11/11版 



一見すると紅葉の盛りに見える正面 / 「善の綱」を持って念じる人(下記参照) マウスを載せれば写真が変わります
 朝からの曇り空も、3時頃には天気予報通り、雨になりました。
 知恩院や清水寺など、今日からライトアップを始める寺々の出端をくじくようなお天気です。
 スケジュールのやり繰りをし、やっとの思いでホテルを予約されたような遠方からお越しの方は、雨だからといって予定を変えるわけにはいきません。
 お気の毒な気がしますが、この雨のお陰で、青いもみじも濡れて綺麗に見えるでしょう。少し救われます。
 9日には最低気温が5.8度と、今秋一番に冷え込みましたが、今朝はまた10度余りまで戻りました。7度ぐらいまで気温が下がらないと紅葉が始まらないといわれていますが、週明けも最高・最低気温共に平年より少し高めの予報ですので、紅葉が急に進むことは期待薄です。
 京都では、「北山時雨きたやましぐれ」が降って京の町が冷え込むと、紅葉が鮮やかになってくるといいます。北山の方から降ってくる冷たい時雨は、晩秋から初冬にかけての京都の風物詩ですが、まだその気配が感じられません。
 鮮やかな紅葉は、もうしばらくお預けです。


          時  雨  れ  て  よ   足  元  が   歪  む  ほ  ど  に     夏目雅子



朝一番の団体が押し寄せる寸前/朝日に照らされる「花の木」 (11/10) マウスを載せれば写真が変わります
 境内の紅葉は、1週間前と比べてもさほど進んでいませんが、本堂前の「花の木」の紅葉は盛りを過ぎ、天辺の葉が落ちてなくなってきました。
 人によって評はわかれるところでしょうが、今年の「花の木」の紅葉はそこそこ。わかりやすいようにあえて点数を付けるなら、70点といったところでしょうか。
 木の天辺が真っ赤、中程が黄色、下が緑というように上手に染め分けることが出来たなら、100点満点。今年は天辺の葉がなくなってしまったこと、黄色が少ないこと、全体の色のバランスがあまりよくないことが減点対象となって、総合して「そこそこ」です。
 残念ながら今日は曇っていましたが、晴れた日の「花の木」の紅葉は、そりゃもう見事。真如堂の紅葉の前哨戦は、「花の木」の紅葉で締めくくりです。せっかくですから、昨朝の快晴の中の写真をご覧ください。

  紅・黄・緑の葉(11/10) / 緑一色のもみじもまだまだ多い   マウスを載せれば写真が変わります
 「花の木」の回りのカエデも黄色やオレンジに色付いています。
 茶所前のもみじも、「花の木」の紅葉が伝染したかのように、他のもみじに先んじて赤くなってきています。
 実は、この木は10年ほど前から少し弱っています。近づいて葉を見ると、縮れていたり、枯れているものまであって、とても健康的に紅くなっているとは思えません。一番目立つ場所に生えていることもあって、境内の中で最も心配なもみじです。
 他のもみじも、今年は雨が少なかったためか、少し黒ずんでいたり、葉先が枯れ込んでいるものも少なくなく、これから冷え込んだとしても、どこまで綺麗になってくれるだろうかと案じています。
 先日の新聞に、「紅葉は遅くサクラは早く」という記事が載っていました。
 それによると、「50年前に比べてカエデの紅葉は15.6日、イチョウの黄葉は10.7日遅くな

   朝日の中で手紙を書く人(11/10) / お弁当を食べる麗人  マウスを載せれば写真が変わります
っていることが、気象庁がまとめた生物季節観測で9日分かった」ということで、カエデの落葉も9.1日遅くなっているとのことでした。
 確かに、ボクが子供の頃の紅葉のピークは、ちょうどお十夜じゅうや結願けちがん法要が行われる11月15日頃だったように思いますが、最近では11月末頃までずれ込んでいます。
 しかもこのデーターから見ると、紅葉してから落葉するまでの日数は、結果的に短くなってしまっているということが読みとれます。
 遅くに紅葉して、紅葉したらすぐに散ってしまう。紅葉を楽しめる期間が短くなっているということになるでしょう。残念ですね。
 カエデや桜の紅葉ともみじの緑が入り交じっている境内ですが、メインのもみじの紅葉のピークは、やはり11月後半ではないでしょうか。

      吉祥院の菊(懸崖)と千両/ 大菊   マウスを載せれば写真が変わります
 紅葉の人出も今週末から2週間がピーク。京都の人が閉口して外出を控えがちになる交通渋滞も、いよいよこれから本格化します。
 そんな折も折、16日にはアメリカ大統領が京都を訪れ、御所の中に新しくできた迎賓館で、首相との会談が行われます。
 市内の道路には、「米国大統領の来日に伴い、15・16日、京都市内で交通規制を行います」という看板が立ち、警護・警備のための警察官約6千人が他府県警から動員されるそうです。
 ホワイトハウス関係者、アメリカのメディアや日本の政府関係者の宿泊のために、ホテル側から予約をキャンセルされた人も数百人に及ぶとか。苦労して取った予約でしょうに・・・・お気の毒です。
 口うるさい京雀たちは、「ただでさえ道が混む時期なんだから、ヘリで来てヘリで帰ってくれればいいのに」「道路規制があるということは、どこかに観光にでも行くの? 冗談やないでぇ」「もっと空いている時に来ればいいのに、なんでこんな時期に来るんや」などと、迷惑口調。しかも、どの道路が交通規制されるかは安全のためか事前の予告はなく、その日にならないとわからないので、混雑を避けることもできません。
 でも、これでほとんど使うこともないのに巨費を投じて建設してしまった迎賓館に、ようやくスポットライトが当たります。・・・誰が喜ぶのでしょう?
 アメリカ大統領閣下、ご無事にお早くお帰りください。

      本堂から回向柱に延びる善の綱(11/10)   マウスを載せれば写真が変わります
 さて、5日からは「十日十夜別時念仏会じゅうにちじゅうやべつじねぶつえ」、「お十夜」法要が営まれています。
 15日の2時からは「結願大法要」が厳修されて、お天気ならば、色鮮やかな装束を身につけた僧侶や可愛い稚児たちが境内を練り歩きます。
 5日の開闢かいびゃく法要の折、御本尊の阿弥陀さまの御手に紐が掛けられ、そこから延びた5色の紐、それに繋げられた白い綱が本堂から30メートルほど離れた回向柱に結びつけられています。
 「善(縁)の綱」と呼ばれるこの綱を持って念じれば、その先を持っておられる阿弥陀さまに直接願いが通じると言われ、綱にぶら下がっているその説明を見た人が、一心に念じている姿をよく見かけます。
 15日には、参詣の方にも本堂の一番高い、阿弥陀さまのすぐ前までお上がりいただき、間近でそのご尊顔を拝していただけます。ご縁があれば、ぜひともお参りください。
 5日からは毎夜、講の人が叩くかねの音が、昼間の喧噪が嘘のように静まりかえった境内に響き渡っています。
 数百年にわたって繰り返されてきた、初冬の真如堂の景色です。


        結   願   の   十   夜   の   寺   に   月   昇   る        金山有紘