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      晴れると緑がまぶしい! / 夏が大好き木槿むくげの花    マウスを載せれば写真が変わります
 九州は大雨。京都は曇りの予報でしたが、午後は一時カンカン照りになりました。でも、緑陰に入ると意外と風は爽やか。ご婦人たちが長い時間ベンチに座っておしゃべりをされていたり、木の下に駐めたタクシーの中で運転手さんがシートを倒して昼寝をされていました。さぞかし気持ちよかったでしょう。
 「いやぁー、今日は曇りだと言ってましたのにねぇ」と、草引きをする職員。カンカン照りは恨めしい天気で、日陰ばかり草がなくなっていきます。
 境内は照り返しがなく、樹木が多い分だけ涼しく、ボクの子供の頃には、広くてひんやりした本堂で勉強をする近所の受験生もおられました。実にのんびりした夏の光景でした。いまはエアコンの効いたご自宅のほうが快適に違いありません。
 国立環境研究所のスーパーコンピューターのシミュレーションによると、2030年の東京では、最低気温が27度以上の極端な熱帯夜が現在の3倍に、最高気温が35度以上になる猛暑日も1・5倍に増加するとのこと。京都はそこまでには至らないでしょうが、境内で涼むことはもうできなくなっているかも知れません。
 境内を訪れる人のほとんどは常連の方ばかり。それぞれの‘定位置’に座り、あるいはお決まりのコースで境内を通り過ぎて行かれました。
 菩提樹、沙羅、紫陽花などの花が終わった今の境内。もうしばらくすると、たくさんの木槿むくげが咲き出します。待ち遠しい限りです。


       木陰の接吻 / 木漏れ日の中で   マウスを載せれば写真が変わります
 7月に入り、祇園祭の諸行事が始まり、今日は山鉾巡行で先頭を行く長刀鉾の神事始め「吉符入り」が行われました。
 世界遺産ブームですが、祇園祭山鉾連合会も祇園祭を世界文化遺産に申請してもらおうと動き始めたそうです。ご苦労さま。
 祇園祭は疫病退散の神事が起源ですが、京都の7月中下旬は高温多湿でもっとも不快な季節。疫病も流行りそうです。
 ただでさえ不快な季節な上に、今年の宵々山・宵山は日曜・祝日で大勢の人が予想され、身動き取れないような大勢の人の熱気、人いきれは想像を絶するものがあるでしょう。
 10日頃から鉾が建ち始めると、他府県からお越しになる方も増えてきます。今年は宵々山・宵山にホテルが取れなかった方が多く、諦めきれずに近い日程でお越しになるでしょう。これからは蓮も見頃になってきます。朝一番に蓮の名所を訪ねて心を清浄にされてから、いざ祇園祭の人混みに向かわれてはいかがでしょうか?
 今月の真如堂のめぼしい行事は、25日の「宝物虫払会」だけ。木槿むくげの他に花はなし、行事もなしの愛想ナシですが、野良猫が涼む姿だけはご覧いただけるでしょう。




      思 い 出 の 一 つ の よ う で そ の ま ま に し て お く 麦 わ ら 帽 子 の へ こ み       俵 万智




        盛りを過ぎた栴檀葉せんだんばの菩提樹    マウスを載せれば写真が変わります
 「京の夏の旅」というキャンペーンがあることを初めて知りました。
 今年の定期観光バスのテーマは、「京の涼景と貴賓館を訪ねて」。延暦寺の迎賓館−延暦寺大書院、平安神宮の貴賓館−平安神宮尚美館、大雲院祇園閣を巡るのだそうです。「涼景」はどこ?
 また、親子で寺院の作務を体験する妙心寺講座、花街祇園を英語通訳の案内で散策するウォーキングツアー、恒例の高台寺での夜のお茶会などもあるそうです。うわぁー、暑そう・・・。
 京都の夏の観光客は祇園祭に集中し、それ以外の時はガクッと落ち込みます。落ち込んだ時期に観光客を誘致しようというのがこのキャンペーンの狙いだと思いますが、これではあまりに魅力に欠けます。
 夏の暑さと冬の冷え込みが京都の文化や風土を作った、通り庭や坪庭、打ち水など、自然をうまく取り入れて涼を呼ぶ工夫がなされているなどと言われますが・・・。あえて夏の京都にチャレンジしようという方は、覚悟を決めてお越しください。7月の終わりから8月初めにかけてが、もっともチャレンジし甲斐のある頃です。

          龍の髭の花/ 白式部の花      マウスを載せれば写真が変わります
 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
 今日は「サラダの日」。一昔前にベストセラーとなった俵万智さんの『サラダ記念日』に因んでいます。『サラダ記念日』の俳句は実に新鮮でした。
 サラダ・・・ボクが畑で作っているトマトは赤くなり始めたばかり。胡瓜ももう少し。「サラダの日」も、もう少し遅らせたほうが、露地物の旬の野菜で作った美味しいサラダがいただけそうです。
 7日は七夕。五節供の一つで、「シチセキ」と読むのが本式。日本の祖霊を祭る行事(現在のお盆)と中国から伝わった風習などが合わさったもので、笹飾りの笹は精霊が宿る依代よりしろが起源だと考えられているそうです。
 こんな梅雨のまっただ中では星空も見えませんが、旧暦7月7日は、今年の新暦では8月19日。毎年、立秋を過ぎてからになります。新暦7月7日が晴れる確率は約30%、旧暦は47%。晴れても曇っても、都会では天の川は見られません。
 花の時期や野菜の旬は? 季節の行事の意味は? そんなこと知らなくても、花屋やスーパーでは買ってくればいいことですし、七夕の短冊は書けます。でも、私たちの心を豊かにしてくれるのは、その‘どうでもいい’部分ではないだろうかと思います。季節を味わうことこそ、最高の贅沢、心の栄養のように思えます。

 半透明な藪茗荷の花 / 三つ葉の花。三つ葉は固くてもう食べられません マウスを載せれば写真が変わります
 境内に咲く花はすっかり少なくなり、今はキノコのほうが多く見られます。
 それでも、探してみると其処彼処に花は咲いています。梅雨の時期に咲く花は、淡く地味なものが多いのでしょうか?
 龍の髭りゅうのひげの花をご覧になったことがありますか? ‘髭’の中に隠れるようにして咲いていて、色も淡い紫なので、よほど注意をして見ないとわかりません。紫式部や白式部の花は一度にまとまって咲くのではなく、幹に近い方から枝先に向かって順番に咲いています。藪茗荷やぶみょうがの花は薄暗い木陰で静かに咲いています。
 不思議なことに、これらの実はみな紫色。草木の実が赤くなるのは鳥に見つけてもらいやすくするためだと聞きますが、紫色もそうなのでしょうか?
 花の多い時期に咲いていたら目もくれないような三つ葉の花。小さくてかわいいのですが、老眼が進んだ目ではよく見えません。最近はカメラのオートフォーカス頼りが増えました。
 7日は「小暑」、暑さも本格化します。暑中見舞いはお書きになりますか? 気候不順な折、ご自愛ください。




       水  茄  子  の  水  の  匂  い  を  食  べ  に  け  り        辻村拓夫