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        日に日に緑が濃くなる境内      マウスを載せれば写真が変わります
 朝から曇り空。次第にお天気は悪くなっていき、夜には雨の予報です。
 5月に入ってから、京都市で雨が観測されたのは、今夜を入れれば8日にもなります。どうもお天気が定まりません。
 風は少しありますが、薄雲越しのはっきりしない日差しが時おり差して蒸し暑く、沖縄の梅雨入りの報に、いずれはやってくる鬱陶しい日々を予感させるような夏日です。
 京都の伝統野菜である賀茂茄子や満願寺唐辛子の収穫の報も、‘暑さ’を感じさせるニュースです。
 境内はまだ若葉の季節です。次第に落ち着いては来ますが、6月初旬の梅雨入りの頃までは滴るような緑が楽しめます。
 ただ、気温も上がってきて、だんだん‘爽やか’という表現からは遠ざかりつつあります。蚊なども増え、木の枝から虫がぶら下がっていることもあります。せっかくの新芽が葉脈だけになっているので見てみると、虫たちがたむろしていることも珍しくありません。

       緑滴り、虫もぶら下がる      マウスを載せれば写真が変わります
 話がそれますが、先日、京都に留学している外国人の世話をするホストファミリーの世話役の方から、ハイキングの途中に境内でお弁当を食べたいが、外国人でもわかる真如堂に関する3択問題を作って欲しいというメールをいただきました。
 そこで、【Q1】真如堂の本堂の屋根には全部で何枚の瓦が使われているでしょうか? A約1万枚 B約4万枚 C約8万枚 【Q2】次のうち、もっとも多いのはどれでしょう? A真如堂の最近の平均有料拝観者数 B真如堂の境内にいる野良猫の数 C真如堂のお坊さんの数と、3択問題を2問出題させていただきました。詳細は省略しますが、答えは共に「C」。Q2はジョークです。
 境内でお弁当を召し上がるとお聞きした時、ボクの脳裏には、食べているご飯の上にポトッと虫が落ちてきて、「ギャァー!」っと大騒ぎになり、‘京都のお寺=イモ虫’と印象付けられてしまわないだろうかという悪い想像が膨らみました。野良猫に食べ物をせがまれることぐらい、まだ序の口です。
 木の下でお弁当を広げるのに気持ちのいい時期は、少し過ぎたかと思います。もうしばらくしたら、「蚊取り線香ご持参でお越しください」とオススメしなければなりません。
 街中に住んでいらっしゃる方は新緑の美しさにばかりに目を奪われがちですが、これからはそればかりでは済みません。そこには毒虫たちも潜んでいます。虫たちは命がけで柔らかい新緑にかじりついています。うっかりと新緑に頬ずりなどされませんように。



