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      咲き始めた萩 / 静かな境内の母子      マウスを載せれば写真が変わります
 蒸し暑い日となりました。この暑さは台風の置きみやげ?
 関東地方などに様々な被害をもたらした台風9号ですが、京都は夕べ少し風が強くなっただけで、ほとんど雨も降りませんでした。
 今日は朝から曇りがちで、青空が見えて日が照りつけたかと思ったら、夕立を連想させるような黒雲が立ちこめたり。でも、結局、一粒の雨も降りませんでした。
 しかたがないので、夕方、境内に植え替えた紫陽花に水をやりに行ったら、本堂前の手水舎のあたりにたくさんの赤とんぼ(アキアカネ)が飛んでいるのを見つけました。午前中、醍醐寺の近くでも赤とんぼを見ました。今年初めてでした。
 アキアカネは夏の間は高い山で避暑生活を送り、秋が近づくと里に降りてくると聞きます。今日も厳い暑さでしたが、8月の灼けるような暑さとは明らかに質が変わってきています。アキアカネも、秋本番近しと感じてやってきたに違いありません。

       晴れてるのか、曇ってるのか?/ 晴れてた!      マウスを載せれば写真が変わります
 秋を実感させる萩の花もほころび始めました。「秋だなぁ」と思えるこの日を、ボクは待っていました。
 もちろん、まだまだ残暑厳しい日が続きますが、萩が咲き、すすきの穂が開いてくると、中秋の名月が待ち遠しくなってきます。
 8日は「白露」。「陰気ようやく重りて、露こごりて白色となれば也」という頃はまだかなり先ですが、秋の気配が濃くなってくることが暦の上からも感じられます。
 少しずつ秋の花も増えてきて、景色の移ろいが止まってしまったような夏も次第に終わっていくのだなぁと、今日は実感しています。
 境内の紅葉一番乗りの本堂前の花の木も、木の天辺あたりの色がほんの少し変わってきました。紅葉まであと2ヶ月余。花の木がいち早くカウントダウンを始めたのでしょうか。




        ケ  イ  タ  イ  の  小  窓  の  自  由  赤  と  ん  ぼ           田中倫代




          黄葉混じりの桜の木 / ホルターガイスとの葉   マウスを載せれば写真が変わります
 少し前から桜の葉が散り始め、毎日、その掃除に終われるようになりました。一度にまとめて落ちてくれるといいのですが、毎日、ヒラリヒラリと少しずつ落ちてきます。今は黄色くなって落ちてきますが、もみじが紅葉する頃には桜の葉も赤くなってきます。
 考えてみれば、落ち葉掃除はこの桜の葉から始まって、年末にもみじがすべて落葉するまで、ずっと続きます。雨が降った日はお休みになるので、ホッとします。
 今日の境内も人影はまばらでしたが、外国人がひとりで歩いている姿をよく見かけました。外国人対象の行事がどこかであったのでしょうか?
 写真を撮っていたら、本堂の堂守に、「すみませ〜ん! ちょっとお願いしま〜す」と呼ばれました。一見して、外国人の方に道を聞かれて困っているのだとわかりました。
 「この方が銀閣寺に行きたいとおっしゃるのですが、日本語はぜんぜんわからないようで。お願いできますか?」と、すっかり任されてしまいました。お願いされてもボクも英語はしゃべれません。幸い地図をもっておられたので、本堂の裏までお連れし、その地図を見ながら道案内をしました。彼はフィンランド人。別れ際に握手をしたら、プ〜ンとお酒の匂いがしてきました。さすがに、お酒の欠かせない北欧の人だと思いました。
 本堂の前まで引き返す時、変わった葉を見つけました。「葉っぱが石畳の上に立ち上がっている・・・『ホルターガイスト』みたいや。これはネタになる!」と、即座に寝転がって写真を撮りました。もし、そんな様子を見ていた人がおられたら、「何が起きたの!」とビックリされたのではないでしょうか? 実は、踏まれて穴が空いた山芋の葉が乾き、何かの拍子で起き上がっただけのこと。今日は写真が少ないので、採用しました。

       落ち始めた大砲ドングリ / モクゲンジの種     マウスを載せれば写真が変わります
 「わずか1週間経っただけで、こんなに違うんだなぁ」と実感したのが、秋の実たち。
 昨日の朝の散歩の時に、「大砲ドングリ」の実が落ちているのを見つけて大喜び。ボクの大好きな実です。
 でも、今年の実は痩せて「大砲」の名にそぐわないスリムなものも少なくありません。雨が少なかったからでしょうか?
 この実の尖っているほうを1センチほど切り落とし、中の実をほじくり出して笛にすると、張りのある力強い音が出ます。ボクは物心ついてからずっと、秋になるとこの笛を作っています。今年もいい年をして・・・。
 栴檀葉せんだんばの菩提樹(モクゲンジ)の袋果も熟して、実が落ちてくるようになりました。丸みを帯びた三角錐のような形の袋果は、地面に落ちた時にはほとんど3裂し、その片それぞれには1〜2つの黒い種が付いています。数珠を作るには小さすぎる種ですが、発芽力が旺盛で、翌春たくさん小さな芽が出てきます。
 この木の近種に「オオバモクゲンジ」があり、いま、鐘楼堂の近くで黄色い花を咲かせています。背が高く、回りを他の木に囲まれているので、下に落ちている花柄を見つけるまで開花していることに気が付きません。この実も11月頃になると淡紅色に熟して落ちて3裂し、やがてたくさんの芽が出てきます。
 本堂前の菩提樹の実も熟して茶色くなってきました。花よりも実のほうが、秋の深まりを敏感に感じているのかも知れません。
       野菊のような君なりき / 鮮やかなブルー、露草     マウスを載せれば写真が変わります
 「僕はもとから野菊がだい好き・・・民さんはそんなに野菊が好き・・・道理でどうやら民さんは野菊のような人だ」とたとえられた野菊はいったい何という種類の花なのでしょうか? 野菊と言われてイメージする花は育った場所などによっても違い、たくさんの花が「野菊」と呼ばれているようです。
 ボクもこの花を見て、「あっ、野菊が咲いている。嫁菜よめなだな」と思いましたが、調べてみると、どうやら関東嫁菜。いや、柚香菊ゆうがぎくかも知れません。嫁菜はもう少し色が濃いようです。
 「民子の墓の周囲には野菊が一面に植えられた。・・・幽明遙けく隔つとも僕の心は一日も民子の上を去らぬ」 15歳の少年政夫が淡い恋心をいだいた民さんからボクがイメージするのは、この薄い色の花です。あー、純愛やなぁー。
 朝、露草の写真を撮って、昼下がりにもう一度撮りに行くと、すっかり萎んでいました。
 「朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから『露草』と名付けられたという説がある。英名のDayflowerも『その日のうちにしぼむ花』という意味を持つ」とのこと(Wikipedia)。なるほど、そうとはつゆ知らず。ボクが露が似合う花だからだと思っていました。はかなさとは裏腹の、実に鮮やかなブルーですね。
 秋の野の花も咲いてきました。つらい残暑も野の花を探していると、少し和らいでくる気がします。暑さ対策をして、少し散策をされてはいかがでしょう? 賑やかなツクツクボウシの声も、涼しく聞こえてくるかも知れません。




      畳   か   ら   秋   の   草   へ   と   つ   づ   く   家         鴇田智哉