11/24版 




 8時頃。「花の木」の紅葉はまもなく終わり / 朝日が差し込んできた正面参道 マウスを載せれば写真が変わります
 昨日の午後から今朝までは雨という予報でしたが、一滴も降らず、今朝は快晴。昨日、雨の予報を聞いて外出を控えた人たちが、今日は辛抱しきれずに一気に押し寄せてきたかのように、境内は朝から人で溢れていました。
 紅葉の人出は、23日から今度の日曜日の26日までがピーク。どこへ行っても、人、人、人。それがわかっていながら、艶やかな景色を求めて、その渦中に飛び込んでしまいたくなる。そんな、紅や黄の作り出すマジックに憑かれた人たちが、真如堂にも次から次へと押し寄せて来られます。
 晴れた日でも、朝7時半頃にならないと、「花の木」や正面参道あたりには日が差してきません。境内の東に位置する本堂が、朝日を遮っているためです。その頃はまだ人も少なく、わずかな観光客と、人の写っていない写真を撮ろうと待ちかまえているカメラ翁、季節に関係なく真如堂に日参される犬の散歩の人たちが、まばらにおられるだけ。

     早朝の本堂北側 / この時間はミーコも顔を見せます    マウスを載せれば写真が変わります
 今朝は、ベンチでモーニングコーヒーを飲んでいる女性の2人連れがおられました。落ち葉掃除に追われていたボクには、そのコーヒーが飛びっきり美味しそうに見え、掃除が終わったら真っ先にコーヒーを飲みました。
 朝の静寂を破るのは、そう、落ち葉を掃除するブロアのエンジン音と朝一番の団体さん。
 ブロアを使って落ち葉掃除が出来るのは、人が多くなるまでのわずかな間だけ。本堂前から参道にかけての落ち葉を吹き飛ばすのがやっとです。今はまだカエデの落ち葉が主で、もみじはほとんど散っていませんが、もみじが散り出すと落ち葉の量は半端ではありません。
 今朝は雨を期待していました。毎朝の落ち葉掃除がなかなかの重労働。雨が降ったら落ち葉掃除がサボれる・・・でも、残念ながら快晴。今日は風が強く、せっかく掃除をしても、またハラハラ、ハラハラ・・・腹が立つ。1時間半、ブロアのエンジンを全開にして、大急ぎで掃除をしましたが、成果薄でした。ショボン。
紅葉と御神籤 / すっかり葉を落としたカエデもあれば、今が盛りのもみじも マウスを載せれば写真が変わります
 朝一番の団体さんは、8時前に本堂裏の東参道から上がってきて、本堂前を横切り、まず正面参道の石段で記念写真を撮ります。それが終わると30分ほどの自由時間をもらって、それぞれに散策したり写真を撮ったりして、あっという間にまた来た道を帰って行かれます。
 ツアーの人たちが見ているのはごく主立ったところばかり。「本当に綺麗なところを見ている時間もないツアーって、便利だけれど、表面を流しただけだなぁ」と、気の毒に思うことがあります。
 その後も波が押し寄せるがごとく、次から次へと旗を先頭にした団体さんがやって来ます。個人客も時間を追って増えてきて、本堂の正面はごった返してきます。
 ゆっくり過ごす時間のある人は、ベンチに座っておやつやお弁当を召し上がったり、落ち葉を拾ったり、それぞれのスタイルで紅葉を楽しんでおられます。もちろん、写真に夢中になっている人がおられるのは言うまでもありません。
 境内の紅葉は、それだけで魅せるというよりは、本堂や三重塔などの古い建物との組み合わせの妙でしょう。自然と人が造ったものが違和感なく実に見事にマッチしています。
おやつを食べる人、落ち葉を拾う人、通り過ぎていく人 / 夕暮れのカメラマン マウスを載せれば写真が変わります
 余談になりますが、三重塔を見ながら、「ほら、五重の塔」などと言っている人をよくみかけます。思わず、「あれは‘三重’の塔!」と突っ込みたくなります。どうして「五重」と言われるのでしょうか?
 その方にとっては「五重塔」が「塔」の代名詞なのか、幸田露伴のファンなのかは知りませんが、「五重の塔だわ」と言ってから、「あ、三重の塔」と必ずと言い直しておられます。実に奇妙な現象です。
 午後4時過ぎ、本堂の扉が閉まります。でも、境内の人の数は一向に減る気配はなく、多くの方が傾いた陽に照らされた紅葉を撮ろうと、カメラや携帯電話をかざしておられます。
 傾きだした冬の太陽は、あっという間に沈んでいきます。5時前、日が沈んであたりが暗くなる頃、人の姿は消えて、境内にも静寂が戻ってきます。
 長い1日の終わりですが、ライトアップをしているお寺は、まだ第2ラウンドが残っています。もみじも寝ている暇がありません。



