6/29版 




 今日、希有な観光客。本堂には上がらず / 自坊から見た雨の鐘楼、墓地、東山 マウスを載せれば写真が変わります
 朝から、いつ雨が降り出してもおかしくないような空模様でした。午後からは雨を予告するような強い風が吹き始め、黒雲が立ちこめていよいよかと思っていましたが、なかなか降らず。3時半頃になって、ゆるやかな雷雨となりました。
 これで4週連続の雨の更新。午前中は降らなかったので、カメラも濡れずに済んで助かりました。
 雨という予報が出ていたこともあって、境内を訪れる人はごくわずか。散歩などで境内を通過される‘常連さん’がほとんどです。
 犬を連れた人は、犬にせがまれてほぼ毎日来られますが、自分のために来られる‘常連さん’は、お天気が悪いとお休みをされる方も多いようです。
 本堂にお参りをされた後は、「ミーーちゃん」と野良猫の名を呼びながら境内を一回りして帰られる女性。コーラのペットボトルを片手に小刻みに歩き、日に何度も境内にお越しになる男性。バッグを肩から提げ帽子をかぶった男性とリュックを背負って屋外のお地蔵さまなどを巡拝してまわる振りをする、共によく日に焼けた顔の男性は、お二人とも賽銭泥棒です。ビニール袋にお墓のお供え物を入れて回る犬連れの女性も常連。

    境内で過ごす人 / 境内で過ごす猫   マウスを載せれば写真が変わります
 バギーを押しながら、正面の階段を上がってこられた男性がおられました。バギーを一瞥しましたが、子供が乗っているわけでもありません。他の人が抱っこしておられるのだろうかと見回しましたが、他に誰もおられません。しばらくベンチに座って上を見たり下を見たりして、またバギーを押して別の参道から帰って行かれました。
 杖代わり、老人車代わりにバギーを使っておられるようにも見えませんし、しっかりした足取りです。いろいろな想像が膨らみました。
 11時頃、写真を撮りに境内に出かけた時にベンチに座っておられた男性が、1時過ぎに行ってもまだそのまま座っておられました。本を読むでもなく、お弁当を食べるでもなく、じっとベンチに座っておられます。蚊も多い今のベンチは、決して快適とは言えません。また、想像が膨らみました。
 今日は高齢の男性が多かったものの、若い女性や男性、年輩の女性が、やはり何かをするでもなく、何時間も独りでベンチに座っておられることがあります。いろいろな事情や思いがあるのでしょう。
 そんな人たちにも‘やさしい’境内を守り、作っていきたいと思いました。




       緑   蔭   や   人   の   時   計   を   の   ぞ   き   去   る       高浜虚子




   いっぱいの実を付けた菩提樹 / 沙羅の花と石塔    マウスを載せれば写真が変わります
 菩提樹の梢は実がいっぱいです。2週間余前に付いていた小さい蕾が、今は少し大きい実に替わったかのような感じです。
 梢の下には、実の付かなかった花軸が、葉に似たへら状の苞ごといっぱい落ちて散らばっています。結実している実も大半は秋までに落ち、最後まで枝に残って茶色く完熟するのはごくわずかしかありません。
 いっぱい付いている実を見るには今がチャンスです。お参りになった時には、‘千成’菩提樹の実をご覧になることをお忘れなく。
 沙羅の花もピークを過ぎました。
 本堂前の沙羅は植えてからまだ30年ほどしか経ちませんが、沙羅は他の木に比べてかなり成長の遅い木です。大きな沙羅の木を見ると、「いったい何百年掛かって大きくなったのだろう」と、うらやましくも思います。
 この花を‘看板’にしているお寺もありますが、もし『平家物語』に書かれていなかったら、沙羅も今ほどの人気は出なかったかも知れません。
 インドの‘本物’の沙羅は、もっと地味な花。夏椿を‘沙羅’に仕立てたのは、日本人の感性ならではないでしょうか。

        渦紫陽花/ 石化八重紫陽花      マウスを載せれば写真が変わります
 いま、境内に咲いている花は、沙羅、紫陽花、自坊の栴檀葉せんだんばの菩提樹など。沙羅や紫陽花が毎回登場するわけです。
 遅咲きの紫陽花も、終盤に差し掛かっています。
 今、盛りなのは「うず紫陽花」、別名「お多福紫陽花」。花びらが少し肉厚で、内側に丸まっている花。ウイルスに感染して変化したのが、園芸種として固定したのだそうです。ウイルスも粋なことをしてくれます。
 もう1種の遅咲きは、鉢花でいただいたものを挿し芽で増やした八重咲き種で、たぶん「石化八重紫陽花」。境内の紫陽花の中でも最晩熟の花で、これから色を濃くしていくところです。
 紫陽花の種類を増やしたく、路傍で境内にないような紫陽花を見つけると、新芽をちょっと拝借することがあります。「どうせ切って捨てるのだから・・・」というのは、ボクの勝手な言い分。花泥棒かしら? 昨日も大津の葛川の国道沿いで数芽頂戴しました。名前はわからないので、挿し芽には「葛川」と添え書きしておきました。
 住宅事情で、紫陽花を買ってきて楽しまれた後、捨てざるを得ない方も多いと思います。ぜひともその紫陽花をおわけください! 京都や大津なら取りに伺います! 「遠いし鉢ごと送るわけにもいかない」という方は、適当に枝を切って切り口に濡れたティシューなど付けてお送りください。挿し芽をして‘子孫’を育て、「贈呈 ○○様」などと札を付けさせていただきましょうか。紫陽花も無駄死にせずに救われます。
 「苦沙彌あじさい苑」の充実にご協力をお願いいたします。

         「これは食べられる?」などと考えないように   マウスを載せれば写真が変わります
 雨が多く高温多湿の今の季節は、キノコたちにとっても一番過ごしやすい季節でしょう。腐りかけた木の幹から、あるいは苔の間から、いろいろな種類の色とりどりのキノコが生えてきます。
 6月いっぱいで退職する70余歳の職員から、境内に生えているキノコを時々採って帰り、調理して食べるのだと聞かされました。
 「それは危ない・・・」と思いましたが、キノコに詳しく、ちゃんと見分ける術を持っているから大丈夫なのだろうと、さらに話を聞いて唖然。「茎が縦にきれいに裂ける茸は食べられる。そうでないものは毒キノコ」と。よくぞ、今までご無事で・・・。
 梅雨も後半戦。京都では6月20日頃から祇園祭頃までが、1年中で最も雨の多い季節です。ますますの高温多湿にキノコも嬉しい限り。あっちでニョキ、こっちでポコッと、まだまだ顔を出すでしょう。中には毒キノコもあるかも知れません。どうか、キノコにはうかつに手を触れないようにお願いします。まして、食べようなどとは・・・。
 キノコを探していたら(食べるためではなく、写真を撮るために)、地面のあちこちに穴が空いているのに気がつきました。満を持して這い出してきた蝉の穴でしょう。鳴き声はまだそれほど聞かれませんが、もう蝉もスタンバイOKのようです。
 今年も半分が過ぎようとしています。前半を振り返って反省をして、さぁ、後半戦です。




     茅   の   輪   く   ぐ   る   犬   飼   主   に   従   つ   て       小玉真佐子