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京都の6月の平均降水量は230mlですが、今年はまだ月半ばながら40ml。雨が少なくて動きやすかったり、ムシムシ感が少なくてうれしい反面、水で満たされない田圃を見ていると、できれば夜の間にいっぱい降って欲しいと願いたくなってきます。 天気予報は猫の目のようにコロコロ変わり、変わってもまだ当たりません。 本堂前の菩提樹の花は、15・16日頃にピークを迎えました。まだ数日間は見られますが、次第に花の色が茶色くなって、香りも薄くなってきています。 蕾が付いている花序があるかと思うと、花が終わって早くも実が付いてきているものもあります。終盤戦に入ったとはいえ、まだ虫たちを誘うには充分なのでしょう、蜂や黄金虫のような虫たちがたくさんやってきています。 枝の張っている面積そのままに、樹下には花殻がいっぱい落ちています。いや、正確には昨日の夕方までは落ちていました。
やや黄色いクリーム色の花殻が樹下に敷き詰められた様子は、とても趣のある風景でしたが、そう言われれば二の句が出ません。 職員さんは、今日も熱心に花殻の掃除をしてくれていました。 正面参道から本堂に参詣しようとすると、この木の下をくぐらないわけにはいきませんが、これだけ咲いて香っていても、まったく気づかずにさっさと通り過ぎて行かれる方もあります。 かと思えば、背伸びをした上に手を精一杯伸ばして花のアップの写真を撮ったり、鞄から小さなノートと鉛筆を取りだしてスケッチしたり、息をいっぱい吸い込んで香りで肺を満たしているような人もおられます。 菩提樹が咲いているという報にわざわざお越しになる方もおられ、普段より少し人影の多い本堂前でした。 菩提樹は誰かと話をしたくなったり饒舌にさせる何かを出しているのでしょうか、年齢に関係なく知らない異性に声をかけたり、ベンチに座って話し込んだりされる光景を幾組も見ました。 「菩提樹の蜜は甘くて美味しいですよ」と花殻を掃除していた職員さんが言っていましたが、ひょっとしたら媚薬のような成分がこの香りの中に含まれているのかも知れません。
この花の姿はもちろんきれいですが、「沙羅」という名の響きでずいぶん得をしていると思います。 でも考えてみたら、その名はインドの「沙羅」に由来しながらまったく違う種類で、また「夏椿」と呼ばれながらも椿とも異なるものです。 そう考えると、他人のフンドシで相撲をとるというのか、他人の名前で呼ばれて自己一致できなさそうというのか、何となく不憫な気もします。 でも、最近は庭木に沙羅を植えている家もあったり、ニュースなどでご覧になった人も多いのか、花を見て「沙羅」「沙羅双樹」「夏椿」と言い当てる人は多く、「菩提樹」と立て札が立っているのに 「これ、なんの花?」と言われることもある菩提樹より、「顔」や名前が売れていることは確かでしょう。 う ち し き て あ し た の 沙 羅 の よ ご れ な し 長谷川素逝
今日は晴れているかと思ったら、急に灰色の雲が出てきたりという空模様の繰り返しでしたが、曇ってきた時は木の下にいると薄暗く、写真を撮るのに早いシャッターが切れなくて困りました。これで雨が降れば、確実に「木下闇」の世界。 6月は寺の行事も少なく、雨の日は人影もなおさら少なくなるので、薄暗い境内は少々不気味な時さえあります。 さて、昨年の京都の観光統計が発表されました。 それによると、昨年の観光客は前年比4.1%増で、4年連続で過去最多を更新したそうです。経済波及効果は1兆円を超え、観光産業全体で8万1000人の雇用に繋がっているとか。 京都観光もこれまでの殿様商売を脱して、積極的にイベントを企画したり、誘致に励むようになった結果が出てきたのでしょう。京都市は、NHKの「新選組!」、嵐山・大原の温泉、花灯路の定着などが効を奏したと分析しているようですが・・・果たしてそうでしょうか?
数年前に鐘楼脇に植えた紫陽花が一人前になり、今年はたくさんの花を付けました。もっと増やせばなおさら見事だろうと、挿し芽をして3年ほど経った苗を、今春、5〜6株移植しました。 今日見たら、そのうちの大きい2株がなくなっていました。少し蕾が付いていたのですが・・・そういう人はきっと大事には育ててはくれないでしょうから残念です。 「花盗人に罪はない。あるとすれば、美しく咲くその花にこそ罪はある」などと言いますが、盗まれたのは花そのものだけではなく、そこに咲いていれば多くの人が花を楽しむことができたであろう、その機会をも奪ってしまったわけです。 咲いている花を盗られるのは想定していましたが、株ごとやられるのは「想定外」でした。ちゃんと育てて下さいよ!! 21日は、早くも夏至です。 み 仏 の 周 り 明 る し 額 の 花 岡本求仁丸 |