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早朝の正面参道 / 朝早く遊ぶ子    マウスを載せれば写真が変わります
 快晴の連休初日となりました。暑くもなく、寒くもなく、散歩をするにはもってこいの気候です。
 「連休だから、境内もさぞかし人が多いだろうなぁ」と思っていましたが、午前中は意外なほど人影もまばらで、とても静かでした。
 ところが、午後になると次々と人が増え、旗を掲げた団体も来参して、境内は一気にざわざわした雰囲気になりました。駐車場も車で溢れてしまいました。
 連休の人出を見込んで今日から店開きをした茶所も、午前中、床机に客の姿はありませんでしたが、午後は「満員御礼」状態。いよいよ、今秋の観光シーズンの大波の先端が、真如堂にも押し寄せてきたかのようです。
 多くの方は紅葉を目当てにお越しになったようですが、境内のもみじはまだほとんど真っ青です。「花の木」などのカエデ類が、もみじに先んじて紅くなり始めてきたのがせめてもの慰み。
 『そうだ 京都、行こう。』というCMを見ると、関東方面の方は、「京都が紅葉している! 早く行かなくちゃ!」と思われるのでしょう。

  喧噪の季節間近な境内 / 夕陽と共に訪れる静寂の気配    マウスを載せれば写真が変わります
急いで京都に行ってみると、まだもみじは青々していて、「あれぇ〜 まだ紅葉してない。早すぎた」と、ご自分のフライングに気がついて落胆される。そんな方が今日の境内にどれほどおられただろうかと思います。
 今、もみじが紅葉しているのは、平地ではまだ東北地方以北でしょう。紅葉前線は京都からはまだずっと遠くにあります。
 あたたかい今年、京都の紅葉が最も美しくなるのは、11月下旬〜12月初旬になるでしょう。まだまだ先、いま慌ててお越しになる必要はありません。
 12月第1日曜を過ぎると、京都はかなり空いてきて、ホテルも取りやすくなり、値段も下がります。紅葉がゆっくり楽しめるこの頃にお越しになるのを、ぜひお勧めします。勤労感謝の日の前後は、できるだけおやめになりますように。



       行   く   我   に   と   ど   ま   る   汝   に   秋   二   つ        正岡子規




 「善の綱」と花の木の紅葉 / 如来の救いを境内に繋ぐ予定の白い綱 マウスを載せれば写真が変わります
 正面参道の石畳に1尺の角塔婆が建ち、そこから本堂に向かって白い布製の綱が延びています。いつもと違う光景です。
 白い綱の先は本堂の中に入り、外陣を貫いて内陣に入り、御本尊のお厨子の前まで延びています。
 今日、この白い綱を持って、一心に拝んでおられる方の姿を見かけました。そんな方を見ると、申し訳なくて、声をおかけしたくなります。「申し訳ありませんが、まだなのです。まだ御本尊の御手に結んでいないのです」と。
 今月5日から15日の間、真如堂最大の年中行事「十日十夜別時念仏会」、通称「お十夜」が勤められます。その由来については次回に譲りますが、5日夕方の開闢法要の時、御本尊の扉が開けられて、この綱の先端が御本尊阿弥陀如来の右手に結ばれます。本堂の外の白い綱の先が、御本尊の御手に繋がるわけです。

   まだ緑も鮮やかに / 朝の主なき茶所の床机   マウスを載せれば写真が変わります
 綱を持って一心に拝んでおられた方々は、綱の先が御本尊の御手に繋がっていることをご存じなのでしょう。ただし、5日に夕方以降にならないと繋がらないことまでは、ご存じありません。
 綱の先が御本尊の御手に繋がると、綱にこんな札が下がります。「縁(善)の綱−この白い綱の先はご本尊阿弥陀如来の御右手に結ばれています。この綱を握って、ご本尊と直接 縁を結び、功徳をお受けになってください。また、「南無阿弥陀仏」と唱えて、亡き人のご回向やご自身の心の平安などをお念じください。皆様に阿弥陀さまのご加護がありますように。霜月 十夜法要会中 洛東 真如堂」
 この札が下がっていれば確実です。どうぞお念じください。でも、5日の夕方までの間、「この綱の先は、まだ阿弥陀さまの御手に繋がっていません」という札を下げるわけにもいきません。実際には繋がっていなくても、一心に念ずればきっとご利益があります!


         吉 祥 院 の 菊       マウスを載せれば写真が変わります
 吉祥院の門内では、恒例の菊花展が始まりました。住職が、日夜、丹誠を込めて作っているものです。
 お十夜の案内と共に、檀家の方々へお送りする寺報の原稿を住職に頼んだところ、書きながらだんだん主旨から外れていったとしか思えない、菊のくだりがありましたので、編集者の権限でカットしました。
 菊の説明には相応しいかと思いますし、ボツにするのも申し訳ないので、ここに復活掲載させていただきます。ノーカット、未修正版。コメントは差し控えさせていただきます。
 「今年も菊の季節となりました。吉祥院門内には所狭しと、大菊・懸崖菊・嵯峨菊・伊勢菊・肥後菊・江戸菊・盆栽菊が並べられます。趣味で45年にもなります。自分ながらよくも続けて来られたものと感謝する気持ちです。土作りから、花の手入れや陳列まで大変な手間がかかります。しかし、愛情を込めて世話をすれば、植物は正直に応えてくれます。自然から学ぶことは色々あるものです。やがて蕾がふくらみ、花の色が見え出してくる頃になると、やっぱり今年も作ってよかったと、苦労を忘れます。『今年も菊が咲きました。どうぞご遠慮なく見て下さい』の札を11月1日に門前に掛けます。10日前後が花の艶、姿ともピークです。是非一度ご覧下さい。尚、作ってみたいお方には苗を差し上げます。新しい生き甲斐を見い出すことになるかも知れません。」


         吉祥蘭(吉祥草、観音草) / 黄色い実の千両      マウスを載せれば写真が変わります
 今夜は十三夜。豆名月、栗名月です。
 兼好は、「8月15日、9月13日は、ろう宿しゅくなり。この宿、清明なる故に、月を翫ぶもてあそに良夜とす」と記しています。
 「十三夜に曇りなし」の言葉通り、今夜はお月見には最高のお天気。月も清く明るく、まさに「良夜」。満月ではないところに、一層の趣深さを感じます。
 今年は、これで十五夜と十三夜の両方を見ることができ、「片見月」にならなくて済みました。
 7日は立冬。この頃の代表的な花といえば、菊と寒椿でしょうか。
 日陰では、いま、吉祥蘭の繊細な花がよく咲いています。葉の中に埋もれるように咲いているので、あまり目立ちません。
 この花が咲くのは稀なことで、慶事があると咲くといわれてきたようですが、実は強健で、手荒に植え替えても枯れることはありません。枯れることがないから「吉祥」というのではないかと思ってしまうほどです。
 千両や南天の実が、ここ20日間ほどの間に、すっかり鮮やかな色になりました。もう、いつお正月を迎えても大丈夫!? いえいえ、まだお正月など来て欲しくありません。
 お正月の前に、今年1年の皆さんを労うような、目の覚めるように鮮やかな紅葉を見せて欲しいものですね。もみじ葉に、「綺麗になぁれ、綺麗になぁれ」と気を送りましょう!  

* 婁宿とは、中国の天文学・占星術で用いられた二十八宿の一つ





          屋  根  を  と  ぶ  猫  の  鈴  澄  む  十  三  夜          増田富子