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          少しずつ秋が深まる本堂前        マウスを載せれば写真が変わります
 時おり青空が見えていたものの、だんだん曇りがちになってきました。北の高気圧と南の前線が駆け引きをしているそうで、次第に前線が優位になってきて、お天気は下り坂。明日にはだんだん冷たい雨が降り出し、明後日も雨の予報です。
 今日は風もなく、最高気温は22度近くまで上がりました。まだこの先1週間ほどは、平年よりも気温が高いという予報です。
 少しも寒くならないどころか、先ほどは蚊の羽音を聞きました。11月になって、立冬も過ぎたというのに、まだ蚊が飛んでいるなんて。
 京都の紅葉はまだまだ。紅葉マップでは、三千院や高雄など、京都市内の北のほうでは「色づき」、比叡山は「見頃」となっていますが、市内の大多数の名所は「まだ」の表示から変わりません。
 昨日乗ったタクシーの運転手さんの話では、観光に来られた方はまず紅葉の名所に行かれるものの、ほとんど紅葉していないのを見て方針を変え、博物館に狩野永徳展を観賞しに行ったりされているそうです。同展も大変混雑していて、平日でも1時間、1時間半待ちとか。休日は推して知るべし。
 ツアーの方は紅くもなっていない紅葉の名所を回らざるを得なくて、ちょっとお気の毒です。


      本堂越しの紅葉 / 境内の人出はまだまばら      マウスを載せれば写真が変わります
 境内のもみじも、少しずつ色付いて来てはいますが、全体としてはまだ青く、紅葉を楽しむにはほど遠い感じです。
 ただ、桜の葉の紅葉が進んで少し色が冴えてきたのと、かえでの一部が紅くなってきているのとで、境内全体がわずかに紅葉してきたかのように見えています。
 話が逸れますが、この頁で「もみじ」と「かえで」を区別していると、毎年、「もみじとかえではどう違うのですか? 同じではないのですか?」というお問い合わせがあります。念のために、ちょっと説明させていただきましょう。
 植物分類上ではもみじもかえでも、同じカエデ科カエデ属で、区別はありません。ただ、園芸の世界では区別されていて、イロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジなど、葉が5つ以上に切れ込んで掌状のものを「モミジ」と呼び、切れ込みが3つのトウカエデなどを「カエデ」と呼んでいます。
 見た目も違うので、このページでは両者を区別し、ボクは片仮名より平仮名が好きなので「もみじ」「かえで」と書いています。長々とスミマセン。
    「花の木」がんばれ! / 今、境内で一番美しいカエデ    マウスを載せれば写真が変わります
 その境内のかえでやもみじの中でも、いち早く綺麗に紅葉するのが本堂正面の手水舎の横にある「花の木」。この木は、昭和天皇御大典記念に三井家が木曽福島で買い求めて京都植物園に植えたうちの1本で、昭和4年、植物園から真如堂に移植されました。
 例年11月半ば頃に紅葉し、‘成績’のいい年には、木の上から紅、黄、緑のグラディエーションになって、それはそれは見事なものでした。ところが近年の温暖化で、そんな素晴らしい光景が見られなくなり、樹形も悪くなってしまって、残念な限り。
 その「花の木」も、今はまだ枝先が紅くなっている程度ですが、今年も往時のような紅葉は見られそうにありません。
 いま、境内で一番美しいのは、本堂の右横の藤棚の中に立っているかえでです。朝の光がちょうどこの木に当たった時は、実に鮮やかな朱色に輝いていました。
 もうしばらくすると、境内を木々を見て、それぞれに「この木は今日が紅葉のピークかな」と思える日が続きます。もちろん、「今年は残念でしたぁ〜」という木もたくさんあります。境内のもみじも高齢化で、世代交代の時期かも知れません。
 境内の紅葉の見頃は、今年は11月下旬〜12月初旬です。




