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昨日まで3日連続で「夏日」を記録した京都。午後2時頃にはようやく雨もあがりましたが、今日は日の光もささず、少し肌寒い日でした。 境内はひっそり静まりかえって、訪れる人もまばら。「今日は観光でお越しになる人はほとんどなくて、お参りの方ばかりです」と本堂の職員。 珍しく20〜30人の人がやって来られたと思ったら、ただ境内を通り過ぎていかれただけでした。 野良猫たちも今日はのんびり。花見客に座っていただこうと用意したままの床机で寝そべってみたり、毛繕いをしてみたり。静かなのはニャンともうれしいかも知れませんが、訪れる人に比例しておやつの量が少ないのはタマに 今日は何となく真如堂らしい雰囲気の1日でした。
地面には落ちた蘂や花軸がいっぱい。もみじの木の下に駐めているボクの車の屋根も、元の色がわからないほどビッシリともみじの赤い花柄に覆われてしまっています。 雨に濡れた新緑は一段と美しく、緑の上に何か艶の出るものをコーティングしたような感じでした。「これで少しでも日が差してくれれば、どれほど綺麗だろう・・・」と期待しましたが外れ、1日中、ちょっと薄暗かったのが残念でした。 もみじやかえで、桜、銀杏などの新芽は鮮やかな緑色ですが、本堂前の菩提樹の新芽はくすんだ緑。常緑樹の楠や樫なども、濁った緑色の新しい芽を出し始めました。
花よ花よと境内で浮かれていた人たちの姿はもうなく、雨の新緑を楽しみながら歩く人の姿が、ポツリ、またしばらく経ってポツリと見えます。 桜の時期には、花さえ咲いていればどこでもいいというような人も多く、何となくざわざわして落ち着きません。これからは自然が好き、新緑の季節が好き、真如堂が好きという方々が訪ねてくださるような気がして、安心していられるように思えます。 散 策 の 遅 日 の 道 を 伸 ば し け り 田原幹一郎
本堂の右横の藤の花が、今、満開です。ただ、この藤の花は藤棚の上で咲いているばかりで、少しも垂れ下がって来ず、あまり評判はよろしくありません。 先日、この藤を植えた植木屋さんが初めて花の時期に見たらしく、「あれっ? この藤、ちっとも垂れないなぁ・・・」と驚いているので、「そうですよ。棚の上だけで咲いていると、ブーイングの的ですよ」と言うと、「いや、苗を買った時にちゃんと垂れ下がると聞いたんやけどなぁ・・・」と盛んに弁明していました。 ボクの子供の頃には、ここに藤の古木があり、もちろん花は垂れ下がり、花の時期にはたくさんのブンブンがやってきて、よく捕まえて遊んだものでした。台風で倒れて切ってしまって以降、しばらく藤棚はありませんでしたが、20年あまり前に新しい株を植えて藤棚を作りました。その藤が、紫・白ともにまったく垂れ下がらないのです。 毎年この時期になると残念に思うので、先日、垂れ下がりそうな藤の苗2本をネットで取り寄せました。今、その藤はピンクと濃い紫の花をそれぞれ咲かせています。ただし、今はまだ事務所の植木鉢の中。皆さんにお披露目するのは、まだずいぶん先になりそうです。
八重桜、白山吹、馬酔木、 自坊の前では ところが、「香りを嗅ぎに来てください」とお誘いしても、ぜんぜん匂わないこともあるのです。花に鼻をくっつけても少しも匂わないかと思えば、今年もこの花が咲き出したとわかったのは、10メートル以上離れたところを歩いていて、甘い香りが漂ってきたからでした。 花の咲き始めの頃、朝よりも夕方に匂うように思います。花は毎日新しいものが咲いていきますので、まだしばらくは大丈夫。日が傾き始めた頃においでになって、幸運にもこの甘い香りを嗅ぐことができれば、あなたはその夜ずっと幸せな気分で過ごせるかも知れません。不思議な魅力のある木です。 花と新緑とバナナの香りの境内にお越しください。 を が た ま の 花 散 る 頃 と 君 に 告 ぐ 高木晴子 |