11/4版 




本堂左端より、右端と正面を望む。基調は“赤”に移ろいました。本堂から延びる白い綱は5日から行われる「お十夜」の「善の綱」

 今日は高気圧に覆われ、快晴とまではいきませんが、穏やかに晴れています。最高気温は24度と、ここ数日の中では最も高い予想で、しばらくは最高・最低気温ともに平年並か平年より高い見込みだそうです。
 10月下旬からの朝晩冷え込みで紅葉も少し進み、神護寺などはほぼ例年通りに紅葉の見頃を迎えたそうですが、これでまた足踏みでしょうか。
 境内にも、大きくて重たそうなレンズをカメラに付けた初老の人たちが、今日も早朝から次から次へとお越しになっていました。御所の一般公開の影響でしょうか、外国人の姿も目立っていました。

本堂正面。紅葉もピーク? / 紅・黄・緑の「花の木」をかき分けて塔を眺む マウスを載せれば写真が変わります
 今日は、紅葉シーズンを前に、境内の紅葉についてのガイダンスをさせていただきたいと思います。
 その前に、このページではカエデとモミジを区別していますが、植物の分類ではカエデもモミジも同じ種類として扱われています。
 園芸の世界では、イロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジなどのように、葉が5つ以上に深く切れ込んでいるものを“モミジ”と呼び、それ以外のトウカエデ(切れ込みが3つのもの)などを“カエデ”と呼んでいます。
 芽吹きの様子も、新緑も、そして紅葉の具合も、モミジとカエデでは違うので、ここでは区別しています。
 さて、境内の紅葉も、本堂前あたりは、とても綺麗になってきました。「花の木」などカエデの紅葉がモミジに先駆けて進んでいるのにあわせて、桜の紅葉がピークを迎えているためです。
 「花の木」は、天辺の紅葉がピークを少し越えて散り始め、赤い色が下の方の枝まで降りてきました。下の方の葉はだいたい緑色の中に、赤や黄色の葉が入り交じってきて、美しい景色を見せてくれています。
 「花の木」の紅葉は、ここ1週間がピークかも知れません。

   本堂北側(向かって左) / 南側(向かって右)   マウスを載せれば写真が変わります
 本堂の北側(正面向かって左側)では、モミジが少し色付いてきています。ただ、北側のモミジは元気がありません。
 カミキリムシが木の幹に穴を開けて、そこに蟻が入っているのか、モミジの水を吸い上げる力が落ちているようです。加えて、今年雨が少なかったこともあって元気がないために、“弱って”紅くなっているという感じです。
 弱っている木はいち早く偽りの紅葉の姿を見せ、そのまま樹全体が枯れていくことさえあります。
 本堂の南では、やはりカエデの木が先駆けて紅葉し、モミジはまだ薄黒い緑色、桜もこのあたりはあまりきれいに紅葉していません。日当たりの関係でしょう。
 同じ木でも、葉によって紅葉しているもの、していないものが見られますが、これには日当たりが大きく影響しています。日当たりのよい葉は早く紅葉しますが、日当たりの悪い葉は紅葉が遅れ、時には紅くならずに茶色くなって枯れてしまうことさえあります。
 本堂の南側では、目のさめるように美しい紅葉は例年あまり見られません。
 数年前、JR東海のCMに出たのは本堂の南側ですが、よく見ると、「どうしてこんな場面を撮るのだろう・・・」と思うほど、黒ずんだ紅葉でした。

         本堂の裏側 / 1ヶ月後には“敷き紅葉”で真っ赤に   マウスを載せれば写真が変わります
 本堂の裏のモミジが紅葉するのは、境内の中でも一番最後。例年、12月初頭の頃です。
 ここもあまり日当たりがいいとは言えませんが、水分も適当にあって、木自体が元気なように見えます。
 この場所の見どころは、何と言っても“散り紅葉”“敷き紅葉”です。散って地面に落ちた紅い葉が、紅い絨毯を敷き詰めたように積もり、素晴らしい景色になります。
 しかしそれも長くはもちません。落ちた葉が水分を失ってカラカラに乾いてしまうまでに、そう長くはかかりません。
 紅い落ち葉の敷き詰め具合と、葉の新鮮さとの兼ね合いで、本当に美しい“散り紅葉”“敷き紅葉”に出会えるのは、2〜3日間もないかも知れません。
 この光景は、自由に散策できる参道からも見られますが、拝観コースの中、本堂の回廊から見下ろすのが一番きれいだと思います。
 美しい紅葉に出会える可能性が高いのは、“散り紅葉”“敷き紅葉”を除いて、よく晴れた日

   真っ赤に紅葉したカエデ / 見上げれば赤と緑  マウスを載せれば写真が変わります
の朝か夕方近くです。あまり朝早くても日がさしてきませんので朝は9時頃、夕方は日が傾いてきた4時頃からしばらくの間でしょうか。
 本当に綺麗な紅葉に出会えるのは、住んでいるボクでさえ10年に1度程度。今年は残念ながら、その“1度”ではなさそうです。
 木によって一番美しいタイミングはそれぞれ違いますので、「いつが一番見頃ですか?」と聞かれると、「えーっと、花の木は11月中頃ですし、本堂の裏は12月です。他の木は・・・」と、ズバッと言い切ることは難しいものです。
 桜の花と違い、紅葉は20日間ほど楽しめます。皆さんご遠方から日程をやりくりしてお越しになるわけですから、その時に出会った紅葉が「最高だぁ!」とご自分に言い聞かせてください。
 ただ、10月に雑誌の真っ赤に染まる紅葉を見て急いでお越しになり、真っ青なモミジをご覧になって帰られた方は、11月の後半にもう一度挑戦なさってはいかがでしょうか。

      夕焼けに向かいて言うことなし (11/1)   マウスを載せれば写真が変わります
 今日は紅葉のガイダンスのために、本堂の周囲の木々の様子をお届けしました。これからしばらくの間は、出来るだけ境内の紅葉の進み具合がわかるような写真を中心に掲載したいと思っています。
 でも、そのために「きれいだなぁー」と思う写真が選外となってしまうのも残念です。これからの季節、きれいな部分だけ切り取った写真なら、いくらでも撮れるのですが・・・。
 今日の更新の最後に、お気に入りの1枚を。3日前の夕方、出かけようと本堂の前を歩いていて、思わず「おおっ!」と声を上げてしまった素晴らし夕焼けの写真です。
 小さいデジカメしか持っていませんでしたが、一刻も早く写真を撮ろうと本堂の階段を駆け上がり、夢中でシャッターを切りました。夕焼けの紅が黒に変わるまで、3分とかからなかっったでしょう。
 思いがけず素晴らしい夕焼けに出会って、その夜は、ウキウキした感動が心の中から消えることがありませんでした。
 皆さまがお越しになる時も、素晴らしい紅葉に出会われますように・・・。まだ早いですよ!
 7日は早くも、立冬です。


        村   々   の   そ   の   寺   々   の   秋   の   暮        鷹羽狩行