10/20版 




少し枝先の色が変わってきた気配のもみじ / 本堂から見た境内正面! マウスを載せれば写真が変わります
 ずっと晴天が続き、それが当たり前のようになっていたここ数日。曇天の今日もいつかは青空が出て来てくれることを期待していましたが、少し薄日がさすことはあっても、結局、青空を見ることは叶いませんでした。
 「青空」も当たり前のように思われては、値打ちが下がります。たまに曇ったり降ってみせるのも、有り難がられるコツだと心得ているのかも知れません。週初めから続いていた夏日にも、今日はわずかに届きませんでした。
 「晴れたらいいのになぁ・・・晴れたらいいのになぁ・・・」と思っていたら、ドリカムの歌を思い出しました。サビの部分しか知らなかったので調べてみたら、幼稚園の頃を思い出した娘が父親に、「また昔みたいに山に行こうよ! 私も大人になったよ。彼の話もしたいし。帰りは私が運転するから。晴れたらいいね」と誘う、ちょうど今頃の季節の歌でした。
     ♪  山へ行こう 次の日曜 昔みたいに  雨が降れば 川底に沈む橋越えて
           胸まである草分けて ぐんぐん進む背中を追いかけていた 見失わないように
             抱えられて渡った小川  今はひらり跳び越えられる
                一緒に行こうよ こくわの実 また採ってね かなり頼れるナビになるよ  ♪
 秋はやっぱり晴れてくれないと・・・。週明けには雨の予報。これからは雨が降るたびに冷え込んでいきます。今日は、秋から冬に向かう土用の初日です。


  花の木(左)と桜の紅葉(右) / 本堂回廊越しに見る三重塔 マウスを載せれば写真が変わります
 境内の桜の紅葉が美しくなってきました。紅葉といっても、赤や黄、緑の葉が入り交じったもので、それがまたもみじとは違う美しさを見せてくれています。毎日パラパラ、パラパラと紅葉し終えた葉が落ちて来るのは、掃除夫泣かせです。
 「花の木」の枝先も、濁りつつもはっきりとした紅に変わってきました。
 惜しいことに、木の天辺あたりの枝が枯れ、樹形がずんぐり不格好になってしまいました。三角形に近い綺麗な形をしていた頃は、「この木がうまく色付いた時は、上から紅、黄、緑のグラデーションになって、それはもう見事です」などと説明できたのですが、今はそれも叶いません。
 もみじは色がくすんできた程度で、いま紅くなっている葉があれば、それは弱って枯れかけている枝に付いている葉です。
 「あらぁー、まだまだねぇ。まだ青いわ」と大声で話す女性たちの声が聞こえてきました。ボクはいつもながら、「当ったり前田のクラッカーだぁ!」と思わず突っ込みたくなりました。
 京都は北国や高原ではないのですから、まだもみじが紅葉しているはずがありません。きっと、京都の紅葉特集の雑誌などをご覧になって、そのイメージのままにお越しになったのでしょう。
 紅葉の見頃は、平年並みだとまだ1ヶ月以上先です。次にお越しの時は、このページをしっかりチェックしてからになさってくださいね!



       好   き   な   道    桜   紅   葉   の   頃   な   れ   ば       稲畑汀子




   どんぐりを拾う保育園児 / ミーコを追っていくシロ    マウスを載せれば写真が変わります
 散歩にふさわしい季節、境内を訪れる人も増えてきました。一時は1桁台、かろうじて2桁ということもあった本堂内陣・庭の拝観者も、最近はコンスタントに30人ほどに増えてきました。
 その程度の人数でも「今日は少し多いねぇ」と言っているような寺に、来月のピーク時には2千人以上の拝観者が来られ、拝観料のいらない境内には1万人を超える人たちが行き交うのですから、その雑踏ぶりは言うまでもありません。
 「紅葉は見られなくても仕方ない。11月は避けて今のうちに」とお越しになる方の気持が痛いほどわかります。
 お年寄り、若いカップル、中年を過ぎた女性のグループ、赤ちゃん連れの若夫婦、ひとり旅の女性、男性一人、そして常連の人&犬の散歩、いろいろな方が境内を行き来しておられます。
 どこかの保育園の園児が、牛乳パックの‘マイ・バッグ’を持って、どんぐり拾いに来ていました。でも、拾っているどんぐりは、ボクに言わせると‘3級品’。保育士さんのリサーチが足りないのは明らか。‘1級品’のありかを教えてあげようかと余程思いましたが、噂が広がって来年その場所を荒らされると困るのでやめました。

