2/9版
夜が明ける頃には雪の降る気配さえ感じませんでした。朝8時前頃になって急に細かい雪が降り始め、傘をささないといけないほど激しく降ってきて、あっという間に本堂の屋根が白くなりました。 「急に降ってきましたねぇ」と犬の散歩をする見知らぬ女性に挨拶をして、市街地の檀家宅へ車で出かけました。街中ではほとんど雪は積もっていませんでしたが、路地裏で小さな子供がどこからか集めてきたみぞれのような雪の塊をタライに入れて遊んでいました。 お昼前に境内に戻った時には、参道の石畳に積もった雪で車がスリップ寸前。「もうそろそろ止むかな」「昼間から、これ以上は積もらないだろうなぁ」という予想は外れ、夕方まで雪は間断なく降り続き、どんどん積もりました。 もちろん、今冬一番の雪。昼間に降り出した雪が積もるなんて、京都市内では滅多にないことです。
水分の多い雪の重みで参道脇の竹がしなって倒れて道をふさいだり、もみじの枝が低く垂れて傘がひっかかったり。 今日、ボクは夕方までに自坊の門の中を3度雪掻きしました。数年前に買った雪かき用のプラスチック製スコップが、ようやく日の目を見ました。 境内では、予想もしなかった雪に嬉しそうに驚きながらも、滑らないように怖々と歩く女性たちや、「待ってました!」といわんばかりに喜々として写真を撮る人の姿などが見られました。 ボクは写真を撮るために3度境内を回りましたが、激しく降り続く雪に、傘をさしていてもいつの間にかカメラはびしょ濡れ。帰って乾かし、また出かけるの繰り返しでした。
子供の頃、雪が降るとボクも大はしゃぎ。今のように、プラスチック製のソリなどなかったので、青竹を切ってきて二つに割り、火にあぶって先を曲げたものを2本並べた上に木箱などを打ち付けて、手製のソリを作りました。遊びの師匠は前住職で、ボクよりも喜々としていました。 正面参道の石段や自坊の前の参道などが、滑走コースに早変わり。雪を集めてコースを整備して、手製のソリで勢い付けて滑り降りました。 ソリが横向けになって放り出されて1回転しても、少しも痛くありませんでした。もちろん、衣服はびしょ濡れ。雪が溶けてきて滑れなくなるまで遊びました。雪がないときは、赤土の斜面に水を撒いて滑ったこともありました。 思い返してみると、子供の頃のほうがずっとよく雪が降りましたし、積もることも多かったです。今冬は霜柱も出来ませんでしたが、子供の頃は大きな霜柱を踏みしめて学校に行くことが度々ありました。それだけ温暖化が進んでいるのでしょう。 雪が積もる境内は子供にとってパラダイスのはずなのに、遊んでいたのはこの子たちだけ。喜々としていたのはカメラおじさんたち。何だかさみしい雪の日でもありました。 明朝の凍結が心配です。 ゆ く ゆ く は わ が 名 も 消 え て 春 の 雪 藤田湘子
洛陽六阿弥陀巡拝は、木食正禅養阿(1687-1763)上人が阿弥陀仏の霊感を受けて始められたもので、3年3月怠らずに各功徳日にお参りすれば、無病息災・家運隆昌・諸願成就などを功徳を受けることができ、また有縁無縁の精霊の追善回向をすれば必ず往生極楽できると説かれています。 洛陽六阿弥陀とは、一番 真如堂阿弥陀如来 二番 永観堂阿弥陀如来 三番 清水寺阿弥陀堂阿弥陀如来 四番 安祥院(木食寺)阿弥陀如来 五番安養寺(さか蓮華)阿弥陀如来 六番 誓願寺阿弥陀如来のことです。宗派の違うこの6ヵ寺の阿弥陀さまがどのような経過選ばれたのかはわかりませんが、おそらく江戸期にもご利益のある阿弥陀さまとしてお参りが絶えなかったのでしょう。 功徳日とその功徳は、1月15日−仏を6万体つくるにむかう 2月8日−五重塔を1万建つるにむかう 3月14日−七堂伽藍を建つるにむかう 4月15日−9万6千人の僧に施しをするにむかう 5月18日−父母を千度供養するにむかう 6月19日−風呂を1万度焚くにむかう 7月14日−塔婆を8万4千建つるにむかう 8月15日−万灯を8万度灯すにむかう 9月18日−一切経を8万度読むもむかう 10月8日−3千人の僧に衣服を1万度施すにむかう 11月24日−施行を6万度するにむかう 12月24日−法華経を3万部書写するにむかう 春秋彼岸−黄金の仏を8万4千体造るにむかうとされています。ものすごい功徳です。 功徳日の昨日もたくさんの方がお参りになりました。最後の六番 誓願寺さんは繁華街 京極の中。誓願寺さんに巡拝されるのはお昼近く頃。昼食を召し上がったり、デパートに立ち寄って帰るなどという楽しみもあるのでしょうね。
雪の積もった紅梅は、紅と白のコントラストも艶やかで、なお一層紅色が引き立って見えます。 ボクは、桜よりも梅のほうが好きです。花が凜としている気がするからです。梅がもう少しあたたかくなってから咲いてくれれば、なおさら申し分ありません。 梅は寒い時期に咲いて、受粉を助けてくれる虫なども少ないはずなのに、ちゃんと実を結びます。 時おり、鳥が花を突いているのも見かけます。「梅に鶯」といいますが、梅の木によく飛来しているのはメジロやウソのようです。メジロはつがいや群れで行動しています。ウソも3、4羽で群れています。 ウソは「フイーッフイーッ」と口笛のような声で鳴きますが、その名は口笛を表す古語「うそぶく」に由来しているそうで、嘘つきということではないようです。名前で損をしていますね。 今日も降りしきる雪の中、ボクが近付いたのに驚いた数十羽の鳥たちが、木の枝に積もった雪を蹴散らしながら一斉に飛び立っていきました。木々が葉を落とした冬は、鳥たちの姿もよく見えます。雪の中の鳥もまた美しい景色です。 立春を過ぎましたが、春の訪れの兆しは雪に埋もれて、まだ見つけることは出来ませんでした。 一 本 の 薄 紅 梅 に 冴 え 返 る 高浜虚子 |