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  土砂降りの正面参道 / 白い砂も流されていきます   マウスを載せれば写真が変わります
 朝早くから土砂降りの雨と雷。その後は時おり小雨が降る曇天で、夕方には少し晴れ間が出てきました。
 天気の移り変わりと共に、境内から聞こえてくる‘声’も変わっていきました。
 驟雨の時はただ雨の音ばかり。少し小雨になると、秋の虫たちの声が聞こえてきました。雲が薄くなり、少し明るくなって来たかと思ったら、いち早くツクツクボウシ数匹が同時に鳴き始めました。アブラ蝉はそれに遅れ、天気が安定しだしてから鳴き始め、音の主流を占めるようになりました。時おり、クマ蝉やミンミン蝉の声も聞こえましたが、‘単発’。虫の音を聞いているだけでも、ずいぶん面白く思えました。
 今日の最高気温は30度を超えなかったものの、湿気が多くて、少し動くと汗がにじんできました。
 27日に35度を超えた後は、今日を含めて4日間、30度を前後する日が続きました。雨も今日で3日連続。植木などへの水やりからは解放されましたが、こんなにまとめて降らずに、数日おきとか、もう少し効率よく降ってくれればよかったのに・・・。
 明日は「二百十日」。立春から数えて210日目で、嵐の来襲する確率の高い日として、八朔や二百二十日とともに、三大厄日として怖れられました。今年は台風こそ来ていませんが、全国的に荒天となって、季節の変わり目であることを実感させられます。「おわら風の盆」など、風を鎮め、五穀の豊穣を祈る祭が行われる頃でもあります。
 京都で本格的な観測の始まった1881年以来3番目に暑かった8月も今日で終わり。カレンダーを1枚めくっただけで、気分も変わってくるのが不思議です。




       ひ  た  す  ら  に  鳴  い  て  名  を  得  し  法  師  蝉        新津静香





     雨宿りする女性と堂守/「小雨のうちに!」と走る女性    マウスを載せれば写真が変わります
 小雨が降り遠雷が聞こえて来る時、雨に濡れる境内を撮ろうと傘をさして出かけたら、急に雨脚が強くなり、雷鳴も大きくなったので、本堂の屋根の下に逃げ込みました。
 屋根の樋からの雨だれが滝のように落ちてきて、水桶は一気にあふれ、霧のように細かい水滴が風に飛ばされてきて、庇の下にいても濡れてしまうほどでした。
 突然、「キャァー!」という叫び声がしたので何事かと振り返ると、犬の散歩をしていた女性が慌ててサンダルを履いていました。雨宿りをしようとして駆けて来る途中に脱げてしまったのです。女性は大急ぎで庇の下へ飛び込んできました。
 「こんなに急に強く降るとは思っていませんでした。こんな時に散歩しているのは私だけですよねぇ」と、ちょっときまりが悪そう。本堂の堂守も、傘は役に立たないと飛び込んできました。
 雨が少し小振りになり、雷の音が大きくなってきたので、ボクが「雷が近付いてくるようですね」と言うと、
            深山幽谷に建つ寺のような驟雨の境内     マウスを載せれば写真が変わります
女性は「雷はいやぁーん! 今のうちに帰ります」と急いで庇の下から出て行きました。また、サンダルが脱げないといいのですが・・・。
 あまりに一気に降った雨に木々は枝を垂れ、集まった大量の水に溝はあふれて、境内の窪んだところは赤土色の池と化しました。
 こうなると、ボクの‘血’が騒ぎます。雷を気にして逃げ腰気味ながら、排水の具合を見て回ったり、屋根から落ちる雨水の様子を観察したりして、ボクも何度かサンダルが脱げました。雷さえ鳴っていなければ、もっと落ち着いて雨を楽しむことができましたのに・・・。
 これだけ降っても、平年の8月の2/3の降水量に過ぎません。雨の恵みを受けて木々もクールダウンし、早く酷暑の疲れを癒して、紅葉に備えて欲しいものです。

       咲きかけの玉紫陽花 / 開花した玉紫陽花     マウスを載せれば写真が変わります
 境内に花を求めても、萩などの秋らしい花はまだ何も咲いていません。日陰にわずかに秋海棠が咲き、目を凝らして探せば、ようやく色付いてきた赤のまんま(赤まんま)が見つかる程度です。
 そんな中、自坊の庭に貴重な花である玉紫陽花が咲き出しました。その名は蕾が大きく丸い苞に包まれていることに由来し、写真でも花の真ん中にその苞が残っているのがわかります。
 玉紫陽花は一斉に開花するのではなく、大きくなった蕾から順番に開いていくので、長い間、花が見られます。白い装飾花が3〜5つほど見られる、簡素で色の淡い花で、咲いている姿よりも、蕾がはじけて花が顔を出す頃の方がインパクトがあります。
 玉紫陽花は主に関東や中部に自生し、近畿ではあまり見られません。この株も、房総半島の坂東三十三観音札所第三十一番 笠森寺から分けていただいたものです。
 秋の花がたくさん咲く頃が待ち遠しく思えますが、まだしばらくは平年よりも暑い日が続くそうです。もう一頑張りです。




       遠  く  ま  で  行  く   秋  風  と  す  こ  し  行  く          矢島渚男