   後ろ姿がカッコイイ女性 / 爆睡する子と若夫婦   マウスを載せれば写真が変わります
 本堂の前で、散策をしていた女性におやつを貰っていたミーコは、天敵のシロの姿を見るや、一目散に逃げていきました。その猫たちをデジカメに納めようと追いかける別の女性は、かなりの猫フェチ度でした。
 バギーを押した若夫婦が道を間違って墓地に入って行こうとしていたので、制止して、会津墓地から黒谷の文殊塔を通って本堂に至る道を教えました。「階段ですから、バギーは畳んでご主人が持ち、奥さんが赤ちゃんを抱っこして行ってください」とお節介に指導をしました。
 10人ほどで散歩に来ていた共同作業所の指導員は、ボクに声を掛けられて、「あまりに風景に溶け込んでいて、誰かわかりませんでした」とビックリしたかのように言いました。どういうこと? カメレオンでもあるまいし。
 しばらく境内にいると、いろいろな出来事や出会いがあります。ガイドブックを縦にしたり横にしたりしながら道に迷っておられる方を見ると、‘ May I help you? ’と声を掛けたくなりますが、僧衣や作務衣姿ならまだしも、目深に帽子をかぶった変装姿では不用意に声をかけるわけにもいかず、「あー、そっちへ行くより、こっちのほうがいいのになぁ」と焦れったい思いをすることもあります。でも、迷うのもまた旅の楽しみの一つかも知れません。
 そんな静かな境内も、もうあと2週間ほどで別世界です。


清楚な花、十月桜 / 色付いてきた南天。一粒一粒がリンゴのよう マウスを載せれば写真が変わります
 十月桜が花を咲かせ始めました。桜の中でもボクが最も好きな花の一つです。ついつい悪口を言ってしまいますが、染井吉野よりずっと可憐で清楚な花です。
 十月桜は小彼岸桜の園芸品種で、10月頃に咲き出します。京都の妙蓮寺では、日蓮聖人入滅の日10月13日頃に咲くこの桜を「御会式おえしき桜」と呼んでいます。
 自坊の十月桜はまだ樹高2メートルに満たない幼木ですが、例年では11月中旬頃に咲きだし、翌春まで少しずつ咲き続けます。
 今年は他の花の開花が軒並み遅れ、まだ百日紅の花が残っているのに、十月桜だけはずいぶん早く咲き出しました。どうしたことでしょう。
 普通の桜は、冬季の低温に一定期間さらされることによって花芽が休眠から目覚めます。この十月桜は、どんな気候の変化によって目が覚めるのでしょう? また、普通の桜は徐々に蕾が大きくなってから咲きますが、この桜は蕾に気付く間もないほど、いきなり咲き出す気がします。
 ひょっとしたら、金木犀の香りを嗅いで目覚めるのかも知れません。トイレの芳香剤をそばに置いておいたら、勘違いして咲き出すでしょうか? 皆さんのあきれるお顔が目に浮かびます。


         紅白の貴船菊(秋明菊)      マウスを載せれば写真が変わります
 22日は旧暦の9月1日、23日は霜降です。
 数日前、朝起きたら、雨も降っていないのに、瓦や木の葉が濡れているのに気がつきました。夜露が降りたのでしょう。
 秋の晴れた日、日中は気温が上がり、空気もカラッとしているように感じますが、それは昼間だけで、実は朝夕は湿気が多いのだそうです。
 夕方になって気温が下がってくると湿度が上がるため、夕方を過ぎても洗濯物を干していると、湿っぽくなってしまうのだそうです。
 空気中に含みきれなくなった水分は、やがて露を結びます。これが夜露。空気中の水分が、氷結点以下になっている木々の枝などに触れた瞬間に昇華凝固して凍結したものが霜。「露」が凍ったものは、「霜」とは言わないのだそうです。そうとはつゆ知らず・・・。
 日に日に秋が一段と深まっていきます。秋を楽しむためにも、体調は万全に! ご自愛ください。



        天   地   は   釣   瓶   落   し   の   遊   び   せ   る       中村尚子