2/15版
例年なら、立春を過ぎた頃から気温は上がり始めますが、今年は立春以後のほうがかえって寒いような感じで、雪はよく降るし、13日には今冬の最低気温−1.9度を記録しました。 西の山を見ても比叡山を見ても白く、まだかなり雪が残っている様子です。こんなに雪が消えないのも、珍しいことです。今冬の寒さは、16・17日頃がピークだとか。まだまだ気が抜けません。 北向きの屋根や木陰など、境内の所々には13日に降った雪がまだ残っています。溶けた屋根の雪が立てる水音が、人影の少ない境内のそこかしこから聞こえてきます。雪解け水で濡れた石が、日の光を受けてキラキラと輝いていました。 寒く凜としつつも、しっとり落ち着いた雰囲気の今日の境内でした。
夕方近くには男性の団体の方がお見えになりましたが、そちらは皆さん寒そうでした。 久しぶりに、書院にある「涅槃の庭」に行ってみました。庭越しに見える大文字山は、まだ冬の色をしていましたが、夕方の斜めの光が差し込む書院の畳は、幾分あたたかく感じました。 塀際の木陰にはまだ雪が残り、木々の芽吹きを感じさせる兆しはまだ何もありません。 「春は名のみの風の寒さや 谷の鶯 歌は思えど 時にあらずと 声も立てず」という歌がふと思い出され、この歌の石碑がまだ残雪の多い安曇野の穂高川の土手に立っている光景が想像されました。 雪深いところの人は、なおさら春が待ち遠しいでしょう。真如堂にも、そろそろ春の予感が欲しいところです。 春 寒 や つ め た き 子 の 手 に ぎ り し め 長野豊子
真如堂の涅槃会は月遅れの3月15日で、3月1日〜31日の間、大涅槃図が公開されますが、実は2月15日にもこの大涅槃図が非公開で吊されているのです。 京都府下には約70軒の天台宗寺院があります。そのお寺の住職たちだけで営まれる涅槃会が、毎年2月15日に真如堂で行われるため、1日だけ大涅槃図が本堂の南側に吊されるのです。 本堂の中は、外よりも冷え込みます。ストーブもつけてありますが、‘気持ちだけ’です。約1時間の法要を終えた僧衆は、きっと冷え切ってしまわれたでしょう。 法要が終わった後は、せっかくですから、今日たまたま拝観に来られた方々にも見ていただきました。今日来られた方はラッキーでしたねぇ。 今、真如堂の事務所にはいろいろな出版社から涅槃図公開の記事の校正依頼のFAXが入ったり、3月の特別公開時に授与される「花供曽」あられの由緒を訪ねる電話などがかかってきています。 涅槃図が公開される頃には、境内も少し春色が増してきているでしょう。
回りを探してみましたが、残雪の塊はあったものの咲いていたのは、スミレはこの1輪のみ。咲いている一角だけが春めいているように感じられました。 地面にはもみじの種がビッシリ。枝に積もった雪と一緒に落ちてきたのでしょう。 種はまだいっぱい枝に残っています。何十万、何百万という種が、昨年、実を結んだのでしょう。 「これが全部芽を出して大きくなったら、立っている場所もなくなるなぁ・・・」などと想像しましたが、残念ながら発芽して成木になるのは1本もないでしょう。いのちをいただくことの希有さを改めて感じます。 春 寒 や 枯 木 に 寄 れ ば 日 の 匂 ひ 村山葵郷 |