、色がまだ淡く、光を遮って「闇」を作るほどではないのです。
 少し薄暗い若葉の影を楽しみながら、境内を散策しました。カメラを持って散策するには、いささか強過ぎる雨でした。


           雨の日ののんびりツインズ / 新緑のトンネル    マウスを載せれば写真が変わります
 思い返せば、1ヶ月前には桜が咲き始めていました。開花宣言が出た後の冷え込みでなかなか花が開き切らず、長い間花を楽しませて貰いました。
 そして今は新緑。先週はもみじの梢には小さな花がいっぱい付いていて、それが微妙な色合いを醸しだし、スッキリした新緑とは言えませんでした。今日はもみじの花も終わり、桜の蘂も跡形さえなくなりました。
 雨の日の境内は本当に静か。聞こえてくるのは、本堂の破れた樋から激しく落ちる水音。時おり、忘れられてなるものかと言わんばかりに、鴬が啼いています。
 雨粒を満身に抱え込んだ青葉が垂れ下がり、参道に覆い被さってきています。こんな日にわざわざ境内に来る人は粋人か暇人。緑滴る景色を満身に楽しむかのように、長い間本堂に腰掛けている方がおられました。
 いつもは、おこぼれに預かるために愛想を振りまく野良猫たちも、今日はのんびり伸び伸びと昼寝。先日、恋猫の‘結末’が本堂の床下に数匹いることが判明。さぁ、どうしましょう。



       老   の   身   は    日   の   永   い   に   も   泪   か   な       小林一茶






   早過ぎる平戸の開花 / 卯の花、腐らず  マウスを載せると写真が変わります
 平戸つつじの花が、早くも見頃になってきました。つつじやさつきは5月というイメージがあるので、こんなに早く咲くと、季節感が狂ってしまう気がします。
 いろいろな花の咲き具合を見ても、例年よりも1週間以上早く季節が進んでいます。しかも、微妙な季節の移ろいがだんだん消えてきて、今までは順序よく咲いていた花が、何でもかんでも同時に咲く傾向にあるような気がします。
 卯の花もすでに満開。藤や馬酔木はほぼ終わりました。
 「卯の花腐し」という、卯の花の咲く初夏から仲夏にかけて降る長雨をいう季語があります。でも今満開の卯の花は、立夏を待つまでにすっかり散ってしまうでしょう。
 古来、日本人はわずかな季節の移ろいを微妙に感じ取り、たとえば実に多くの色の名前を考えてきました。すでにその感性は失われつつありますが、季節感が単調になってくると、今後はますます微妙な色合いを感じることができなくなっていくのではないでしょうか。


     花としてはイマイチ、唐種招霊 / 八重桜の末路   マウスを載せれば写真が変わります
 唐種招霊からたねおがたまの花も、例年より早く咲き出しました。
 早速、「からたねおがたま(唐種招霊)、咲いています!」という看板を参道脇の木に吊しました。
 綺麗というほどの花ではありませんが、なぜか人気の花。人気の秘密は、その香りです。
 唐種招霊は“バナナの木”などと呼ばれることがあります。熟したバナナのような強い甘い香りがするのです。
 でも、いつでも香ってるわけではありません。朝早くか夕方、特に曇った日によく香ります。また、半開きの状態がよく香りますが、開き切るとあまり匂いません。遠くで香っていても、花に近づいたらあまり匂わないこともあります。理路整然としない香り方なのです。
 その気ままさ、不思議さが、人気の秘訣なのかも知れません。
 新緑の境内に、お訪ねあれ! 運が良ければ、バナナの香りを嗅ぐことができますよ!
 




       行  く  春  や   雨  は  土  の  香  よ  び  さ  ま  し        松田とも子