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      緑がちになってきた正面参道 / 新緑、桜、まだ寝る枝  マウスを載せれば写真が変わります
 朝晩はまだ少し肌寒い日が続いています。
 桜の花もほとんど散って、境内は新緑へと急ぎ足で様相を変えつつありますが、それでもまだ桜花を求めて来られる人の往来があり、今日も境内には時おりツアー客なども来られていました。
 そのツアーは琵琶湖疎水の十石船に乗ったり、桜の名所などを巡るらしく、主に東京方面から来られているようですが、なぜそんなツアーが真如堂に来られるのかよくわかりません。聞くところによると、真如堂は‘勝手に’観桜スポットとして紹介されていたり、枝垂れ桜がきれいだという風聞が流れているとか。知らぬは住民ばかり?
 ツアーに参加した人が気の毒なのは、秋も春も変わりません。急な東参道を上がってきて、やっと境内に着いたかと思えば、「はい、20分後に集合してくださいねぇ!」とガイドさんに急かされ、ゆっくり‘春’を楽しんでいるわけにもいかない有様。「ツアーには参加したくない」と、いつも思います。
 京都御苑の一般公開が行われていることもあり、観光スポットの大型バスの駐車場はどこも満車状態。一時ほどの混雑はありませんが、観光地ではまだのんびり過ごすことはできそうにありません。


           終焉の桜と生まれいずる新緑の境内にて      マウスを載せれば写真が変わります
 お昼頃前からお花見を始めたどこかの大学のゼミのような10数人のグループが、花を愛でるでもなく、夕方近くまで‘紳士的に’過ごしておられました。
 掃除の合間にその人たちを観察していた職員からは、「よ〜く呑んでられますよ」と報告が入りましたが、教員同伴で、マナーも悪くないのなら存分に楽しんでください。
 大きな荷物を抱えてタクシーで乗り付けたのは、間もなく「後期高齢者」かと思える、スケッチをする人たちのグループ。絵を描く人は、写真のグループと違って、傍迷惑ではありません。
 シーズンのピーク時は、お酒を呑んで騒いだり、人の迷惑を顧みずにビュースポットを占拠する人たちも多かったのですが、それも落ち着きました。
 茶所の野良猫はすっかりアイドル。白黒の母猫に少し大きくなった黒猫がすり寄って日向ぼっこする様子は、かつての猫嫌いなボクでも微笑むだろうと思うほど。実に愛らしい、癒し系の姿でした。
 聞くところによると、ごく最近、塔頭の屋根裏で野良猫が3匹の子供を生んだとか。どの猫とどの猫の子供なのか予想がつきませんが、思い返せば‘猫の春’からもしばらく時が経っています。「あの頃の子かな?」と思い当たる節もあります。
 「子猫はどうなるのだろう・・・」 そんなことをボーッと思いながら散歩するには、ちょうどよい陽気となりつつある今日でした。





       た  ん  ぽ  ぽ  に  な  る  約  束  を  風  に  す  る        北原武巳





           新緑、境内一のもみじ /もみじの花      マウスを載せれば写真が変わります
 境内では、桜の花がまだ完全には散りきっていないのに、もうもみじの新芽が出て、新緑の梢に小さく赤い花を咲かせています。
 「いつもこんなに早かったかなぁ」とその早さに驚きましたが、去年もそんなふうに思っていたかも知れません。
 花の開花や鳥や虫の初鳴きなどで季節の移ろいを観測する「季節観測」を見ると、京都では桜の開花、銀杏の発芽、山吹の開花など、春の訪れはいずれも平年よりも早め。これから先も平年より気温が高いそうですから、夏の訪れも早そうです。
 万物が微妙な移ろいの姿を見せてくれるこの季節は「爆発的」です。驚くほど急激に木々などの様子が変わっていきます。もう少しゆっくり楽しませてくれればいいのですが・・・。

