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   傘を持つ人持たぬ人 / 夕暮れ近い犬の散歩    マウスを載せれば写真が変わります
 先日来あたたかい日が続いていましたが、また寒さが戻ってきました。
 ようやく東大寺二月堂のお水取りが始まったばかり。比良八講はまだ先ですから、寒さが戻ることは「想定内」のはずでしたが・・・何だか損をしたような気分です。
 今朝の気温は1度を切っていました。午前中は風もなく、気温ほどには寒さを感じませんでした。ところが、午後からは時雨れに風も加わり、時おり白いものが降ってきて、急に冬に戻ったようなお天気になりました。
 朝から少しずつ気温は上がり、1時頃には7度を超えたのに、2時には4度まで急降下。3時には7.9度まで回復しました。
 晴れたかと思ってカメラを持って境内に出たら曇り、時雨が止んだかと思って出たら今度は粉雪。曇り、晴れ、時雨れ、粉雪と、5分と同じ天気が続かない日でした。
 行きつ戻りつしながら来る春だからこそ、なおさら待ち遠しく感じられるのでしょうね。自然って思わせぶりです。



           ひかげ  れ  ば  春  水  の  心  あ  と  も  ど  り       星野立子


3月3日「立子忌」に

         やっと見頃を迎えつつある白梅    マウスを載せれば写真が変わります
 白梅がようやく見頃を迎えました。例年より20日ほど遅い見頃です。
 先日、世界最大の気象情報会社であるウェザーニュースと気象庁から、それぞれ桜の開花予想が発表されました。
 開花予想日が、両者の間で1週間違っていましたから愉快です。
 2月27日に発表したウェザーニュースは、西日本の気温は平年並と予想。「西日本や、東日本の太平洋側を中心に、平年に比べて、曇りや雨の日が多くなるため、桜の開花は、全国的に“平年並み”の所が多く、九州南部や四国南部、甲信地方では“平年よりもやや遅め”となる見込みです」ということで、京都市付近は4月5日の開花予想でした。
 一方、大阪管区気象台の予想は、3月28日開花。「1月は上旬が寒かった
         そろそろ終盤を迎える早咲きの紅梅     マウスを載せれば写真が変わります
が、2月の平均気温は5.5度(平年4.8度)と暖かかった。3月も気温は平年並みか高い予報となっており、開花が平年より早まると予想した」とのこと。
 さぁ、どちらが当たるでしょう? 面白くなってきました。ちなみに、平年は3月31日の開花。去年、気象庁は3月31日と予想しましたが、開花宣言は4月2日。「どこで咲いているの?」と囁かれていました。
 今後の気温が開花日を大きく左右しますが、ウェザーニュースは「平年並」。気象庁は「平年並みか高い」。
 開花予想は、各地に定められた「起算日」から、ある温度ではどれぐらい生長するか(「温度変換日数」)という数値を積算して出されるそうです。つまり、気温の高い日が続くと、積算が加速することになります。
 「起算日」はの平均開花日の15日程度前ということですから、これまでのこの冬の寒さや、それによって梅の開花などが遅れたことなどはあまり関係がないのでしょうか?
 さぁ、ウェザーニュースvs気象庁の腕比べ? 知恵比べ? どちらに軍配が上がるでしょう?


            涅槃図を拝観する人    (撮影禁止です)  マウスを載せれば写真が変わります
 1日から、本堂では大涅槃図の公開が始まりました。
 この涅槃図は1707年に完成したもので、当時の三井家の女性たちが、浄土系の僧厭求重三えんぐに依頼し、海北友賢らが代工となって制作したものです。
 「真如堂の涅槃図には猫が描かれています」という説明をあちこちで目にします。でも、猫が描かれている涅槃図は、さほど珍しくはありません。
 猫が描かれない理由としては、釈迦涅槃(入滅)の時、「沙羅樹に引っかかった天からの妙薬を、鼠が取りに行くのを邪魔しないように」「鼠を猫が食べてしまったから」「猫がその薬をこぼしたから」などと諸説紛々。それなのに、何れの説も、あたかも自分が見てきたように説明されています。
 日本に猫が入ってきたのは飛鳥時代の末期頃のようで、この時は「唐猫」と呼ばれて、教典を鼠から守るために連れてこられたのだそうです。西域から中国にやって来たのも、やはり教典や穀物を守るため。猫は、仏教伝来と共に東へ東へと運ばれてきたのだそうです。
 仏教に功ある猫ならば、真っ先に涅槃図に描かれてしかるべきでしょうに・・・。
 江戸期に猫がペットとして飼われるようになった頃から、涅槃図にも猫などの家禽が積極的に取り入れられるようになったというのが、どうやら猫論議の真相のようです。
 真如堂の本堂内陣や庭園の拝観料は普段は500円ですが、涅槃図を特別公開しているときは600円。田丸弥製の「はな供曾くそ」あられ付きですから、ずいぶんお得ですよ。


今年初の胡蝶侘び助(苦沙彌自坊) / 咲き出したサンシュユ(本堂裏) マウスを載せれば写真が変わります
 今日3月3日は、じょうの節供、雛祭りです。
 京都を旅行されている時、人形店のウインドウなどで雛人形をご覧になって「あれっ?」と思われた方はおられないでしょうか。京都では、向かって右側に男雛を飾ります。
 「天子南面」、天皇などは南向けに座すものとされ、これに則って平城京や平安京なども作られています。向かって右側に左近の桜、同じく左側に右近の橘があるのも、天子が南面して見た時の左・右です。京都では東に左京が、西に右京があるのも、同じ理由からです。
 南に向いた時、日の登ってくる方角、東(左)が上座で、日没の方向、西(右)が下座になります。この考え方は、いろいろなところに見られます。例えば、左大臣と右大臣では左大臣が上。大相撲の番付は東が上。
 京都のお雛様は、こういう理由で左側(向かって右側)に男雛、右側(向かって左側)に女雛が座っておられるのです。男のほうがエライと言っているわけではありません、念のため。
 昭和天皇の即位の時、国際儀礼では日本と違って右が上位だったため、天皇が右、皇后が左に並ばれ、関東の雛人形もその並び方にしたそうです。
 どちらでもいいというものでしょうが、こういうことを知った上で、古来の飾り方にこだわってみるということも、京都の文化を理解し、守っていく上では大切なことではないかと思います。軽薄な京都にならないためにも。
 上巳の節供は、「3」が重なることから「重三ちょうさんの節供」ともいわれます。
 さて、ここで問題です。「京都で3が重なるといえばどこでしょう? 1.清水寺 2.金閣寺 3.三十三間堂 答えは?」「はい、正解! 3番の三十三間堂です」  三十三間堂では、昨年から3月3日を無料拝観日にされていて、今年は新たに本堂南東角の廊下に幅1・3メートル、長さ約5メートルの壇を設置。普段は仰ぎ見る千手観音像や二十八部衆、風神像などを、高いところから見渡せるようにされたそうです。きっと壮観だったでしょうね。上の日にふさわしい、アイデアだと思います。
 6日は啓蟄けいちつです。そろそろ動き出しましょうか。




        雛  の  間  を  猫  の  素  通  り  し  て  ゆ  け  り      石嶌 岳