6/14版 




          雨に遊ぶ / 家族の傘      マウスを載せれば写真が変わります
 朝4時過ぎ頃から静かな雨が降り出し、1日中、止むことはありませんでした。
 気象庁は今日、近畿の梅雨入りを発表しました。平年より8日遅く、昨年と比べても6日遅い梅雨入りです。
 渇水が深刻となってきている地方には、恵みの雨をもたらしてくれる梅雨がようやくやってきたと喜んでおられる方も多いでしょう。
 近畿の梅雨明けは平年では7月19日頃。ちょうど祇園祭が終わる頃ですが、今年は南米ペルー沖のラニーニャ現象の影響で梅雨明けが早くなるうえ、夏は気温が高めで少雨となる傾向があるとか。 ラニーニャ現象が発生すると、日本付近では夏の太平洋高気圧の勢力が一層強まり、晴天が続いて雨が少なく、猛暑になることが多いのだそうです。
 水不足にならないように、静かな雨がたっぷり降ってくれますように。


    参道に垂れ下がるもみじ / もみじの枝をくぐって犬の散歩   マウスを載せれば写真が変わります
 今日が雨になることは皆さんご存じだったので、「ちょっと足を伸ばして行ってみようか」と気の向くまま境内に来られるような方はおられなかったように思います。
 午前中の拝観者は‘ゼロ’。午後、ボクの見ている間に5人の方が拝観されましたが、それはむしろ‘マグレ’で、境内に人影を見ることは希有でしたから、今日の拝観者は1桁止まりだったに違いありません。
 本当に静かな境内でした。雨の日にしては、樹下にいてもそれほど暗くありませんでした。
 こんな雨の日、本堂の正面階段に腰を掛けて、雨だれの音や葉に当たる水滴の音、鳥のさえずりなどを聞いていると、とてもゆったりとした気持ちになって癒されます。
 雨の日の楽しみ方を忘れてしまっておられませんか? 雨の日の境内は、雨の日にしかお目にかかれない景色や風情にあふれ、捨てがたい魅力でいっぱいです。お気に入りの長靴を履いて来られたらコワイものなし!
 これからは雨の日も多くなるでしょう。特別な何かがあるわけではありませんが、静かなだけが取り柄の境内がお待ちしています。たっぷり時間に余裕を持ってお越しください。



        蝸   牛    充   電   時   間    殻   閉   ぢ   て        塩川雄三




   あまり目立たない菩提樹の花 / 軸先にぶら下がる花    マウスを載せれば写真が変わります
 本堂の前では、菩提樹と沙羅の花が咲き出しました。
 菩提樹は一昨日に咲き始めたばかりですが、今日の雨にも関わらず、たくさんの花が開花して、2分咲き程度になっていました。
 雨が降っていなければ、少し離れたところからでも「あっ、菩提樹が咲いた!」とわかるほど香り、虫たちもたくさんやってきます。今日は少し薄れがちでした。
 菩提樹の樹の下でお釈迦さまが悟りを開かれたといいます。沙羅の樹が2本並んだところで、お釈迦さまが亡くなったといいます。お釈迦さまの誕生にまつわる「無憂樹むゆうじゅ」という樹があり、この3種の樹を「仏教三聖樹」といいます。
 しかし、菩提樹、沙羅共にインドのオリジナルの樹とは種類が違い、日本では他の木にそれぞれの名前を冠したのです。オリジナル両樹は、日本の露地で育てることはできません。
 昨年、正真正銘のインド菩提樹の苗をいただき、大切に育てていましたが、ちょっと油断して遅霜に当て、残念ながら枯れてしまいました。
 インド、日本の菩提樹とも葉の形はハート型ですが、前者のほうが長く、インド菩提樹は分類的には「クワ科」、日本の菩提樹は「シナノキ科」です。ちなみに、沙羅の樹はインドのオリジナルと日本で沙羅と呼んでいる「夏椿」とは、似ても似つかない樹です。
 いま、日本の寺院に植えられている菩提樹は中国原産。栄西禅師が、葉の形の似ている樹を菩提樹と間違って中国から持ち帰られたのが広まったといわれています。
  沙羅の花/ 沙羅樹(右手前)と菩提樹(中央奧)    マウスを載せれば写真が変わります
 自坊の前庭には、ドイツ菩提樹、リンデンバームの樹が植わっています。
 よく考えると、ドイツに仏教の聖樹菩提樹があるというのは不思議なことです。シューベルトの名曲『リンデンバーム』を『菩提樹』と訳したのは、『家路』などを作曲し、『モーツァルトの子守歌』や『故郷の人々』などの訳詞をした音楽家堀内敬三氏だと言われています。
 リンデンバームもクワ科で、葉の形は中国菩提樹と似ています。堀内敬三氏は、記憶の中にあった中国菩提樹の葉とリンデンバームの葉が似ていると思って、「菩提樹」と訳されたのかも知れません。
 ♪ 泉に添いて 茂る菩提樹  したいゆきては うまし夢見つ  幹には彫りぬ ゆかし言葉  うれし悲しに といしその陰 ♪ 「菩提樹」という訳に違和感がないのも不思議です。
 自坊のリンデンバームはまだ咲いたことがありません。中国菩提樹に似た花で、色が少し白いと聞いています。銀座・並木通の並木がリンデンバームだとか。ご覧になった方はおられませんか?
 本堂前の菩提樹の見頃は1週間ほどです。17〜18日頃に満開になるでしょう。散り始めると、樹の下がクリーム色の花柄を敷き詰めたようになり、それもまた綺麗です。沙羅の花も木の天辺から咲き出して、次第に下の方へ降りてきました。見頃はもう少し先です。

    鐘楼脇の紫陽花 / 自坊前の色づきはじめの洋種紫陽花   マウスを載せれば写真が変わります
 紫陽花の花が咲きそろってきました。今年の紫陽花は、少し鮮やかさに欠け、色が薄いような気がします。肥料が足りなかったのかも知れません。
 紫陽花に雨はよく似合いますが、大きな花に雨粒が付いて重たくなり、頭を傾けているものもあります。
 紫陽花は土中の酸性・アルカリによって花の色が変わるといいます。写真の手前、八重の額紫陽花「城ヶ崎」は綺麗なブルーですが、自坊の土塀の前に咲いている「城ヶ崎」だけは薄いピンク色をしています。どうしてだろうと考えていたら、40年ほど前の梅雨の頃の夜中、「ドーン」という地響きと共に土塀が倒れたことを思い出しました。土塀の漆喰の影響で、ここの紫陽花だけピンクになっているのでしょう。
 遺体を埋めた場所の紫陽花だけ色が違い、それが事件解決の手がかりになったというサスペンスドラマもありました。
 紫陽花も梅雨の楽しみの一つですね。
 哲学の道に蛍が飛び始めています。夕べ見に行きましたが、晴天が続いていたせいもあって、わずかに2匹しか見られませんでした。蛍も梅雨の頃の楽しみです。
 22日は、もう早、夏至です。




     じ  ゃ  ん  け  ん  で  負  け  て  蛍  に  生  ま  れ  た  の        池田澄子