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「花冷え」というほどに桜は咲いてなく、染井吉野は1〜2分咲程度。19日に開花宣言が出た途端、急に寒くなって、開花は遅々として進みません。花が長い間楽しめるのは有り難いですが、この寒さはいただけません。 それでも、境内を訪れる人はずいぶん増えました。他府県から来られる方は、花が足踏み状態だからといって、簡単には入洛の日程を変えることができません。でも、考えてみれば、平年並みならまだ開花宣言も出ていない頃。わずかでも花を見られただけでも幸せだと言えるのかも知れません。 都大路にも大型観光バスがひっきりなしに走るようになって、観光地付近は渋滞気味。今日からは高速道路千円という施策も始まって、ますます車の数が増えるでしょう。 桜と共に春の喧噪の季節も到来です。 見 返 れ ば 寒 し 日 暮 の 山 桜 小西来山
江戸彼岸の系統は、桜の中では最も長寿な品種の一つで、樹齢数百年などと、国の天然記念物に指定されているものも少なくありません。枝垂れ桜は、この系統の園芸種でしょう。萼の下のほうが球状に膨らむのが、江戸彼岸系の特徴の一つです。 「縦皮桜」と枝垂れ桜を比べてみると、前者のほうが少し花が小さい目で、色も白っぽいように思えます。 染井吉野は、江戸彼岸と大島桜の交配で生まれた園芸品種で、江戸彼岸の花が葉より先に咲く性質と大島桜の大きくて整った花形を併せ持っています。 あれだけたくさんの花が咲いても、実がなることはほとんどなく、なったとしてもそれが発芽することはありません。そこで、繁殖はもっぱら接ぎ木などによります。現在、日本中にある染井吉野は、いわば皆‘クローン’であり、だからこそ開花前線などにも利用しやすいわけです。
朝な夕なに見る枝垂れ桜の美しいこと! 紅葉でもそうですが、トップライトは‘全体’を見せてくれる反面、見えない部分があるという深遠さを欠いてしまう気がします。 朝な夕なの桜は、予想だにしなかった美しさを発見する楽しみに溢れています。息を呑むような美しさは、昼間にはあまり味わえません。写真を撮るなら、朝か夕。境内に住まっているからこそできる贅沢でしょうね。 縦皮桜も枝垂れ桜も花弁が開いて満開になるに従って、花の色が薄くなってきました。ボク的には、もうピークは過ぎたように思えます。でも、そこまで微妙な色合いは写真には写りにくいので、‘形’としては、今が撮影の絶好期でしょう。
手の届くような位置には花が咲いていないので、本堂から脚立を持ち出して、その上に仁王立ちになって写真を撮りました。 期待されたほどの花ではなかったのではないでしょうか? 「花の木」はカエデの一種ですから、花も似たような形をしています。もみじの花も紅いのですが、小さいので、花の木ほどには目立たないのでしょう。 花の木は、雌雄異株で、花にも雌花と雄花があります。動物でもそうですが、綺麗なのは‘雄’です! 他の木々がまだ芽吹いていない早春に、深紅の花を高い枝一杯に付けるのですから、遠くからでも目立ちます。そして、それが日に照らされたらますます美しい! その美しさゆえに、「花の木」の名前が付いたと言われています。 境内には10本ほどの花の木がありますが、先に雄株の花が咲き、少し遅れて雌株の花が咲き出しました。雌花はすぐに結実して熟し、大きな実を降らしてくれます。それもまた楽しみです。
境内を見回った時、参道にたくさんの葉が落ちていました。職員さんに、「落ち葉の掃除をお願いしますね」と言うと、「朝、掃除したばっかりなのになぁ」というボヤキが返ってきました。 ほとんどの方はお気づきにならないでしょうが、樫の木の落葉が始まったのです。 芽吹きの季節を迎えると、新しい葉と交代するように古い葉が落ち始めます。楠も、もうしばらくすると降りしきるように葉を落とし始めるでしょう。 春は花や新緑の季節ですが、落葉の季節でもあるのです。そう思って境内を散策していただくと、また深遠な自然の営みに触れることが出来るのではないでしょうか。 さぁ、染井吉野の見頃が4月初頭にずれ込みました。ご予定を立て直してくださいね! 春 落 葉 い づ れ は 帰 る 天 の 奥 野見山朱鳥 |