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    菩提樹越しに見る正面参道 / 風のない本堂前庭    マウスを載せれば写真が変わります
 遅れてきたかのような「五月晴れ」が数日続きましたが、今日は風もなく、まるで梅雨の最中のような蒸し暑いお天気でした。最高気温は、今年初めて真夏日を記録した昨日より7度も低かったというのですが、僧衣を夏物に着替えても、なお暑く感じました。
 この先1週間も低気圧や前線の影響で曇りや雨の日が多いらしく、近畿地方も7日頃に「梅雨入りしたと思われます」と発表されるのではないでしょうか。
 ジメジメした嫌な季節ですが、こういう気候があればこそ農作物も育つというもの。また、束の間の晴天がいっそう嬉しく思えて、気持にメリハリを付けてくれるような気がします。と、頭では理屈をこねてみても、やはり梅雨はあまり好きにはなれません。
 一頃雨が多かったためか、4〜5日前から蚊が急に増えて、まだ蚊取り線香の備えをしていなかった一昨夜は、プ〜ンという羽音に安眠を妨げられました。これから涼しくなるまで、境内の茂みや墓地で湧いた蚊には、悩まされ続けます。これもメリハリのうちでしょうか?

  本 堂 と 青 も み じ     マウスを載せれば写真が変わります
 新緑も世に出て日が経ち、日の光を浴びたり雨にも打たれたりで、少し落ち着いてきました。
 打ちひしがれたようなふりをして(何のため?)、下を向いて歩いていると、カラカラに乾いたり、赤くなったもみじの葉が落ちているのに気付きます。夏を越せないと悟ったもみじが葉を落としたり、枝ごと枯れ始めたりしているのです。
 せっかく冬の間から準備を整えて新芽を出したのに、夏を越して紅葉の頃まで永らえることができなかったもみじ葉は哀れです。また、もうしばらくすると、今年延びたもみじの枝先10センチほどが萎れて枯れ込んできたりします。虫の仕業でしょう。
 春からの試運転が終わり、厳しい夏に立ち向かえるものだけが残っていく。木々たちにとっても、今からしばらくはそんな時期なのでしょう。



        春   と   夏   と   手   さ   へ   行   き   か   ふ   更   衣      上島鬼貫




緑陰の「傳教大師巡錫之像」 / そうとは知らずにおやつを召し上がる人 マウスを載せれば写真が変わります
 「お大師さま」というと、世間では弘法大師空海さまを指しますが、天台宗では伝教大師最澄さまをいいます。
 清和天皇の貞観8年(866)、最澄さまに「伝教」、円仁さまには「慈覚」の大師号が、日本で初めて贈られましたが、「大師は弘法に取られ」、今では「お大師さま」は弘法大師さまの代名詞のようになっています。
 6月4日は、その伝教大師最澄さまのご命日です。天台宗のお寺では「山家会さんげえ」が修せられます。
 本堂の左斜め前にたつ「でん教大師巡錫じゅんしゃく之像」は、天台宗を開かれた伝教大師最澄さまが東国を行脚された時の姿を表したものです。作者の故西村公朝師は、「比叡山を眺めておられるようにして欲しい」と希望されましたが、境内にそれに適う場所がなかったので、比叡山を背に、境内のほうを向いて安置させていただきました。
 伝教大師さまが19歳で比叡山に入山された時に、「愚が中の極愚 狂が中の極狂 塵禿じんとく有情うじょう 底下の最澄。上は諸仏に違い 中は皇法に背き 下は孝礼をく。謹みて迷狂の心に随い三二の願をこす」と目標を記された『願文がんもん』や御遺言などを改めて読むに、大師に背いてばかりの末弟の自分が恥ずかしく、この像も厳しいお顔に見えてきます。
 伝教大師さまの御像は、境内を訪れる人を、今日も比叡山を背にした池の畔から見守っておられます。


       「七段花」 / 「白舞妓あじさい」 (6/1)    マウスを載せれば写真が変わります
 今日も、何組かの修学旅行のグループが、タクシーに乗って訪れました。ほとんどは内陣・庭園拝観をしないで、本堂とタクシーとの間のピストン運動。「何か所回ったか」を競うようなグループがほとんどです。
 あれは、生徒の皆さんの希望で来られるのでしょうか? それとも、あまり人がいなくてトラブルにもなりにくく、運転手さんも楽ができるところを選ばれているのでしょうか?
 今の境内には何もめぼしいものがなくて申し訳ない気がしますが、もう少しゆっくり回ってもいいのではないでしょうか。
 とある、徒歩で来られた男女4人の中学生と先生のグループは、まるで軍隊調でした。由緒を書いた駒札の前で先生の指差しで整列、本堂に上がるにも整列。堂内の仏前で真一文字に並んで一斉に合掌。私語はなく、和気藹々ともせず、「楽しいのだろうか・・・かわいそうに・・・」と、異様な感じでした。
 今は、京都市内どこへ行っても、修学旅行生を見かけないことはありません。静かな京都は、この修学旅行シーズンが終わって、祇園祭までの隙間を狙わなければいけません。


 「八」の字の雪の下の花 (6/1) / 「十」文字のどくだみの花    マウスを載せれば写真が変わります
 本堂の南側の軒下に巣を作ろうとやってくる鳩と職員さんたちのバトルは、今日も続いています。
 先週はマグネットを置きましたが、鳩が来なくなったのはわずか1日だけ。昨日はCDを置いてみるようにアドバイスをしましたが、どうやら効果はなかったようです。鳩も子孫を残すのに必死。オジサンたちも、糞を掃除する手間をかけたくないので懸命です。
 残る対策は、てぐすを張る、木酢液などを塗る、忌避剤を置くなど。ボクも口だけではなく、手を貸さないといけなくなってきました。梯子に登るの、怖いなぁ・・・。
 次々と、早咲きの紫陽花が咲いてきました。なんだか、梅雨入りを急かしているかのようです。雪の下、どくだみ、山法師、かなめもち、いずれもあまり目立たない花ですが、しっかりした主張があります。盗作ではありません。
 蛍の話題が聞かれるようになりました。蛍は、朝の最低気温が16度を上回ると見られるようになり、日沈後1〜2時間頃に最も多く飛び回るそうです。蛍の光、幻想的ですね。今年も、琵琶湖疏水畔の哲学の道に見に行きたいと思います。
 話が少し逸れますが、ボクは「ホタル」と言おうとしても、つい「ホテル」と口走ってしまうのです。なぜでしょう。恥ずかしくて、顔がほてります。
 不順な気候が続きそうです。どうかご自愛ください。



         十   薬   の   花   の   厚   み   の   曇   り   空      牧石剛明