12/2版
真如堂から近い東山の峯々はぼんやりと見えているものの、15〜16キロ離れている西山の姿はまったく見えません。 江戸時代、「京都は周囲が山に囲まれていて息苦しい。雨が降った日は山が見えないから、かえって晴れ晴れしい」というようなことを言っている江戸人がいたそうですが、今日なら喜びそうです。 東山もクヌギやコナラなどが赤や褐色に染まり、まもなく葉を落として冬の装いに変わっていきそうな気配です。 今夜からは北風が強まり、来週には強い寒波がやってくるとの予報。今夜はグッと冷え込んで、明朝の最低気温は氷点下までさがるそうです。 「一雨一度」という言葉があります。この1週間、5つもの気圧の谷が近畿地方を通り、雨こそ降らなかったものの、気温がぐんぐん下がりました。いよいよ冬本番。7日は「大雪」です。 社寺の迎春準備のニュースも多く聞かれ、京都にも師走の雰囲気が漂ってきました。 紅葉のシーズンも、今土日で終焉です。
本堂の前あたりのもみじの紅葉はほぼ終わり、いまは本堂の裏と、吉祥院の前の紅葉が境内の中では一番の見どころとなっています。 まだ梢に残っている紅葉と、地面に散り積もった落ち葉の両方が、今は楽しめます。天も地も赤や黄色に彩られ、それはもう見事です。 赤いもみじの葉や黄色い銀杏の葉を手に持って歩く人の姿や、写真を撮るにもカメラを下に向けている人も見られます。 この天地両方の紅葉を楽しめる時期ももうしばらくの間です。すでに盛りは過ぎていますが、もうしばらくは見頃です。 冬 紅 葉 冬 の ひ か り を あ つ め け り 久保田万太郎
JR東海の「そうだ 京都、行こう」で取り上げられた2002年以降、紅葉の美しい年はありません。よくないことが普通になってしまった気もします。 「今年はよくないのですよ」と申し上げると、「えっ、これでですか!?」とたいていの方がビックリされます。中には、「去年とどちらが悪いですか?」と尋ねる方もおられます。 確かに、昨年ももみじの葉先がチリチリになっていたり、全体的に黄色っぽく、見事とは言えませんでした。今年はそれよりさらに悪いのではないでしょうか。 先週末の冷え込みで、「待ってました! これで綺麗になる!」と期待したのですが、それを境に葉の枯れ込みが一気に進んでしまいました。まだ多くのもみじの梢には色付いた葉が残っていて、遠目には紅葉しているように見えますが、近づいて見ると、残っている葉もチリチリに乾燥して赤褐色になっているのがわかります。 今年は、そんな“ドライ・リーフ”を付けた木が、去年よりも圧倒的に多い気がします。
今年の11月は37ミリしか雨が降りませんでしたが、2002年も39.5ミリとさほど変わらず、9〜11月で比べてみても、今年は215ミリ、2002年は236ミリ。データだけでは、2002年の紅葉が美しくて今年が悪い理由が、よくわかりませんでした。 でも、どうして今年は“ドライ・リーフ”になった木が多かったのでしょう? また、例年は紅くなる木が少し黄色っぽいのも去年と同じですが、それはどういう原因からでしょう。 もみじは、秋から冬にかけて気温が下がるにつれ、根から水分を吸収する作用が衰え、葉と茎の付 け根の部分にある“離層”と呼ばれる組織がコルク状に変化して、葉と茎の間で水や養分の流れを少なくします。今年は、葉に十分な水分が留まっていない状態で離層ができて水分が届かなくなり、葉がチリチリになってしまったのかなぁと、勝手に想像しています。 「12月になったほうが綺麗ですね」と、真如堂通の方々が期待されていた本堂の裏の紅葉。ボクも紅葉が遅い本堂裏だけは綺麗になるのではないかと思っていましたが、こことて同じで。せっかくの敷き紅葉も、木に付いている段階ですでに茶色く枯れている葉が多いため、色が冴えません。 吉祥院前のほうがチリチリもまだましで、色も鮮やか。今年は“勝った”かなと思っています。
銀杏は水分が多いため防火樹としてお寺に植えられたりします。その分、葉も多くの水分を含んでいて、銀杏の葉っぱだけで燃やすのはなかなか至難の技です(もみじの葉などと混ぜて燃やします)。 そんな銀杏ですから、もみじがチリチリになっていても、しっとりすべすべしています。今日はそのスベスベした葉で、滑って転びました。 遠目に見る銀杏の木は、実に堂々としていて、境内に落ち着きを与えてくれている気がします。 ところで、銀杏の葉のエキスは、脳細胞の働きを活性化して、物忘れなどに対して高い効果があるそうですね。ボクの目前に、今一番ボクに必要な“宝の山”があったとは・・・。焼き芋を焼くためにだけ使っていてはもったいないですね。
1週間ほど前から落ち葉が急に増えて、朝の掃除に時間がかかるようになってきました。落ち葉は、これからますます増える一方です。 掃除して、ハイそれで終わり!ではつまりません。時間に余裕のある時は、落ち葉を燃す焚き火の中にアルミホイルでくるんだサツマイモを忍ばせます。 今年も12月1日に、鹿児島から取り寄せた「安納いも」を使って、初焼き芋をしました。 落ち葉を燃やした熱い灰でじっくり時間を掛けて焼き上げた焼き芋が、美味しくないはずがありません。 これからは、チャンスを見つけて焼き芋をします。吉祥院の前の焚き火の横に、タオル頭の人がいたら、焼き芋実行中かお尋ねください。ひょっとしたら、お裾分けにありつけるかも知れませんよ。
何気なく見ていたら、「今月の花」という欄に南天が取り上げられ、その名所として真如堂が載っていました。 「へぇ〜、真如堂は南天の名所だったのか」と感慨深く拝見しましたが、そこには「本坊の書院周辺や境内に南天が点在し、赤い鮮やかな実をつける」と書いてありました。 「そういわれれば、あそこに1本あったかなぁー。点在しているかなぁ・・・。この写真はどこ?」と、ハッキリとした印象がありません。真如堂の境内に南天が特に多いとは思えないのです。 ただ、墓地に限って言えば、お隣の黒谷より真如堂のほうがたくさんの南天があるかも知れません。 墓地の南天は植えたものではなく、お正月に供えた松竹梅に添えられていた南天がこぼれたり鳥に運ばれたりして、実生で大きくなったものです。またお正月前には、供花を作るために房ごと実が切り取られます。 リーフレットに載っているからといって、南天のためだけに真如堂にお越しになっても、難を転ずるどころか、たいしたことなくて難儀してしまわれるかも知れません。 それにしても、どうして南天・・・真如堂・・・。 本格的な冬の到来、お風邪を召されませんように。 薄 日 と は 美 し き も の 帰 り 花 後藤夜半 |