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それでも気温は、今夏最高の36.2℃。おそらく立秋までのここ5〜6日が、1年中で一番暑いのではないでしょうか。 境内を訪れる人は多くありません。皆さん、用事がなければ外に出たくはないでしょう。 そんな中で、カメラ片手に引率の教員と共に写真を撮って境内をうろうろしている高校生の姿がありました。また、境内の宿泊施設でも高校生たちが合宿をしているようで、普段と少し様子が違います。 今月2日から6日まで、京都では高校生の芸術文化活動の祭典「全国高校総合文化祭」が行われていて、全国から約2万5000人の高校生が京都に来ているそうです。そして、演劇、合唱、郷土芸
境内で写真を撮っていたのは、おそらく写真の部会に参加する高校生で、時間の合間に京都の社寺などを撮影してまわっているのでしょう。言葉からして北陸地方の高校生です。 みんな京都の暑さに辟易としているかのような顔をして、覇気なく写真を撮っていましたが、カメラはボクのよりずっと上等でした。 「ボクは高校生の時、何をしていたんだろうなぁ?」とふと思いました。こんな大会に参加するほど優秀ではなく、引率の教師に黙って付いていくような従順な生徒ではなかったことは確かです。 そんなボクが、今こうして‘真面目’にお坊さんをしているのですから不思議ですが、従順ではない性格は変わりようがなく、あっちでつまづき、こっちで引っかかっています。直りませんねぇ。
昨日の夕方、この夏初めて、野良猫のミーコが石灯籠の火袋に入っているのを見かけました。 いくら大きな石灯籠だといっても、夕方になれば石も熱せられて決して涼しくはないでしょうに、四方から風が通るのと、見晴らしの良さ、どっちにでも逃げられるという点では、ここに優る場所はないのかも知れません。 うちの飼い猫‘さくら’を観察していると、一日中、絶えず居場所を替えています。猫は、その時々のもっとも居心地のいい場所を選んで、次から次へといる場所を替えていくのでしょう。 散歩途中の犬たちも、飼い主がペットボトルのお茶を飲んで休んでいる間、土間にお腹をくっつけて涼んでいました。冷たい土間は気持がいいでしょうねぇ。飼い主が発とうとしても、もう動きたくないという素振りを見せていました。 自坊でも、数日前からお盆の棚経が始まっています。一番暑い盛りに、夏用とはいえども重ね着をした‘一張羅’の僧衣を纏い、家から家へと読経して回ります。‘一張羅’しかないという点では、犬や猫と変わりません。ボクも、時は土間にお腹をくっつけて、クールダウンしたいものです。 暑 き 日 や 枕 一 つ を も ち あ る き 蝶夢
黒谷の菩提樹の実を見に行ったら、木の下が穴だらけなのに気がつきました。蝉の幼虫が這い出してきた穴に違いありませんが、樹の幹を見ても一つも抜け殻は付いていません。奇妙に思って見上げたら、3メートルほどの高さにある枝や葉に、何十もの抜け殻が鈴なりに付いていました。 ずいぶん高いところで申し合わせたかのように羽化しています。「抜け殻の位置が低いと、その年の冬は雪が少ない」とか、いろいろな言い伝えもあるようですが、あまり科学的ではないそうです。 ボクは今まで、蝉は直接土に産卵するものだと思っていましたが、大間違いでした。 蝉は、羽化後4〜5日で成熟し、メスは交尾後に枯れ枝などに産卵管を差し込んで産卵して、その一生を終えます。ニイニイ蝉の卵はその年の秋に、アブラ蝉など多くは翌年の梅雨頃に孵化し、土の上に落下して、土中に潜ります。そして、その後はよく知られている通り、幼虫として5〜7年程度土の中で過ごした後、羽化して成虫となります。 成虫の寿命は1週間程度です。
こんなことを知っていても何の役にも立ちませんが、子供の頃はそれを反射的に見分けられないと、‘何も知らない街の子’だと馬鹿にされました。‘街の子’は、綺麗な服を着ているくせに、トマトは最初から赤いと思っていたり、崖から飛び降りたりすることもできないなど、境内を遊び場にする子供たちからはランク下に見なされていました。 身をもって学んだ、そういうほとんど役に立たない知識などが、案外、人生を豊かにしてくれる大きな要素の一つなのかも知れないと、いまは思います。 お寺では「一に掃除、二に勤行、三に学問」などと言うのも、頭でっかちではなくて、体験を重視したからなのでしょう。でも・・・ いくら体験重視でも、こんな暑さはもう充分。早く涼しさを体験させてください! 皆さん、どうか暑さにご用心、ご用心。 少 年 に 木 の 紋 章 の 蝉 か が や く 伊丹公子 |