        小   春   日   や    杖   一   本   の   旅   ご   こ   ろ          村越化石





   本堂に明かりが灯る十夜の夜 /白い綱の先は御本尊の御手に繋がる  マウスを載せれば写真が変わります
 5日の夜、「お十夜じゅうや(十日十夜別事念仏会)」の開闢かいびゃく法要が勤められ、10日間の法要が始まりました。
 夜になってあたりが真っ暗になってきた頃、本堂に明かりが灯り、20人ほどの方が集まって来られます。そのうち、何かを唱える人の声と共に「カラ〜ン カラ〜ン」という鉦の音が聞こえてきます。「鉦講」と呼ばれる人たちが、鉦を打ちながら念仏などを唱えておられるのです。
 「お十夜」の起源としては、次のような話が残されています。
  足利義教公の執権職をしていた伊勢守貞経の弟 平貞国は無常を感じて、自分は仏道に生きようと真如堂にこもって念仏の行をしました(1430年頃)。3日3夜のお勤めが済んだら髪を落として出家しようと決意していた3日目の明け方、貞国の夢枕にお坊さんが現れて、「阿弥陀さまを信じる気持が本当なら、出家するしないは関係ないではないか。出家するのは待ちなさい」とお告げをされ、「心だにたてし誓ひにかなひなば 世のいとなみはとにもかくにも」という歌を下さったといいます。
 貞国が出家を思いとどまって家に帰ってみると、兄は上意に背き吉野に謹慎処分。代わりに貞国が家督を継ぐようにという命令が下っていました。
 貞国は、「兄は謹慎だし、自分も出家をしていたら家督を継ぐ者がいなくなって、執権職を受けるどころか、家も断絶していただろう。これは阿弥陀様のお陰だ」と感謝し、あと7日7夜、合計10日10夜の念仏をしました。
 その後、鎌倉光明寺の第8世観誉祐宗上人が、後土御門天皇に宮中に招かれて真如堂の僧と共に念仏を修したのを契機に、光明寺でも十夜法要を行うようになりました。現在では、天台宗よりも浄土宗の寺院で、お十夜法要が広く勤められています。
 「この世で十日十夜善いことをすれば、仏国土で千年善いことをしたことに勝る」という教え(『無量寿経』)をもとにし、阿弥陀如来の法恩に対する感謝のための法要です。
         ご開帳された御本尊 / 十夜の鉦        マウスを載せれば写真が変わります
 本堂内陣に作られた壇の上には、直径12寸(約36cm)ほどの、音階の違う鉦が左右に4つずつ、合計8つ並び、「鉦講」の人たちがそれを打って念仏などを唱えます。「笹づけ」「地念仏」「佛がけ」「三ツ池」追いがけ」など、その打ち方は15種類以上あり、一番左に座った「伽陀かだ」と呼ばれる人が音頭を取ります。
 「 ナァーアィ○ マァーアィ○ ダァーアァ○ ナモーオーン○ アァーアミィ○ ダァーアァ○ アーン 」(「地念仏」。○印で鉦を打つ)。
 初冬の夜のひんやりした空気の中、澄んだ鉦の音が聞こえてくると、「あー、お十夜だなぁ。今年ももう残すところわずかだなぁ」としみじみ思います。ボクはこの鉦の音が大好きです。
 5日の開闢法要で御本尊の扉が開けられ、15日には御厨子の上の御本尊のすぐ前まで上がって参拝していただけます(5〜14日は夜のみ開扉)。15日の結願法要では、稚児やきらびやかな衣をまとった僧衆が境内を練り歩きます。また、本堂前のテントでは、しもの世話をしてもらわなくても済む、「たれこ止め」の御利益があると伝えられる「十夜粥」が接待されます(有料)。
 冷え込みの厳しかった数十年前は、お十夜結願の頃に紅葉も最高潮に達し、全山が錦に包まれる中、法要が厳修されていたのですが、今までは法要が終わって10日以上経ないと、綺麗な紅葉が見られなくなってしまいました。





      十   夜   鉦    障   子   灯   る   を   待   ち   か   ね   て         草間時彦





      嵯峨菊なども咲いてきた菊花展 /真っ赤な千両の実    マウスを載せれば写真が変わります
 吉祥院の菊もだんだん咲きそろってきました。住職の話によると、15日のお十夜結願日に見頃を迎えるように作っているそうで、「今どき、紅葉も菊もタダで見られるようなお寺はない」というのがご自慢のようです。
 「境内に入るのにお金を取ったらどうですか?」と進言してくださる方も多いのですが、自由にお参りしていただけるのがお寺。当分? ずっと? そういうことにはならないでしょう。
 南天や千両、万両などの実が、日に日に赤くなってきました。まだ完熟していないので、鳥たちもついばしももうとはしません。
 菊を見に来られた方が、千両を指さして、「これ、万両? 千両?」と言っておられることがよくあります。千両は葉の上に、万両は葉の下に、実を付けますから、違いは一目瞭然です。
 先日、ホームセンターで「百両」を見つけ、即座に求めました。江戸時代に中国から伝来した中国名「百両金」に日本の唐橘からたちばなを当てて「百両」と名付けたようで、万両に似ているものの草丈は低く、実も少ないことから「百」になったそうです。
 これで自坊の庭には、万両、千両、百両が揃いました。すごく豪勢な気分! 「百千万両の庭」とでも命名しましょうか!?
 12日から今月末まで、その庭のある祥源坊で、「かふぇ水琴窟」を開催します。こころの病を持つ人たちが、紅葉を見に来られた方々などに紅茶やコーヒーの御接待をさせていただきます(各400円)。紅葉と水琴窟のある「百千万両の庭」を眺めながら、ほっと一息いかがですか?
 紅葉にはまだまだ早いですが、皆さまのお越しをお待ちしていま〜す!