4/25版
花の時期の雨は、花見を楽しみにしていた人から怨みを買うことも多いでしょうが、今の時期の雨は新緑に趣を添えてくれるので、ひょっとしたら喜ばれるかも知れません。 「木の下闇」という夏の季語があります。雨が降ると、木の下が薄暗くなるというのですが、今の季節は木の下に入っても「闇」というほどではありません。多くの木の葉はもう開き切ってはいますが、色がまだ淡く、光を遮って「闇」を作るほどではないのです。 少し薄暗い若葉の影を楽しみながら、境内を散策しました。カメラを持って散策するには、いささか強過ぎる雨でした。
そして今は新緑。先週はもみじの梢には小さな花がいっぱい付いていて、それが微妙な色合いを醸しだし、スッキリした新緑とは言えませんでした。今日はもみじの花も終わり、桜の蘂も跡形さえなくなりました。 雨の日の境内は本当に静か。聞こえてくるのは、本堂の破れた樋から激しく落ちる水音。時おり、忘れられてなるものかと言わんばかりに、鴬が啼いています。 雨粒を満身に抱え込んだ青葉が垂れ下がり、参道に覆い被さってきています。こんな日にわざわざ境内に来る人は粋人か暇人。緑滴る景色を満身に楽しむかのように、長い間本堂に腰掛けている方がおられました。 いつもは、おこぼれに預かるために愛想を振りまく野良猫たちも、今日はのんびり伸び伸びと昼寝。先日、恋猫の‘結末’が本堂の床下に数匹いることが判明。さぁ、どうしましょう。 老 の 身 は 日 の 永 い に も 泪 か な 小林一茶
いろいろな花の咲き具合を見ても、例年よりも1週間以上早く季節が進んでいます。しかも、微妙な季節の移ろいがだんだん消えてきて、今までは順序よく咲いていた花が、何でもかんでも同時に咲く傾向にあるような気がします。 卯の花もすでに満開。藤や馬酔木はほぼ終わりました。 「卯の花腐し」という、卯の花の咲く初夏から仲夏にかけて降る長雨をいう季語があります。でも今満開の卯の花は、立夏を待つまでにすっかり散ってしまうでしょう。 古来、日本人はわずかな季節の移ろいを微妙に感じ取り、たとえば実に多くの色の名前を考えてきました。すでにその感性は失われつつありますが、季節感が単調になってくると、今後はますます微妙な色合いを感じることができなくなっていくのではないでしょうか。
早速、「からたねおがたま(唐種招霊)、咲いています!」という看板を参道脇の木に吊しました。 綺麗というほどの花ではありませんが、なぜか人気の花。人気の秘密は、その香りです。 唐種招霊は“バナナの木”などと呼ばれることがあります。熟したバナナのような強い甘い香りがするのです。 でも、いつでも香ってるわけではありません。朝早くか夕方、特に曇った日によく香ります。また、半開きの状態がよく香りますが、開き切るとあまり匂いません。遠くで香っていても、花に近づいたらあまり匂わないこともあります。理路整然としない香り方なのです。 その気ままさ、不思議さが、人気の秘訣なのかも知れません。 新緑の境内に、お訪ねあれ! 運が良ければ、バナナの香りを嗅ぐことができますよ! 行 く 春 や 雨 は 土 の 香 よ び さ ま し 松田とも子 |