      小  春  日  に   と  け  て  け  む  り  に   な  り  そ  う  よ      中山美樹





ほとんど散った櫨(上)と今が盛り?のもみじ / 塔の正面参道よりのもみじ   マウスを載せれば写真が変わります
 例年より遅めといわれていた紅葉も、ほぼ例年並の紅葉前線となったそうです。境内も一気に色付き、1週間前とは大違いです。
 「わぁー、きれい!」と感動されている方には申し訳ないのですが、今年、ボクは‘息を呑む’ほど美しい紅葉にはまだ出会っていません。
 もみじも確かに綺麗にはなってきましたが、色が濁っていて透明感に欠け、少しオレンジがかっていたり、黒みがかったりもしています。
 たとえば、紅葉したはぜの朱色は絶品ですが、今年はそんな美しい色を見せてくれる前に、もうほとんど葉を落としてしまいました。そういえば、いつも鮮やかな黄葉を見せてくれる無患子むくろじも、今年は鮮やな黄色にならず、枝に付いたまま色あせてしまって、毎日大量の落ち葉を降らしています。銀杏は、まだ完全に黄色になりきらず、うっすらと緑を帯びています。

 本堂裏も少し色付いてきました / 吉祥院前のもみじ。少し種類が違うもみじ マウスを載せれば写真が変わります
 原因は、やはり冷え込み不足でしょう。
 この時期の最低気温は平年値では6〜5度ですが、昨日も今日も10度を超えています。寒い朝もありましたが続かず単発で、「寒いなぁ・・・布団から出たくないなぁ」と思う日は、ほとんどありません。
 本当に紅葉が美しくなるには、最低気温が6〜5度になる必要があります。寒いのは嫌ですが、どうせ寒くなるのなら、紅葉を美しくするのに役立つように冷え込んで欲しいものです。
 さぁ、紅葉はこれから澄みきった色になってくれるのでしょうか? 今がもうピークなのでしょうか?
 真如堂の紅葉がこんなものだと思われては、ちょっと癪です。1週間後のこのページに、「今年の紅葉は遅れましたが、実に美しい!」と書けるように頑張って欲しいですね。


    夕陽を受ける三重塔と銀杏、もみじ / 夕陽の中の銀杏    マウスを載せれば写真が変わります
 境内が人で溢れ、写真を撮っている人がわんさかいると、境内がいつもの境内ではなく、真如堂が真如堂でないような気がします。今は訪れる人の‘貸し切り’状態で、そこに住む者でさえ自由がきかなくなっている感さえあります。
 夕方、薄暗くなってくる頃には、ようやく静かな境内が戻ってきます。翌朝の朝ぼらけの頃まで、普段通りのほっとする時間です。
 紅葉の境内をたくさんの人が愛でてくださるのはお寺としては本望ですが、お参りの方が来られたり、ジョギングや散歩をする人が通り抜けたり、犬の散歩の人が自由に闊歩できる普段の真如堂がボクは好きです。
 紅葉が終わり、枯れ葉の掃除も終わって、やがて‘何もない’真如堂が戻ってきます。紅葉の素晴らしさに感動してくださった方、ぜひとも‘何もない’スッピンの境内をもう一度お訪ねください。
 これからの紅葉を期待していると言った舌の根も乾かないうちに、スッピンの境内のPRでは、ちょっと早すぎましたか?
 紅葉は、あと2週間ほど楽しめるでしょう。締めくくりは、本堂裏の敷き紅葉です。紅葉、透き通って!



      こ  の  樹  登  ら  ば  鬼  女  と  な  る  べ  し  夕  紅  葉       三橋鷹女