2/28版
この1週間で、雨の降った日は5日。15日以降でも9日。「また雨かぁ」という感じでしたので、今朝、明るくなると共に朝日が差してきたのを見た時は、本当に心が躍りました。 最高気温も3月下旬並み。職員さんも、そとで草むしりを始めました。本堂の中にいるよりも、外にいるほうがよほどあたたかい日でした。 京都の気象台は、まだウグイスの初鳴を発表していませんが、境内では1週間ほど前からウグイスが鳴いています。その鳴き方も、今日は誉めてあげたいほど、ずいぶん上手になっていました。 ウグイスが鳴くと、ますます春の到来を実感します。3月5日は啓蟄。虫だけではなく人も、じっとしていられなくなってきますね。
皆さんのコートはまだ冬用なので、写真を撮っても映えません。浅い春を楽しもうという感じの人はほとんどなく、「散歩するにはもってこいの日なのに、もったいないなぁ」と、青空を見上げながら思っていました。 それに、マスクをしている人の多いこと。花粉症対策に違いありません。散歩するのも大変です。 職員さんの「生物観測班主任」から、「タンポポが咲いてます」「ハコベも咲いてますよ」「フグリはまだです」などと、毎日細かい報告がきます。とてもうれしそうです。 都会にいると、そんな変化に目を留めることすら忘れてしまうでしょう。小さな春がきっと皆さんの回りにもいっぱいあります。探してみてはいかがですか? 時 刻 き ゝ て 帰 り ゆ く 子 や 春 の 風 星野立子
苔の緑が鮮やかになってきたことは前回もお伝えしましたが、朝日の当たった今朝の苔はそれよりも格段に美しく、草木の新緑の光景も連想させてくれました。 秋の紅葉の頃には無残なほどに踏みつけられ、場所によっては土が露わになることさえあります。再生できるだろうかと心配する人もありますが、冬の間に力を蓄え、春と共に見事にその傷を癒しつつ、こんな素晴らしい緑を見せてくれるのです。しかも、どの草木よりも早く。 朝の斜めの光が木々のシルエットを苔の上にふんわり落として、とても幻想的。見る角度や高さを変えて、しばらく遊びました。 朝、昼、夕と、境内の姿はそれぞれ違っています。もちろん、晴れ、曇り、雨、雪でも。春は、さらに一段とバラエティーに富んだ姿を境内に与えてくれる季節です。
本堂の裏では 枝の先に小さな花を付けている山茱萸の花のような被写体は、今度買ったコンパクトデジカメはどうも苦手のようで、なかなかピントが合いません。写真はお預けです。 自坊の前では、水仙が咲き乱れています。芳しい香りも風に乗って漂ってきます。 門の中では、胡蝶侘び助が咲いています。小振りな花なのであまり目立ちませんが、ボクの大好きな花のひとつです。
この涅槃図は、三井家の女性たちの寄進により、宝永6年(1709)に僧厭求、海北友賢らによって制作されたものです。 厭求は、江戸時代の浄土門の高僧。京都で生まれ、17才で江戸に赴いて、深川で修行をしている時に明暦の大火に遭い、その惨状に無常を感じて大衆救済に立ち上がりました。その後、全国を行脚して過ごし、82才で亡くなるまで、生涯定住しなかったといいます。 「性甚だ寛宏にして宗派に拘泥せず・・・阿弥陀経を写すこと一千部、弥陀の尊号を書する十万部、仏菩薩の像を画くこと其の数を知らず」(『望月佛教大辞典』)と、様々な宗派の寺々に巡遊・滞在し、厭求作といわれる仏画や仏像が各地の寺に現存しています。 海北派は海北友松を始祖とする江戸期の画派で、京都画壇の名門。友賢は友雪の門人で、直系ではありません。 この涅槃図には猫が描かれていると、雑誌などに書かれていることがあります。涅槃図は、時代が下がるに従って、書かれている生き物の数が増える傾向にあります。
それよりも、この涅槃図の特徴は画面の左下の水の中に蛸や魚類が中央で横たわっておられるお釈迦さまの方に向かって賢明に泳いでいる姿です。 猫であろうが魚類であろうが、仏の御加護を受ける生きとし生けるものは出来るだけ描くという姿勢が見られ、涅槃図全体では127種類もの生き物が描かれていて、動物の種類の多さでは日本一であろうとされています。 特別公開は3月末まで。ひょっとしたら、来年は修復のため見られないかも知れません。 春の兆しを求めて境内へ、そして涅槃図をご覧になって仏陀の遺徳をお偲びください。「 涅 槃 図 に 加 へ て み た き あ め ふ ら し 大木あまり |