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朝の外の風には、陽光とは裏腹の冷たさが残っていました。日なたにいるとまだ少し温かいですが、日陰に入ると、時にやや強く吹いてくる冷風の洗礼を受けました。 小さな花を撮ろうとカメラをかまえていても、風が花を揺らし続けてなかなかシャッターが切れません。だんだん冷えてくる体と相談しながら、どこで手を打つかの我慢比べでした。 雲一つない好天に気温はあがり、午後は少し温かくなりましたが、それでも最高気温は13度止まりでした。昨日は関西一円で観測されていた黄砂も、今日はやって来ていないようで、西山の稜線もはっきり見えていました。
京都地方気象台の染井吉野の標本木は28日に開花するという予想ですが、境内の開花はそれよりも遅れます。まだ蕾がはち切れて花色が見えるまでには膨らまず、花色が見えてくるまでにもあと数日かかりそうです。 三重塔の南脇にある枝垂れ桜が、4〜5輪開花しました。こちらは、今日開花宣言です! 枝垂れ桜は、江戸彼岸桜の変種のようですが、本堂南側の「たてかわ桜」も同じ江戸彼岸の一種です。例年、染井吉野より少し早く咲き出しますが、まだ蕾はあまり膨らんでいません。 この3種の桜を土・日に併せ楽しもうとされるのなら、4月8・9日頃にお越しください。平日にお越しになれる方は、もう少し早くにご予定ください。ハズレたらごめんなさい・・・。 晴 天 に 苞 押 し ひ ら く 木 の 芽 か な 杉田久女
自坊の前庭では、水仙の花がいまだに盛りで、紅白の梅や沈丁花などと共に、目と鼻を楽しませてくれています。門内では、胡蝶侘助、さくらんぼ、十月桜、日向水木などが咲き競っています。山吹もほころび始めました。 椿は、この1週間で一気に咲きました。お天気のいい日の椿の葉っぱは、まるで水面が光っているようにキラキラと強い光を返してくれるので、遠くからでもそこに椿があることがわかります。 子供の頃、学校の行き帰りに薮椿の花を摘んで、蕊の穴から蜜を吸いました。“当たり”はほんのり甘いもの、“スカ”は腐ったような味がしたり、蟻がいたりする花でした。 武士は「首が落ちる」といって椿を嫌ったと言いますが、本当の話でしょうか? 椿の栽培品種は、世界になんと約7000種もあるそうです。日本では万葉集にも登場し、室町時代には茶花として愛用され始め、江戸時代になると将軍や大名が園芸を楽しんだといいます。
2代将軍徳川秀忠は椿を好み、各地の椿をコレクションしたといいます。そしてこれが、江戸時代に椿の園芸が大名や武家の間で盛んになる切っ掛けになったといいいます。椿がいかに古くから愛されてきた花であるかは、枚挙に暇がなく、「武士が椿を嫌った」という根拠はどこにも見つかりません。明治の頃に、椿に対抗する牡丹愛好家などが行った“風説の流布”ではないのでしょうか。椿と牡丹の愛好家が、互いに反目していたかは知りませんが。 境内のベンチでは、若いカップルがコンビニのお弁当を広げておられました。まだちょっと肌寒いでしょう。 椿の花もカエデの真っ赤な花も、お花見には向かず、やはり桜を待たなければいけません。でも、一気に咲いて散っていく染井吉野よりも、境内に咲いている様々な種類の椿を見て回るほうが、よほど深く満たされるように思えます。
ボクは二条城に入ったことがありませんので、何とも申し上げようがありませんが、想像するに、きっと綺麗なのでしょうね。 あちこちの社寺や観光地などでも、近日中にライトアップや様々なイベントが始まるでしょう。いよいよ春の観光シーズンの本格的な幕開けです。 京都にお越しになる方の中には、昨今流行のライトアップなどのイベントを楽しみにされている方もあれば、逆に眉をしかめ、静かな京都を求めている方もおられます。 京都に住んでいる人の多くはそのようなイベントにはあまり興味もなく、参加したり訪れるということもあまりありません。雑誌に載っているようなお店も、聞いたことのないところがいっぱい。京都人も知らない“京都”が増殖しているのです。 地元紙に、「サクラの造花でお花見ムード」という見出しがありました。造花の花見もご愛敬でしょうが、“ほんまもん”との区別を心得た上で割り切って楽しまないといけません。京都も然り。 二条城も龍安寺も行ったことのないボクが言っても、まるで説得力がありません。 馬 酔 木 咲 き 森 の 奥 ま で 透 く 夕 日 根岸善雄 |