5/11版
週間天気予報を見る限り、向こう1週間は気圧の谷や前線の影響で曇りや雨の日が多いとか。卯の花を腐らせるかのように長く降る雨を、万葉の古から「 「五月晴」といいますが、5月はお天気がいいと勘違いされておられる方も多いのではないでしょうか。京都の5月は、6・7・9月に次いで降水量の多い月です。若葉の頃から5月にかけての雨の名前だけでも、「翠雨」「緑雨」「麦雨」「甘雨」「瑞雨」「虎が雨」「走り梅雨」などとたくさんあり、雨の多い季節であることを物語っています。
さて、今夜のお月さんの回りにかさはあるでしょうか? 13日は満月です。 お天気が回復した午後からは、連休も終わった平日にしては意外に思えるほど、境内を訪れる人の姿が多く見られました。今の時期は、どこへ行っても人が少なく、混雑もなくて、実に快適です。 観光まみれではない京都を楽しむなら、今はベスト・シーズンの一つです。つつじ、藤、杜若、一初など、まだまだ花盛りです。 万 緑 の こ の 静 け さ に 囲 ま る る 阿部ひろし
雨の後に境内を歩くと、若葉をつけたままの太さ2センチほどもあるもみじの枝が、折れて落ちていることが、時々あります。「誰かに折られたのだろうか?」と思って折れ口を見ても、そんな気配はありません。ただ、虫が食い切った感じの断面の中心に、5ミリほどの穴が開いていています。おそらく、カミキリ虫の幼虫の仕業でしょう。 仕方がないので片付けようと、若葉を付けた枝を持って歩いていると、通りがかりの人にまるでボクが犯人であるかのような目で見られました。ボクではありませ〜ん。 そういえば、4月、桜を料理に添えようと盗んだ調理師が、鴨川畔で逮捕され、京雀たちの話題になりました。もみじの若葉や紅葉、桜など盗る料理人を目撃している人も多いらしく、境内にも時おり出没して、折った枝を体の影に隠して逃げ去ろうとします。見つけたら、もちろん“お説教”です。 「
「きっと、境内の木も咲いているぞ!」と思って、本坊の庭に見に行ったら、ちょうど満開で見頃を迎えていました。この時期、気になる木の一つで、先週見たときは、やっと花穂らしいものが伸びてきたばかりでした。 このナンジャモンジャの花は拝観コースからが一番よく見えますが、真如堂の木はひょろ高いので、どこに咲いているかわかり難いでしょう。 ボクが呑気にナンジャモンジャの花の写真を撮っている傍らでは、庭掃除をしている職員が、次々と落ちてくる赤褐色の 「涅槃の庭」越しに見た東山は、モコモコと萌え出でた様々な色の若葉で賑やか。中でも目立つのは 京都の東山で、椎は高度成長期頃から分布を拡大し、山が放置されたことや松枯れもあって、東山中央部ではここ40年で約3倍にも分布域を拡げたそうです。 かつて、東山の景観を作り出していたのは松でしたが、今は管理が行き届いた修学院離宮の裏山であたりでしかそんな景色は見られません。 この時期の山を見ると、「あー、山の姿が変わったなぁ。中腹より下は椎の木ばかりになってしまったなぁ」と実感させられます。
もみじは小さな芽がいっぱい出るのに、この「花の木」の種が発芽したのを見たことがありません。雌雄異株ですが、うまく受粉できないのでしょうか? 風に舞うこの種をキャッチするのをゲームにすれば、かなり面白そうですよ。 もみじの種も赤く熟して、色の濃くなってきた若葉にアクセントを添えています。花は葉の下に咲いていたのに、種は不思議なことに葉の上に出ています。いつのまに逆転したのでしょう。 吉祥院前の大つつじが、ようやく咲き出しました。まだ咲きそろっていませんが、次回の更新の時にはもう散ってしまっているかも知れませんので、盛りを待たずに“特別出演”です。 ここ数日の間に、柊や金木犀などの若葉などが虫に食われてしまいました。気がついた今日には、すでに被害甚大。早速、薬散をしました。つつじが標的にされるのも時間の問題。花を楽しんでばかりいられません。
「招霊」と書いて「おがたま」と読むのは、漢字検定1級の方でも難しいのではないでしょうか? かなり無理がある読み方です。 「おがたま」は「 “バナナの木”という俗称もあるそうですが、甘い熟したバナナのような香りをあたりに振りまきます。大山蓮華の花も芳香を放ちますが、唐種招霊が相手では歯が立ちません。それほど香りを放っている両花ですが、虫が寄ってきているのを見たことがありません。匂いばかりで蜜があまり美味しくないのでしょう。 京都でもモリアオガエルが産卵しだしたようです。いち早く、走り梅雨の気配を感じたのでしょうか。 昼間は暑くても、雨の夜などは気温が下がって肌寒いこともあります。どうか、お風邪を召されませんように。 春 と 夏 と 手 さ へ 行 き か ふ 更 衣 上島鬼貫 |