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         木陰のカップル / 通り過ぎる日傘の人   マウスを載せれば写真が変わります
 午後から蒸し暑い日になりました。
 天気予報では1日中曇り空で、午後からにわか雨が降るかも知れないということでしたが、昼からのほうが晴れ、夏のような日が差しています。
 雨に降られたら困ると思い、曇天で少し暗い午前中を押して写真を撮ったのに、午後の晴天にまた撮り直し。また天気予報に翻弄されました。
 平安神宮の神苑が無料公開されているためか、境内の人は普段より少し多め。神苑の花菖蒲はまだ2割程度の開花で、見頃は10日頃だそうです。無料公開は今日だけですって。
 ベンチでは、自転車を乗り付けてきた外国人カップルが、本を読んだり、手紙を書いたり。外国人って、どうしてそういう姿が似合うのでしょう。
 本堂の階段を靴を履いたまま上がっていく別の外国人も見ましたが、即座に英語が出なかったので、部外者のような顔をしてやり過ごしました。
 「緑がきれいですよ」と言っても、まだまだ差し支えのない境内。8日頃には梅雨入りするだろうとの予報。雨に濡れる緑もまた魅力的です。


          緑  蔭  に  読  み  く  た  び  れ  し  指  栞      辻田克巳



夕方の本堂前。子守歌はシューベルトの『菩提樹』?/鈴なりの菩提樹の蕾  マウスを載せれば写真が変わります
 本堂前の菩提樹の花が咲き出しました。といっても、まだ高〜い梢にわずかに咲き出したばかりで、どこに咲いているのか見つけられる人は稀でしょう。
 今年の菩提樹は、じつにたくさんの蕾を付けています。その数、幾万、幾十万? ボクもこんなにたくさんの蕾が付いているのは記憶にありません。
 真如堂には、花の咲き具合などの問い合わせの電話がよくかかってきますが、筆頭はなんといっても「紅葉は何日頃が見頃ですか?」などという、もみじについての問い合わせ。サンシュユや馬酔木の花の問い合わせもありますが、紅葉に次ぐのはこの菩提樹の花についての問い合わせでしょう。
 見頃は、来週初め〜半ば頃でしょうか。花期はごく短く、満開になった次の週にはもう実が付いています。
 またその頃には、本堂に向かって菩提樹と反対側にある沙羅の花が見頃になってきます。しばらく、本堂前から目が離せません。

       伝教大師像 / 微妙に色の違う霧島       マウスを載せれば写真が変わります
 境内のあちらこちらで霧島つつじが咲いています。いま、境内に赤い色はこの花しかないので、遠くからでも目立っています。
 額紫陽花以外の紫陽花は、まだ咲いていません。梅雨入り宣言を待っているのでしょう。
 本堂の北側、池との間に、金色の像が立っています。「傳教大師巡錫之像」と石碑に彫られたこの像は、天台宗を開かれた伝教大師最澄さまが東国を行脚された時の姿を表したもので、故 西村公朝師が作られました。
 「比叡山を眺めておられるようにして欲しい」という公朝師の希望でしたが、境内に適所がなく、比叡山を背にしておられるように安置しました。
 伝教大師は、神護景雲元年(767)、近江の国に生まれ、19才の時に東大寺戒壇院で受戒し、その後、比叡山に入って修行されました。延暦23年(804)、入唐して天台山に学び、同24年に帰国して、翌年には「天台法華宗」が誕生しました。
 伝教大師は、法華経による国造り人材養成を願われましたが、その半ばの弘仁13年(822)、56才で遷化されました。
 6月4日はそのお命日です。

甘い香りを放つ櫨の花 / 蜜蜂の羽音が・・・この花には来ていません  マウスを載せれば写真が変わります
 今年の2〜3月、京都市は「守っていきたい京都の眺望景観」をテーマに、市内の特定の場所からの眺望で、保存すべきと思うものはどこかを市民に問いました。
 回答はPR不足もあってわずか106件だけ。その中でも人気があったのは、1.嵯峨鳥居本まんだら橋付近から卓茶羅山方向を見る 2.広沢池周辺から田園風見 愛宕山などを見る 3.双ケ岡から仁和寺方向を見る 4.御所から大文字を見る 5.鴨川にかかる橋の上から鴨川の流れ,北山方向を見る 6.鴨川から大文字、比叡山方向を見る などだそうです。
 京都市はこれを活用して「守っていきたい京都の風景」のガイドラインを策定するそうですが、「歴史観光都市」と自負する割に景観保全に積極的とは思えない京都市が、今回のこの結果を活用すると思っている人は市民に多くはないでしょう。
 皆さんならどこを保存すべきと思われるでしょう? 京都に住む人が残したい思う景観と、観光で来られた方が“京都らしい”と思われる景観は、少し違っているかも知れません。
       陽が当たってくたびれた紫陽花 / みずみずしい花     マウスを載せれば写真が変わります
 景観の問題だけではありません。
 たとえば、祇園祭は疫病退散を願って始められた神事で、そのスケジュールは7月1日の吉符入りから、31日の夏越祭まで続きます。
 この祇園祭の宵山や巡行を土日にして欲しいと、京都市の外郭団体が山鉾連合会に依頼したことがあったそうです。連合会は「祭は神事。できるはずがない」と即答したとか。
 文化や宗教を本当に理解しているならば、祭を観光イベントとしか考えないようなこんな依頼ができるとは思えません。
 「京の台所」と呼ばれる錦市場には、最近、観光客目当てのテナントの進出が続いています。「おばんざい」と呼ばれる京風家庭料理や町屋を改造した飲食店も、一見、京都らしく扮装していますが、薄味だけで出汁のきいていない、京風とは名ばかりのまがい物であるところも少なくありません。
 京都をテーマパーク視するかのごとき東京の資本などが流入する中、どこへ行っても「京都は急速に“張りぼて化”しているなぁ」という気がしている昨今です。
 梅雨の蒸し暑さも、また京都。これを経験しないと“京都通”ではありません。作られた“京都”ではなく、素顔の京都に触れてみてください。


         音  た  て  て  胸  に  止  ま  り  し  天  道  虫      橋本美代子