        楽  し  さ  の  生  ま  れ  ゆ  く  風  薫  る  と  き        稲畑汀子




      境内の諸仏を参詣して回る人たち    マウスを載せれば写真が変わります
 今日は「洛陽六阿弥陀巡り」の6月の巡拝日です。
 「洛陽六阿弥陀巡り」は、 江戸時代中期の木食正禅養阿上人(1687〜1763)が発願されたもので、真如堂・永観堂・清水寺・安祥院・安養寺・誓願寺の6ヵ寺の阿弥陀さまを巡拝するものです。毎月の定められた功徳日に3年3ヶ月参拝すれば、極楽往生、無病息災、家運隆盛、祈願成就が叶うと伝えられています。
 真如堂は第一番なので、朝早くから参詣の方が三々五々お見えになります。本堂にお参りして、お参りした証のスタンプを押してもらい、境内の諸堂・諸仏にもお参りして、第二番の永観堂に向かわれます。
 手には蝋燭や線香の入った‘お参りセット’やお賽銭用の小銭のいっぱい入った財布を持ち、諸堂・諸仏にお供えになります。六阿弥陀の日には、境内のいろいろな仏さまの前にお線香の煙がたち、お賽銭の1円玉がたくさん置かれます。
 「あれっ、今日はお参りが多いなぁ」と思った日は六阿弥陀の日です。そのお参りの方々の姿も12時頃には消え、また普段の境内に戻っていきます。
 以前はもっと賑わっていましたが、今では参詣される方の高齢化が進んで人数も減り、200人足らずがお参りになるだけです。さみしくなりました。
  木食上人造立の阿弥陀露仏/ 菩提樹と休憩する参詣者    マウスを載せれば写真が変わります
 本堂の右脇に、大きな金仏さんが鎮座されています。
 この銅製の阿弥陀如来坐像は、木食正禅上人が3人の弟子共に勧進に回ったお金で造られたものです。勧進の際には張子でつくった阿弥陀如来の首模型を担いで廻ったといい、その甲斐あって、1年ほどで勧進は成就します。
 台座正面の石造の蓮弁には「木食正禅造立」と彫られていて、像の背面には「寒夜三十日念佛修行例年墓回り成就廻向佛併書寫大乗妙典血經一部御内服納之 木食正禅造立 享保四巳亥歳八月十五日 弟子 蓮入 朋真 願真」と記されています。
 正禅上人は、無縁墓地や刑場近くにある墓地で回向をしたり、街道の補修工事や街の人のための井戸を造ったりと、念仏信仰に生きながらそれを社会事業として具現化した‘市の聖’でした。
 そんな上人が始められた六阿弥陀巡拝が250年ほど経ても、今も続いているわけです。
 最後の安養寺・誓願寺は共に新京極にあります。最後は京極の甘味処で一服? うまく出来ています。

    大躑躅の天辺と総門の屋根 / ハルジオンに間違いなし!  マウスを載せれば写真が変わります
 4月以来代わる代わる咲いていた花も、今ではこの大躑躅つつじだけになってしまいました。
 大躑躅も側面の花はほとんど終わって落ち、今は天辺部分が咲いているだけ。「せめて1枚ぐらい華やかな写真が欲しいなぁ」と、土塀によじ登って写真を撮りました。今年の躑躅もこれで見納めです。
 先日、散歩をされていた方に、「これはハルジオンですか? ヒメジョオンですか?」と尋ねられました。「いま咲いているのはハルジオンです」とお答えしたものの、確証を持った説明ができませんでした。
 今日、ふと見ると自坊の前にも‘どっちか’が咲いていました。どっちだろう?
 調べてみると、「共に北アメリカ原産の帰化植物。ヒメジョオンの方が背が高く、花が小さくて数が多く、根本がすっきりしている。ハルジオンは、背は低く、花は大きくて少なく、根本に葉がある。ハルジオンのつぼみは下を向いてうなだれる。花期は、ヒメジョオンは初夏から秋、ハルジオンは4〜5月頃。確実なのは、ヒメジョオンの茎には空洞がないが、ハルジオンの茎には真ん中に空洞がある。葉のつき方も違い、ヒメジョオンの葉は茎を抱かないが、ハルジオンは茎を抱く」云々。
 花の大きい小さいは並べて比較しないとわかりませんが、最も明快なのは茎の空洞のあるなし。自坊の前の‘どっちか’を切ってみると、茎は中空でした。先日のも同じ花でしたから、「ハルジオンです」というボクの答えは合っていましたが、今から考えると冷や冷やものです。
 「ハルジオン」「ハルジョオン」「ヒメジョオン」「ヒメジオン」とややこしいですが、正しくは「ハルジオン」「ヒメジョオン」です。
 さて、皆さんの身近に咲いているのはどっちでしょう? ちなみに、「ハルシオン」は向精神薬です。お間違いなきように。
 21日は、二十四節季の「小満」。「万物盈満えいまんすれば草木枝葉繁る」、万物が成長して、一定の大きさに達して来る頃です。来週には早咲きの紫陽花の花の写真をご披露できると思います。お楽しみに。




       新  茶  の  香   真  昼  の  眠  気   転  じ  た  り         小林一茶