 雨がよく降って気温も上がってくると、草なども急に生え、見る見る伸びていきます。雨が降ると、「あー、また草が伸びる。草引きをしなければ・・・」と、現場を見るまでもなく、その様子が想像されます。
 草に混じっていっぱい芽を出しているのは、もみじです。地面の上、枯葉の中、樋の中、至るところで芽を出して、小さな葉を広げています。
 特に去年は、異常とも思えるほどたくさんもみじの種が実りました。一昨年の夏が暑くて小雨だったため、もみじが子孫を残さなければいけないと思ったためだろうと言われています。
    たんぽぽと点在するもみじの新芽 / もみじの集団芽吹き  マウスを載せれば写真が変わります
 そのたくさんの種が地面に落ち、いま、一気に芽を出しているのですから、その数たるや数万? 数十万?
 上手にお持ち帰りになって育てれば、ご自宅でも‘真如堂もみじ2世’をお楽しみいただけますが、境内に生えたままのものは、ほぼすべてが消えてしまいます。水切れでなど自然の厳しさに耐えきれずに枯れるものが大半ですが、草刈り機の刃の犠牲になるものもあります。成木になることなど、「あり得ない」と言っても過言ではないでしょう。
 ボクはそんな苗を育てて、少し大きくなってきたら境内に移植しています。他所から持ってきたもみじよりも、境内で生まれたもみじが一番ふさわしい気がするからです。それとて、大きく育つのは並大抵のことではありません。
 もみじの小さな芽を見る度に、いのちの得がたさ、有り難さを感じます。春はそういう季節でもあります。

             塔と「関山」 / 敷き椿      マウスを載せれば写真が変わります
 染井吉野は終わりましたが、境内では他にも花がいっぱい咲いています。
 鐘楼堂のまわりの八重桜が咲き出しました。「関山」という種類です。明治初年に巣鴨の植木屋によって荒川堤に植えられた名桜の中の一品種で、花の豪華さゆえに欧米人にも好まれるのだそうです。
 まだ咲き始めたばかりですが、花の盛りの頃、鐘楼堂の基壇の上に立ってみてください。全身をこの花に包まれた感じがして、実にゴージャスな気持ちになります。ぜひお試しあれ!
 今の境内は、何といっても椿です。藪椿から園芸品種まで、境内のあちこちにいろいろな椿が咲いています。
 先日、お友達同士で来られたというグループの一人が、花びらが1枚1枚ひらひらと散っている椿を見て、「これは椿ではない」と言い出し、「椿だ」という人と意見が合わず、たまたま通りがかったボクに「これは椿ですか?」と尋ねてこられました。
 確かに椿はポトリと落ちることが多く、花びらが1枚1枚散っていく椿を「散り椿」などということもありますから、珍しいには違いありません。「違う」と言った人には申し訳なかったのですが、「椿です」と言わざるを得ませんでした。
 余談ですが、首が落ちる椿を武士は嫌がったというのは、どうやらウソ。江戸時代に椿を愛し、熱心に品種改良などを行ったのは武士たちだったそうです。
 落ちた椿の花も実に綺麗です。お楽しみください!

           風にそよぐ山吹の花 / シャガ        マウスを載せれば写真が変わります
 他にも、ずっと咲き続けている馬酔木、今が盛りの山吹、境内のあちこちで咲いているシャガ、ひっそり咲くドウダンツツジ。池の畔の雪柳。花桃、木蓮、連翹れんぎょう・・・。実に百花繚乱です。
 今日は花を終えた山茱萸さんしゅゆや「縦皮桜」、枝垂れ桜などに、「来年も綺麗な花を咲かせてくれますように」と、お礼肥を施しました。
 花を見に来る人の大多数は、桜など勝手に咲くものと思っておられるでしょうし、もみじも放っておけば紅くなるものと思っておられるでしょう。確かにそうともいえますが、枝打ちや薬散、寒肥やお礼肥など、1年掛けて手入れをしたことも加わって、より綺麗な花を咲かせてくれ、紅さを増してくれるのです。椿や山吹なども、みんなそうです。皆さんに楽しんでいただこうと手塩に掛けた花々を、我がものとしようと手折ったりしないでくださいね!
 もうしばらくは花の季節が続きます。それからは一気に新緑です。人の少なくなってくる境内で、ゆっくりお過ごしください。




       し  ば  ら  く  は  春  草  を  見  て  夕  べ  か  な        日野草城