10/19版 




       足音も響きそうな雨の境内 / 秋は奥行き深し     マウスを載せれば写真が変わります
 雨の1日でした。しとしと降る秋らしい雨ではなく、時おり強く、少し斜めに降る本格的な雨でした。
 ここ1週間、雨が降らなかったので、木々にとってはありがたい恵みの雨となりましたが、晴天に慣れていた身には、傘をさすのがちょっと面倒でした。
 今日の最高気温は18.7度と昨日よりも6度も下がって、一気に11月初旬並み。つい先日まで「暑い、暑い」と言っていたのが嘘のよう。日もすっかり短くなりました。
 雨の境内は静かで、本堂の大きな樋から落ちる雨だれの音が、しんとした境内に染み渡ります。犬の散歩もお休みにされる方も多く、訪れる人はごくわずかです。猫さえも顔を出しません。
 こういう日に、本堂の廊下に座って境内を眺めるのは最高にオススメ! 何も頭の中に去来しない、無心で静かな時間が流れていきます。あるいは、ひとり物思いにふけるにはもってこいのお膳立てが出来ています。
 次の雨に日、お試しになってはいかがですか?


      色づき始めたもみじと伝教大師像 / 雨音だけの参道     マウスを載せれば写真が変わります
 境内のもみじも、ここ数日の涼しさに急かされたかのように、急に緑色が濁ってきました。木によっては早々とオレンジっぽくなってきているものもあります。
 毎日境内を歩いているボクでさえ、先週よりも確実に色が濃くなってきていると感じるほどですから、その変化たるやかなり急なのでしょう。
 境内の四季の移ろいを見ていると、ものすごいスピードで景色が変わった行く時と、1週間経っても2週間経っても、ほとんど変わらないという時があります。
 いまは、ほとんど動きのなかった時期から、じわじわと動き出して加速が付き始める前のような感じです。これからまだまだスピードは上がっていき、1ヶ月後の境内は赤く染まっていることでしょう。




         京  が  好  き   こ  の  秋  雨  の  音  も  好  き        中村吉右衛門





  快晴の境内の色まだら(10/18) / 櫨の木の一葉紅し(10/18)   マウスを載せれば写真が変わります
 今日は忙しくて写真を撮る時間があまりないと思って、昨日、何枚か写真を撮っておきました。
 光ほど卓越した演出家はいないと、いつも感心させられます。快晴の昨日は、青空をバックに木々もひときわ美しく見えました。
 光を透かしてみると、木の葉の微妙な色の変化がよくわかります。緑から黄色、緑から紅へのグラデュエーションのもみじの葉先、薄い黄色、濃い黄色がちりばめられた沙羅樹、緑と赤のコントラストが美しいはぜ。どの木も光を浴びて、なお一層美しく見えます。
 話が飛躍しますが、女優の顔を照らして、顔色よく見せたり、小じわを隠したりする「女優ライト」というものがあるそうです。日の光は木の葉に本来備わっている美しさを引き出してくれるもので、無理矢理綺麗にみせようとする「女優ライト」とはまるで違います。
 これから木々が色付いてくるにつれて、とりわけ朝な夕なの日の光は、えもいわれないほど美しい境内を見せてくれます。今年もその素晴らしい演出に期待しましょう。楽しみですね。

    日の当たる紅い貴船菊(10/18) / 乱れ咲く白貴船菊(10/18) マウスを載せれば写真が変わります
 境内の萩もすっかり終わり、目立った花はなくなりました。
 自坊の門前では、白い貴船菊(秋明菊)に続いて、紅い八重の貴船菊が咲き出しました。白も紅も、光を受けながら風にそよいでいる様は、とても美しいものです。
 その近くでは、蕎麦の花がまだ咲いています。小さくて目立たない花なのに、時々それを見つけて写真を撮っている人がいます。「よく気が付かれたなぁ」と感心しきりです。
 櫨の実も落ち始めました。小さな葡萄のような形をしていて、房ごと落ちてきます。あまり綺麗とは言えませんが、この実から和蝋を作っていたということを彷彿とさせる質感です。
 桜の葉は赤くなったり黄色くなって、順繰りに落ちてきます。かえでの葉もハラハラと舞っています。
 22日は、京都三大祭りの一、「時代祭」と「鞍馬の火祭」。23日は十三夜、24日は早くも「霜降」です。暦の上では晩秋、これからがいよいよ秋らしくなってきます。
 涼しいを通り越して、寒さを感じるようになってきます。「灯火親しむ」という言葉もピッタリ。皆さん、お風邪をめされませんよう、深まりゆく秋をお楽しみください。




     秋  思  な  ど   て  ん  ぷ  ら  に  し  て  お  し  ま  い  な      塩見恵介