8/31版
天気の移り変わりと共に、境内から聞こえてくる‘声’も変わっていきました。 驟雨の時はただ雨の音ばかり。少し小雨になると、秋の虫たちの声が聞こえてきました。雲が薄くなり、少し明るくなって来たかと思ったら、いち早くツクツクボウシ数匹が同時に鳴き始めました。アブラ蝉はそれに遅れ、天気が安定しだしてから鳴き始め、音の主流を占めるようになりました。時おり、クマ蝉やミンミン蝉の声も聞こえましたが、‘単発’。虫の音を聞いているだけでも、ずいぶん面白く思えました。 今日の最高気温は30度を超えなかったものの、湿気が多くて、少し動くと汗がにじんできました。 27日に35度を超えた後は、今日を含めて4日間、30度を前後する日が続きました。雨も今日で3日連続。植木などへの水やりからは解放されましたが、こんなにまとめて降らずに、数日おきとか、もう少し効率よく降ってくれればよかったのに・・・。 明日は「二百十日」。立春から数えて210日目で、嵐の来襲する確率の高い日として、八朔や二百二十日とともに、三大厄日として怖れられました。今年は台風こそ来ていませんが、全国的に荒天となって、季節の変わり目であることを実感させられます。「おわら風の盆」など、風を鎮め、五穀の豊穣を祈る祭が行われる頃でもあります。 京都で本格的な観測の始まった1881年以来3番目に暑かった8月も今日で終わり。カレンダーを1枚めくっただけで、気分も変わってくるのが不思議です。 ひ た す ら に 鳴 い て 名 を 得 し 法 師 蝉 新津静香
屋根の樋からの雨だれが滝のように落ちてきて、水桶は一気にあふれ、霧のように細かい水滴が風に飛ばされてきて、庇の下にいても濡れてしまうほどでした。 突然、「キャァー!」という叫び声がしたので何事かと振り返ると、犬の散歩をしていた女性が慌ててサンダルを履いていました。雨宿りをしようとして駆けて来る途中に脱げてしまったのです。女性は大急ぎで庇の下へ飛び込んできました。 「こんなに急に強く降るとは思っていませんでした。こんな時に散歩しているのは私だけですよねぇ」と、ちょっときまりが悪そう。本堂の堂守も、傘は役に立たないと飛び込んできました。 雨が少し小振りになり、雷の音が大きくなってきたので、ボクが「雷が近付いてくるようですね」と言うと、
あまりに一気に降った雨に木々は枝を垂れ、集まった大量の水に溝はあふれて、境内の窪んだところは赤土色の池と化しました。 こうなると、ボクの‘血’が騒ぎます。雷を気にして逃げ腰気味ながら、排水の具合を見て回ったり、屋根から落ちる雨水の様子を観察したりして、ボクも何度かサンダルが脱げました。雷さえ鳴っていなければ、もっと落ち着いて雨を楽しむことができましたのに・・・。 これだけ降っても、平年の8月の2/3の降水量に過ぎません。雨の恵みを受けて木々もクールダウンし、早く酷暑の疲れを癒して、紅葉に備えて欲しいものです。
そんな中、自坊の庭に貴重な花である玉紫陽花が咲き出しました。その名は蕾が大きく丸い苞に包まれていることに由来し、写真でも花の真ん中にその苞が残っているのがわかります。 玉紫陽花は一斉に開花するのではなく、大きくなった蕾から順番に開いていくので、長い間、花が見られます。白い装飾花が3〜5つほど見られる、簡素で色の淡い花で、咲いている姿よりも、蕾がはじけて花が顔を出す頃の方がインパクトがあります。 玉紫陽花は主に関東や中部に自生し、近畿ではあまり見られません。この株も、房総半島の坂東三十三観音札所第三十一番 笠森寺から分けていただいたものです。 秋の花がたくさん咲く頃が待ち遠しく思えますが、まだしばらくは平年よりも暑い日が続くそうです。もう一頑張りです。 遠 く ま で 行 く 秋 風 と す こ し 行 く 矢島渚男 |