8/25版 




  まだまだ夏空、酷暑が続きます  マウスを載せれば写真が変わります
 処暑を過ぎ、心なしか秋が近付いた気がします。
 ずっと続いてきた‘熱い’夜。20日には最低気温でさえ28度あったのが、24日は21.8度に下がり、ほぼ1ヶ月ぶりに暑さに悩まされずに寝ることができました。
 まだまだ暑さは厳しいですが、次第に涼しくなっていく道筋が見えたようで、少しホッとしました。
 今日、向こう1ヶ月の天気予報が発表されました。これから1か月、近畿地方以西の気温は高く、降水量は少ないとのこと。近畿は、8月中は平年並で、その後はやや高、高いと推移していくようです。お彼岸の頃は、また平年より暑くなるのでしょうか・・・。降水量が少ないなんて・・・。このうえ小雨が続くとは、本当に大変なことです。先日、少し夕立がありましたが、今月の総降水量はまだわずかに3.5ミリです。

  何見て何想ふ? / 夕暮れに残る青空  マウスを載せれば写真が変わります
 もちろん、境内もカラカラに乾いています。
 おかしなことに、正面階段の左側の松、槙、もみじ、桜などが、10本ほど次々と枯れ続けています。小雨が原因ならば枯れ込みは境内一円に広がるはずですが、なぜか正面階段の左側ばかりに集中しているのです。この夏の真如堂のミステリーです。
 今後1ヶ月も雨が少ないようでは、今年の紅葉が心配です。
 雨が少ない年は、もみじの葉の水分が少ないために、しっとりした紅葉にはならず、枯れるように濁った紅になる・・・あくまでもボクの予想です。10・11月の気温も、平年並か高いという予報ですから、今年の紅葉は今から期待が持てないように思えます。
 政界の勢力争いには愛想が尽きますが、北と南の高気圧の勢力争いには大いに関心があります。せいぜいぶつかって立派な秋雨前線を作り出し、程よい雨を降らして欲しいものです。



        秋  暑  し   庭  に  木  か  げ  を  ひ  ろ  ひ  つ  つ      高浜年尾




 緑陰に新聞広げる / 涼しげなベンチに主はなし   マウスを載せれば写真が変わります
 ‘祈祷寺’‘檀家寺’‘観光寺’などというお寺のタイプや地域などによっても違いますが、‘檀家寺’のボクの自坊は、8月のお盆が終わると少し時間に余裕が出来ます。
 京都には「月参り」という風習があり、毎月、命日などに檀家宅に伺って、仏壇の前で読経をします。自坊の場合もそれが日課です。
 お盆は「棚経」に回るので月参りはしません。月参りより棚経に伺うお宅のほうが圧倒的に多く、また日程もお盆期間の短い間に凝縮されるため、お盆の間は目が回るほど忙しくなりますが、それが終わると月参りもないため、基本的には時間が空くわけです。
 お盆の後は、24日頃、あるいはその前の土日頃に、いろいろな町内の「地蔵盆」での読経を、28日頃、あるいはその前の土日頃には、「大日さん」の読経を頼まれることがあります。各町内の祠に祀られているのは、多くはお地蔵さんですが、大日さんが祀られていることも少なくありません。

本堂で芝居?に興じる学生 /「面白かったねぇ。よくやるわよねぇー」 マウスを載せれば写真が変わります
 「地蔵盆」も「大日さん」も、いわば子供のお祭り。お勤めの後は、おやつを貰ったり、様々なイベントが用意されていたりして、子供たちにとっては夏休み最後の大きな楽しみです。
 こう書くと、京都はいかにも宗教的な風習が残っているように思われるでしょう。想像も出来ないでしょうが、地蔵盆や送り火でさえ禁止された時がありました。政府が国家神道の理念を打ち出し、廃仏毀釈の波が押し寄せた明治時代でした。
 明治4年(1871)10月、地蔵・大日撤去の京都府布令が出され、京都中で路傍の地蔵が処分されたり、土木工事の石材に転用されたりしました。明治5年(1872)7月の布令では、盂蘭盆会の施餓鬼、送り火、六斎念仏、地蔵盆なども禁止されました。
 この夏、棚経に回っていた時に見たお地蔵さんの祠には、この布令の時に町内の人が自邸に地蔵尊を匿いかくま、禁圧が緩んだ時に町内に返還されて祀ったという由縁が書いてありました。
 廃仏毀釈の時には多くの寺が廃寺とされ、仏像も壊されたり売り飛ばされたりしました。無理やり神社と寺院に分けられたところもあり、多くの文化、文化財が失われました。実に恐ろしく、残念な時代があったのです。
 世界を見ても、宗教は平和をもたらすものとは言い切れませんが、お地蔵さんや大日さんの前で子供たちの歓声が聞こえるような平和な時代が永続するように努めなければいけませんね。


    やっとよく咲いてきた百日紅 / 金水引の花     マウスを載せれば写真が変わります
 花の開花した日、紅葉(黄葉)した日、動物の姿を初めて見た日(初見日)のような、季節によって動植物の状態が変化するのを観測する「生物季節観測」というものがあります。気象が生物に及ぼす影響を調べて、その観測結果から季節の遅れ進みや気候の違いなどの総合的な気象状況の推移を知ることを目的に、全国の気象官署で統一した基準により行われています。ん〜、難しい文章やなぁ。
 咲かないと心配していた百日紅が、ようやく咲いてきました。百日紅の開花も生物季節観測の対象になっているので調べてみると、京都は7月28日開花となっていて、平年より3日遅いだけになっています。
 「そんなはずはおへん! うちはやっと咲いてきたばかりどす」と京都弁で突っ込んで、データーと睨めっこしながら全国の傾向を見てみましたが、実にバラバラ。例えば、温かい潮岬とずっと北の山形の平年開花日が同じ8月5日だったり、隣同士の県なのに20日も違っていたりします。染井吉野のように、温かい南から咲いてくるという傾向は感じられませんでした。
 染井吉野は同じ遺伝子を持ったクローンなので比較に適し、「桜前線」のようなものを作れますが、百日紅の場合はそれぞれ遺伝子が違い、性質も異なっているので、一律に比較することは出来ず、平年比や前年比というその個体それぞれの比較しか出来ないのでしょう。
 データーを見ると、佐賀などは平年より23日も早い7月13日に開花していますが、開花が早かった例はむしろ少なく、全体としては平年より遅れ気味です。福井などは、平年より23日遅れの8月23日開花です。7月の多雨・日照不足・中旬前半の高温と中旬後半の低温などが、花芽に大きな影響を与えたのではないでしょうか。百日紅は気象の影響を大きく受ける植物なのかも知れません。
 「それがどうしたの?」と言われると二の句が継げないのですが、「夏の暑い年は、百日紅がよく咲く」という夏の象徴のような花なのに、夏の終わりを告げるツクツクボウシがよく鳴くようになってようやく咲いてきた今年の百日紅には、どうも納得がいきません。ほんまに不思議やなぁ。



         つ く つ く ぼ ー し  つ く つ く ぼ ー し  ば か り な り       正岡子規