3/2版 





少し肌寒かった午前中 / 階段を上がった後、汗をぬぐっておられました マウスを載せれば写真が変わります
 今日はずいぶんあたたかくなるという予報でしたが、午前中は日の光も薄雲に遮られ、期待したほどではありませんでした。ベンチに腰掛けている人はもちろん、境内を歩き抜けていく人も、コートは手放せませんでした。
 夕方近くなった頃、雲はすっかり消えて、青空が広がりました。気温はぐんぐん上がって、4時頃には今日の最高気温の17度を記録。コートを着ていたら暑いぐらいにまでなり、日の光の力を思い知らされました。
 今朝、鶯が啼くのを聞きました! 「ホー ホケキョ!」とはほど遠い啼き方でしたが、あれは確かに鶯の声。梅も満開なので、もうそろそろかなと心待ちにしていましたが、今年もそろそろ啼き出してくれそうです。
 梅の開花などが軒並み早い今年、奈良では2月19日に、滋賀県の彦根でも22日に、平年よりも10日ほど早く、鶯の「初鳴き」が観測されています。京都の平年の「ウグイスの初鳴き日」は3月1日。でも、京都ではまだ発表されていません。
 京都の鶯は、奥山住まいで、梅の小枝で昼寝して、春が来るような夢でも見ているのでしょうか。しんきくさ。


    涅槃図に見入る人たち / どこに猫がいるかわかりますか?   マウスを載せれば写真が変わります
 3月1日から、本堂では涅槃図の特別公開が始まっています。
 本堂の内陣と庭の拝観は平素は500円ですが、この時期は600円。「涅槃図にかこつけて高くした」などとおっしゃらないでください。「花供曽はなくそ」というお菓子付きの値段です。分量こそ違いますが、某菓子屋で買えば420円。職員も、この時期になると、「今はお得ですよ!」と、自信を持ってPRしています。
 「花供曽」は、仏さまへの供物を意味する「花供御はなくご」が訛ったものだと思われます。真如堂の花供曽は、軽く焼いたあられに黒砂糖をからめたもので、なかなか美味しいですよ。
 この涅槃図は、三井家の女性たちが浄土系の僧 厭求えんぐに依頼し、海北友賢らが代工となって制作したもので、1707年に完成しました。
 また、この涅槃図には猫が描かれています。猫が描かれていることを‘売り’にしているお寺もありますが、制作年代の新しい涅槃図ほど多くの動物が描かれる傾向があり、その中に猫も加わるようになっていったのです。
 こっそり本堂の職員の説明を聞いていると、ボクの作った台本通り、ちゃんとそのように説明していましたが、まだ公開2日目。説明は全般的に迷走していました。
 説明を聞くのに本堂の奧に潜んでいたら、すっかり冷えてしまいました。本堂の南側回廊に出たら、日の光に溢れて何とあたたかい! 分厚い床板まで、床暖を入れたようにあたたまっていました。まるで別天地!
 涅槃図をご覧になって冷え切ってしまわれた方、ぜひとも本堂南側の回廊にお出ましください。晴れていればポカポカですよ!




        三   月   の   声   の   か   か   り   し   明   る   さ   よ        富安風生



 
  もみじの枝や芽にも赤みが増してきました / 馬酔木は盛り  マウスを載せれば写真が変わります

 もみじの芽が赤い色を増し、少しずつ大きくなってきました。新芽が出るにはまだまだ時間がかかりますが、粛々と準備を進めているその様子には安心します。
 馬酔木あしびは見頃。椿も種類によってはもう満開。山茱萸さんしゅゆの花は、まだ目立つほど開いていませんので、気がつかない方も多いでしょう。
 今の時期は、桜の頃のように境内に花が溢れ、何もしないでも花が向こうから目に飛び込んでくるというわけではありません。あっちにポツリ、こっちでハラリという感じですから、見る気のない人の目にはほとんど何も映っていないかも知れません。
 見る気の有無、多少によって、春の訪れをどれだけ感じ取ることができるかはずいぶん違うでしょう。現代社会を生き抜くには「鈍感力」が必要かも知れませんが、自然との語らいには五感をフルに活用することが必須です。
 せっかく境内にお越しになっても、本堂を拝んで帰られるだけでは、もったいないというもの。花にしろ、新芽にしろ、森羅万象これすべて仏の現れと、ぜひとも堪能していただきたく思います。

     星のまたゝく如く 咲いた!/ 姫踊り子草   マウスを載せれば写真が変わります
 ボクが春の訪れを感じる一番の花は、大犬おおいぬ陰嚢ふぐりです。名前を聞くだけではその意味がわからない方も多いでしょうが、こうして漢字で書くと、ちょっとリアル。実が似ているそうなのですが、「こんな可愛い花に、いったい誰が‘フグリ’などという名前をつけたのだろう」と、毎年、その命名者を責めたく思います。
 ともあれ、コバルトブルーのこの小さな花は、本格的な春が近いことを大きく印象づけてくれます。
 更新の写真を撮るために境内を1周し、あまりめぼしい風景がないとわかった時の次の手は、「何か落ちていないかなぁ?」というような目つきで、もう1周境内を回ることです。
 小さな花が咲いているところ、苔がよく生えているところ、茸が出やすいところなど、その季節に応じた場所を、「何か落ちていないかなぁ?」という目つきで凝視しながら歩いていると、たいてい何かしらの発見があるものです。それでも何もなければ、あとは某民放よろしく‘データー’のねつ造あるのみ!?
 朝、凝視する目で草むらを見ていたら、わずかに青い色が見えるこの花の蕾を見つけました。「おおっ! これは昼近くには開くぞ!」と午後になってもう一度見に行ったら、小さく、しかししっかりと花びらを開き切っていました。1年ぶりの再開です。
 こんな小さな花を見つけただけで、「わぁー、春が来るぞぉ!」とウキウキしてくるのですから、不思議です。いや、ボクって単純なだけかも知れません 。
枯葉が朽ち、苔の胞子の軸が伸びてきました/ 十月桜の有終の美  マウスを載せれば写真が変わります
 苔の活動も少し活発になってきました。普段は気にとめなかったり踏んづけたりしている苔ですが、よく見ると実に美しく、季節による変化にも富んでいます。
 「困った時の苔だのみ」 ねっ、綺麗でしょう? 寝ころんで写真を撮っていたら、通行人に変な目で見られました。
 昨年の11月頃から咲き続けてくれた自坊の「十月桜」がそろそろ終焉を迎えます。代わりにそのすぐ横の桜んぼの花が、今日、10〜20輪ほど開花しました。桜同士のバトンタッチ。桜んぼが終われば、今度は山桜と染井吉野です。そう考えてみると、自坊では半年間桜が咲き続けるということになります。それって、スゴクない!?
 6日は啓蟄。下を見て歩いていたら、寝ぼけた顔をした虫が地面から這い出してくるのと出会えるかも知れません。そして、地面から何やら腐ったような異臭がしてきたら、春の盛りも間近。バクテリアの動きが活発になってきた証です。
 さぁ、啓蟄に合わせて冬眠していた五感の眠りを覚まし、春の訪れを満身にキャッチしましょう。




         犬  ふ  ぐ  り   大  地  は  春  を  急  ぐ  な  り       阿部みどり女