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曇りがちですが日差しはあり、朝から気温も上がって、お昼には最高気温が25度を超えました。今年に入って3度目の夏日です。 日向を少し歩くだけで汗がにじんできます。多くの女性は日傘をさすか帽子をかぶり、きっと念入りに日焼け止めを塗ってお出かけになったことでしょう。 日陰に座っていると、新緑の間をくぐってきた風が少し強過ぎるほど吹いてきて、汗をかいた体には少し涼しく感じられるほどでした。 境内は普段よりもずっと人影が目立っていますが、本堂に上がられる方はごくわずか。まして、拝観される方は希有。皆さん緑陰のベンチに座って、お弁当を食べたり、お茶を飲んだりして、ゆったり過ごしておられました。紅葉の頃のような殺気だった雰囲気は微塵もありません。
皆さんにゆっくり過ごしていただきたい。そう思って、木や石のベンチをいくつも作りました。そこに腰掛けておられる姿を見ると、「ヤッタ!」と手を打ちたくなってきます。「気持ちがよかったので、1時間ぐらいボーッと座ってました」などと言われると、本望です。 やわらかな緑が目一杯に飛び込んできて、実に爽やかな、「みどりの日」の名にふさわしい休日となりました。 新 緑 に 吹 き も ま れ ゐ る 日 ざ し か な 深見けん二
もみじの若い葉の上には、プロペラ型をした赤い実が目立つようになってきています。10日余ほど前までは小さな花の盛りで、しきりに花の粕を落とし、女性の髪の毛にたくさんついたりしていましたのに・・・。もう早くも結実したのですね。 春になるとすぐに新らしい葉を広げ、その梢に花を咲かせ、あっという間に実を付ける。この1ヶ月、私たちが桜にうつつを抜かしている間に、もみじは一所懸命に子孫を残す営みを続けていたのです。 地面に目をやると、小さなもみじの芽がたくさん出ています。去年、熟して落ちた実が発芽したのです。境内全域では数万、数十万のもみじの芽が出ているでしょう。でも、自然淘汰や草刈りなどによってほとんど絶え、大きくなれるのは万に1つもありません。 自然の絶え間なきいのちの循環と、生まれ出て育つことの困難さを思い知らされる、今はそんな季節でもある気がします。
「花の木」はかえでの一種で、この木は三井家が昭和4年(1929)の昭和天皇即位の大礼の記念に木曽福島で苗を求め、京都植物園に贈ったうちの1本です。他に、塔の横にも、1982年に三井銀行創業300年を記念して植えられた「花の木」7本があります。 昨年、この花の木に雌雄があることを、ボクは初めて知りました。 「花の木」は日本の固有種で、長野県・愛知県・岐阜県・滋賀県の4県にのみ自生し、国の天然記念物に指定されている他、愛知県の県木でもあります。葉が出る前に真紅色の花が咲き、その花の美しさゆえに「花の木」といわれていますが、特に雄花が美しいそうです。自然界でも美しいのは「雄」ですね! いま、その「花の木」の赤い種が、風に吹かれてヒラヒラと飛んで落ち始めました。プロペラの片方だけで2.5〜3センチもある大きな実です。それを見て、はたと思いつきました。「種を付けるのは雌株のはず。どの木に種が付いているかを調べたら、8本の雌雄が決するはず!」と。
ボクがじっと木を見上げていると、近くのベンチにいた人が「何かいるのかな?」と思われたのでしょう、同じように見上げておられました。事情を説明するのは面倒なので、放っておきました。 調査結果は、雄株4本、雌株4本。大礼の記念に植えられた名木の「花の木」は雌株です。 以前からわかっていたことですが、名木と1982年に植えられた木は、同じ「花の木」といいながらも、紅葉の時期や色などが明らかに違います。今日、両木の種子を見て、あらためてその違いを実感しました。前者の種は白っぽく、後者の種は赤っぽいのです。おそらく、前者は木曽福島近辺に自生していた野生種、後者は園芸用に改良されたものではないでしょうか。 犬の散歩やウオーキングに来られている植物好きの方に、吹聴するネタが一つできました。
藤はもう終わり。 新緑も濃くなって定着し、季節の移ろいがだんだん緩慢になっていきます。更新ネタに窮する日が近づいている予感がします。 2日は八十八夜でした。先日、さっそく新茶を頂戴しました。今年は天候に恵まれておいしい新茶が出来たそうです。 本堂の裏に、お茶の木の垣根があります。昔はこれを摘んで番茶を作っていたのかも知れません。今では、「ここは農薬がかかってないですから」と、どこからか摘みに来られる方がおられます。刈り込む手間が省けて一石二鳥です。 6日は立夏。いっぱい楽しませてくれた春ともお別れです。 行 く 春 や 鳥 啼 き 魚 の 目 は |