10/27版 




青空の下、静かな境内 / 少しずつ紅葉が進む「花の木」 マウスを載せれば写真が変わります
 うららかな晩秋の日です。快晴とはいえませんが、夏よりもうすい青色の空が時には支配的で、気温も24度まであがり、厚着して動くと汗ばんできます。
 朝、散歩をした時、石畳や地面が濡れ、木々の葉にはまだ水滴が乗っているのに気がつきました。夜中? 朝方? 雨が降ったようです。人に聞くと、「車のタイヤの音で、雨が降っているのに気付きました」「音をたてて降っていました」などということでしたが、ボクは熟睡していたのでしょうか、気がつきませんでした。夕べから今朝にかけての気象台の観測記録でも降水量は0.0mm。雨量計も熟睡していたのかも知れません。
 一雨ごとに寒くなるはずですが、一向に寒くありません。長期予報では、向こう1ヶ月の近畿地方の気温は高く、雨は少し多めとか。特にこの先1週間は、平年より気温が高くなりそうです。
 寒くなるのが遅れるのを喜ぶべきか、紅葉が遠のいたと嘆くべきか・・・。


  緑の中にわずかに赤や黄色の混じる木々。紅葉にはまだ遠し マウスを載せれば写真が変わります
 最近、「もう紅葉していますか?」「今年の紅葉はどうですか?」と、頻繁に聞かれます。「まだ紅葉しているわけないじゃないですかぁ!!」と言いたいところですが、「いえ、まだまだですよ。例年、11月20日頃以降ですよ」と、穏便に答えることにしています。
 紅葉は、日平均気温が12〜10度、あるいは最低気温が7〜8度以下になると始まり、5〜6度以下になると急に進むといわれています。
 過去30年の京都の気温の平年値を見ると、紅葉が始まる気温になるのは11月15日頃、一気に進む気温になるのはその10日後頃です。
 最近は温暖化が進んでいますし、今年はこの先1ヶ月平年より暑いという予想ですから、紅葉はさらに遅れるでしょう。ということは、11月20日を過ぎた頃から紅葉が始まり、ピークは11月末〜12月初旬? 今年は雨も適当に降っているので、もみじ葉が水切れで枯れ込むということもなく、元気です。あとは気温の下がり具合に期待するばかりです。
 もし予定に融通がきくのなら11月23日あたりは絶対に避けて、12月初旬に入洛の予定をお立てになってはいかがでしょう。その頃になると、紅葉を見ているのか人を見ているのかわからないというようなこともなく、道路の渋滞にあまり巻き込まれず、ホテルも取りやすくなるということで、すべてにお得ではないかと思います。何より、紅葉はきっと12月初旬のほうが綺麗ですよ! ハズレたらゴメンナサァ〜イ。



       雲   あ   れ   ど   無   き   が   如   く   に   秋   日   和          高濱虚子




 夕暮れの鐘楼堂から桜葉越しに塔を見る / 墓地から見た朝の西山 マウスを載せれば写真が変わります
 昨日は東京日帰り出張でした。京都駅の観光地向けの路線バスの乗り場には長蛇の列ができていました。今でさえそんな具合なのですから、ハイ・シーズンは恐るべしです。
 東京駅に着くと、JR東海の『そうだ 京都、行こう。』のポスターがあちこちに張ってありました。京都では見かけないのです。
 写っていたのは、かなり大きなクレーンの上から撮ったとしか思えない曼殊院の紅葉。
 「曼殊院さん、えらいこっちゃなぁ。あんな狭い道にドッと人が押し寄せたら、大混雑やなぁ。観光バスの人は、白川通から歩くの? そりゃぁー、ますますえらいこっちゃなぁ。お年寄りはどうするんやろ?」などと、心配が先に立ちました。
 真如堂がこのキャンペーンで取り上げられた2002年のこの季節には、例年の約20倍の人が境内を訪れました。3年ほどはその影響が続き、今では少しは減ったものの、キャンペーン以前よりも高い水準で固定した感じです。
 高台寺や圓徳院に加えて、青蓮院や将軍塚大日堂でも、今日からライトアップが始まりました。紅葉に向けて、京都の秋の観光も本番近し。観光関係に携わる人は別として、紅葉のシーズンが来るのを「えらいこっちゃなぁ」と思っている京都人は多いかも知れません。来週はもう11月。いよいよ「えらい季節」がやってきます。


   茶所前の野生化した小菊 / 寒椿と五輪塔(黒谷墓地)   マウスを載せれば写真が変わります
 境内にも散策や観光の人が増えてきていますが、まだまだ閑散としていて、いつもより少し多いかなぁという程度。職員も、本堂の廊下で真鍮の仏器を磨く作業をしていたり、境内の気配を伺いに外を眺めてみたりと、まだまだ余裕たっぷりです。
 今日も変装して写真を撮っていると、女性2人連れがタクシーの運転手さんにバス停への道順を尋ねておられる場面に出くわしました。運転手さんはしどろもどろ。「またデタラメ教えると困るなぁ」と思って、割り込んで教えてさしあげました。
 恐る恐る本堂を覗き込んでいる女性には、「その中まではタダですよ」と教えてあげました。女性は「『拝観受付』と書いてありますが・・・」と本堂正面に置いてある看板を指さされたので、「あっ、これは内陣とお庭の拝観の受付です。そこまでは入っても大丈夫ですよ」と説明しました。きっと、「汚い格好しているけど、よく知っている人だなぁ」と思われたでしょう。


    色とりどりの野葡萄の実 / 見過ごしてしまいそうな櫨の実     マウスを載せれば写真が変わります
 桜の紅葉がますます美しくなってきましたが、毎日の落ち葉掃除が大変です。
 「花の木」の紅葉も、少しずつ進んでいます。他のカエデも枝先のほうから、わずかに色が変わってきました。
 もみじの緑色は、まだほとんど変わらず。枝先の葉の色がほんの少し変わってきている木が、わずかにある程度です。今頃からいち早く紅くなっていくのは枯れる前兆で、心配の種でしかありません。
 実りの秋、いろいろな実が熟してきたり、落ちたりしていました。
 朝の散歩で時々出会うご婦人に、例の如く、「参道を登り切ったところになれている、あの実は何というのですか?」と聞かれました。早速、見に行きましたが、実はもうすでになくなっていました。鳥が食べたのでしょう。
 その近くを探検していて、宝珠を散らしたように美しい実を見つけました。野葡萄です。その色とりどりの実に、お経に出てくる「瑠璃 玻璃るりはり」という宝石や水晶をさす言葉を連想しました。自然って、どうしてこんな色を作り出せるのでしょう。
 石畳の上で白く潰れている実を、先日見つけました。はぜの実です。「この実から和蝋燭が作れるのだから、火を点けたら燃えるかなぁ」と、ライターで火を点けようとしましたが、焦げる程度。和蝋燭は、この実を蒸し、搾って出てきたエキスで作るようですから、そのままではダメなのですね。
 団栗の後もいろいろと楽しませてくれる自然の恵みに感謝! あっ、今年はまだ椎の実を拾ってない!



        野  葡  萄  の      さ  ん  ざ  め  く  風  日  和        文挟夫佐恵