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風は強く冷たく、遠くを見ると北山はうっすら白く雪化粧。最高気温は12・5度で、部屋の中にいると日差しがあたたかく感じられましたが、吹きっさらしの屋外では冬に逆戻りしたような寒い日でした。 それにしても、よく降りました。雨は精神衛生上よくありません。雨が降ると雨漏りが心配で、夢にまで見るのです。雨漏りなんて、経験のない方が多いでしょうが、あの雨染み、ポタポタという音は実に嫌なものです。起き抜けに、まず雨漏りを点検しましたが ・・・ しっかり漏っていました。 木枯らしのような風に吹かれたり、春のあたたかい日差しに照らされたり、季節の狭間を実感した1日でした。
今日、本坊の書院やボクの自坊などでは、京都のお香の老舗のイベントが行われ、400人ほどの方が参加されました。 香道のお席、両千家のお席、煎茶のお席など6席と点心席が設けられて、午前中は雨、午後も冷たい風が吹く中、参加された方々は浅春の1日を嗅覚に、味覚に、そして視覚に遊んでおられました。 全国、特に関東から来られた方も多く、真如堂は初めてという人もずいぶんおられたようです。本堂の大涅槃図も、たくさんの方が拝観されました。 でも、女性の多いイベントは、特に和服の女性の多い行事はトイレが大変。夕方は、トイレ詰まりの復旧に奔走しました。 香 合 に の せ 春 光 を 廻 し た る 深見けん二
それによると、京都の開花日は26日。同日発表された日本気象協会の第2回目予想では24日。ウエザーニュース社(9日発表)では、29日でした。 他府県からお越しになる方にとっては、桜の盛りがいつ頃なのかは大きな問題です。場合によっては、ホテルや新幹線も予約し直さなければなりません。 境内一早い三重塔脇の枝垂れ桜は、来週末頃には咲き出すのではないかと思う蕾の膨らみようです。染井吉野は25日頃? 見頃は、土日ペースで、28・29日では少し早く、4月4・5日では結構散っているという感じではないでしょうか。 ふと、塔を見上げたら、花の木がかなり紅くなっているのに気が付きました。 春、葉が出る前に真紅色の花が咲くので、「花の木」という名前が付いたといいます。雌花よりも雄花が美しいのですが、この木は「雄」でしょう。紅い花に、また「春」を実感しました。
すぐ側を通っていても、「いま馬酔木が満開です」「これが山茱萸ですよ」などと言ってあげないと、花が咲いているのにまったく気が付かない人がおられます。 季節の移ろいを感じにくい都会に住んでいると、花が咲いていることにさえ気が付かなくなってしまうのでしょうか? 咲いていると教えてあげても、まったく無感動な人にはお手上げです。馬酔木も山茱萸も地味な花だからかも知れませんが、二の句を失ってしまいます。 春は感受性を‘ダンボ’にして歩かないと勿体ない気がしてなりません。「春だよ!」と喜々として鳥が鳴き、ちょっと目を凝らせば、春の息づかいは其処彼処に点在しているのですから。今は絶好の‘宝探し’シーズンです。 そんな営みに気付くことができる心のゆとり、豊かさが欲しいですね。
「こんな雨の中、ボクを呼ぶのはどこの誰?」と思ってあたりを見回すと、何と石灯籠の火袋の中にミーコが入っていて、遠吠えの如く「ミャァー ミャァー」と叫んでいるのでした。 「おお! ミーコ!」と駆け寄って写真を撮るとすると、ミーコは誇らしげに胸を張ってポーズを取りました。 かつて、夏の暑い日などには、ミーコがこの火袋に入って涼んでいる姿をよく見かけました。暑い日でも石は冷たいので、避暑になったのです。真如堂に猫多しといえども、そんなことをするのはミーコだけ。今はシロが人気を独占していますが、ミーコこそが元祖真如堂の野良猫でした。 そのミーコが火袋に入った姿を見なくなってもう2〜3年。「ミーコは歳を取って燈籠には上がれなくなった」というのが巷の噂でした。そのミーコが再び上ってくれたのです! でも、どうしてまだ石も冷たく、今日のような寒風と音を立てて降る雨の日に、ミーコは数年ぶりに火袋に登ったのでしょう? それもある意味大いに心配です。 ミーコの目は遠くを見据えていました。
侘び助の木の下には、小さく可愛い花弁が落ちるようになってきました。落ちた姿も何とも愛しい花です。 法衣を来ていることが多くなったこの頃、地面に座ったり寝転んだりすることがなくなっていましたが、今日は作務衣を着ていたので、久々に膝を突いて写真を撮りました。苔の胞子嚢が可愛かったからです。 残念なことに、最近、裸眼ではこんな小さなものをはっきり見ることが出来なくなりました。カメラのオートフォーカスこそが頼りです。レンズを通して見た光景から、こんな小さな世界にも等しく春はやってきているという思いを新たにしました。 来週は日差しもたっぷり降り注いで、気温も上がってくるとか。ますます春本番近しです。 フ ァ イ ン ダ ー て ふ 極 小 の 窓 の 春 林 翔 |