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     朝早い本堂前 / 白砂が眩しい炎天下   マウスを載せれば写真が変わります
 8月に入ってから、最高気温が連日35度を超え、今日は36.9度。1〜5日の平均は35.9度という暑さです。
 「夏って、こんなに暑かったですか?」「温暖化のせいで暑いのでしょうか? 地球がおかしいのでしょうか?」と、顔を歪ませて聞かれ、気象の専門家ではないボクは返答に窮しました。でも、ボクが子供の頃には、連日35度というようなことはありませんでした。
 今までの記録を見ると、とにかく暑かったのは1994年。同年の記録はこれまでの京都の最高気温のベストテンの1・2・3・4・9位を占め、1位の記録は39.8度でした。いずれも8月4日〜8日の間に記録され、4位までは39度代。それと比べると、36度台なんてまだまだ甘い! ベスト10にすら入りません。
 今が暑さのピークです。もうしばらく我慢しましょう。7日は、一応、立秋です。

今年は精気に欠けた百日紅   マウスを載せれば写真が変わります
 この暑さで、朝夕の犬の散歩の方などを除いて、境内を訪れる人の姿はきわめて少なくなっています。
 本堂前でしばらく人間ウォッチングをしていると、観光らしき人は本堂前の白砂の上を通って行かれますが、地元の人たちはその両脇の木陰を通っておられました。白砂の上は遮るものもなく、陽の光が砂に反射して眩しくてたまりません。
 白砂脇のベンチで休憩されていた老夫婦が、立ち上がり際に膝を叩きながら、「デパートで鰻を買って帰ろ!」と、自らを励ますように気合いを入れて去って行かれました。
 暑い盛りに色鮮やかな百日紅ですが、そろそろ終わりのようです。花期が長いからこそ、その名があるはずですが、今年はどうしたことでしょう、まだ咲き始めてから2週間ほどしか経っていない気がします。
 百日紅は中国南部原産で、江戸時代に日本に渡来しました。南方系の植物であるためか、夏の暑さの厳しい年ほど百日紅の花は美しいと言われます。今年は、百日紅にしては暑さが足りないのでしょうか?
 5時頃になって、念願の夕立がありました。
 思わず夕立の匂いを嗅ぎ、しばらく瓦を濡らす雨の様子を眺めてしまいました。でも、ものの10分ほどであがってしまい、屋根瓦は見る見る乾いてしまって、湿気を帯びた熱気が漂ってきましたので、たまらず窓を閉めました。
 せっかく降るなら、もう少し本格的に降って欲しかったです。


       炎   天   の   老   婆   に   無   事   を   祝   福   さ   れ        瀧 春一



  今では珍しくなった蝉取りをする子供たち  マウスを載せれば写真が変わります
 珍しく蝉取りをしている子供を見ました。最近、蝉取りをする子供を見るのはとても稀なことになってしまいました。
 子供の頃、蝉取りに明け暮れていたボクからすると、「夏休みに蝉取りしないで何をするの!」と不思議に思いますが・・・何をしているのでしょう?
 久しぶりの蝉取りの子たち、女の子は「あっちで探そう!」とおじいさんを積極的に先導していましたが、男の子は「座ろうぉやぁー」とお疲れ気味のようでした。
 蝉取りというと思い出す、檀家の元高校の国語の先生から寺報向けにいただいた文章があります。
 「夏は子供の世界である。蝉とりは真如堂であった。寺は蝉取りのメッカである。寺には墓地がつきものである。英語でセミトリーは墓地のことだそうである。蝉とりには寺(墓地)に行く、墓地がセミトリーとはうまくできている。英語の不得手な私が知っている唯一の英単語である。
 蝉とりに汗をかいたら本堂で休憩する。広間に大きな画箋紙を広げて画家は秋の展覧会目指して制作に懸命である。アトリエを持たぬ画家は大作に挑戦するときはお寺の広間を利用するのだそうである。足音をしのばせて覗き見るのである。」
 夏になると、蝉取り・・・セミトリー・・・お墓・・・と思い出す頃にお盆がやってきます。忘れっぽいボクでも、ギャグから難なく思い出せるよう、うまい仕組みを遺して逝かれました。


       親しみのわくハンミョウ     マウスを載せれば写真が変わります
 お盆の本番は13・14・15日ですが、自坊では今月に入ってから棚経に回り始めています。
 回っている途中、車中のラジオで、8月10日は「道の日」で、8月中は「道路ふれあい月間」だと言っているのがぼんやり聞こえてきました。
 「道路ふれあい月間」にはキャンペーン・キャラクターがいて、そのモデルはハンミョウだと説明していました。
 「えっ、ハンミョウ!?」 ハンミョウといえば、今朝出かける前に写真を撮ったばかり。自坊の庭にはハンミョウの開けた穴がいっぱいあって、いつも10匹ほどが飛び回っています。
 ハンミョウは、地面などにとまっていて、人が近づくと飛び立って数メートル先の地面にまたとまります。これを繰り返し、あたかも先導して道を教えてくれているようにも見えるので、「道しるべ」とか「道教え」とも呼ばれます。
 「ハンミョウがモデルになっているキャラクター? どんなのだろう?」と、帰ってすぐに調べてみました。
 見つかりました! その名も「こっちだヨウ平くん」。国道などに立っている「ここはゴミ箱じゃない!」という看板にも描かれているという超有名人のヨウ平くん・・・知りませんねぇ。イベントがあったりすると、着ぐるみのヨウ平君が出かけて行って、子供たちに記念撮影をせがまれたりする人気者だそうです・・・聞いたことないです。
  こちらは可哀相なネーミングの“屁糞かずら” / 狂い咲きの山吹   マウスを載せれば写真が変わります
 「道」だからハンミョウを選んだのでしょう。別名「道教え」ですから、「こっちだヨウ」と教えているそのまんまのネーミング。デザイナーはハンミョウを見たことがないのでしょうか、蟻としか思えない風貌。綺麗なハンミョウが可哀相です。仕掛け人は、噂の道路公団?
 ハンミョウは、漢字では「斑猫」、英語では「Tiger beetle」。肉食性で、日中は地面の上を素早く移動しながら獲物を探し、獲物を見つけると鋭い大アゴで襲いかかるハンターぶりが、猫科の動物に似ているのだそうです。
 でも、人の前を飛んではとまり、飛んではとまりしながら、逃げないでいる様子はとても人なつこくてユーモラスに思え、とても凄腕ハンターには見えません。なんだか気分がホッとする、癒し系の虫ではないでしょうか。
 でも、これからはハンミョウを見るたびに「こっちだヨウ平くん」を思い出し、つい笑ってしまいそうです。暑気払いになりました。ありがとう、「こっちだヨウ平くん」。



         斑   猫   の   跳   ね   て   行   手   の   曇   り   出   す        矢崎千春