4/8版
この日を待ちかねたかのように、境内にはたくさんの方がお越しになっています。といっても、紅葉シーズンの5%にも及びませんが、そぞろ歩きを十分楽しむにはちょうどよい人口密度です。 鶯もよく啼き、春のムードをいっそう盛り上げてくれています。 春になったからか、人も声が大きくなったようで、境内からはいろいろな話し声が聞こえてきます。 ベンチに座ってお弁当を召し上がりながら、「介護を受ける毎日から解放されて、今日の私、顔の表情が違うでしょう?」と嬉々として話をされていた、日除けのハンカチを頭にのせたおばあさん。ペットボトル飲料を交代で飲みながら「今日はここでやめにしよう。これ以上見たら、頭の中が混乱してしまう」とおっしゃっていた中年のご夫婦。地図を広げて、「まだまだ回るぞ!」いう意気込みたっぷりの若い女性連れ。みなさんそれぞれに春の佳き日を過ごしておられました。 でも、興ざめなのが観光シーズンになると出現する“カメラおやじ”たち。今日も道の真ん中に三脚を広げて陣取ったり、ゆっくり歩いている人に「そこ、写真撮っていますから!」と、あいかわらずの我が物顔。せっかくのお花見が・・・。
上着を手に持って歩いておられる姿も多く見かけましたが、日が沈むと気温は急に下がって、脱いだ上着をまた着なければなりませんでした。夜桜の下で宴会をされている方は、ちょっと肌寒かったかも知れません。 6日に気象庁から発表された染井吉野の開花予想では、一番遅い開花は北海道の根室近辺で、5月20日頃となっています。沖縄を除いて、一番早い開花予想は、九州や四国の一部の3月25日。 お花見の歓声が、約2ヶ月かけて、ウェーブのように日本列島を南から北へと伝わっていく。それを日本列島の上から俯瞰している自分を想像すると、なんだか楽しくなってきそうです。 世 の 中 は 三 日 見 ぬ 間 に 桜 か な 大島蓼太
今朝は曇っていたので、せっかく撮った写真も何となくボヤーっとした感じ。昼前になって晴れてきて、その後は夕方まで快晴。ちょっと光が強すぎるぐらいでしたが、満開になりたての今日の桜は色褪せもなく、快晴の中でなおさらきれいに見えました。 光線の様子が変わるたびに、ボクはカメラを持って境内に出かけましたが、ゆっくりお花見を楽しんでおられる方々の姿を見て、「あー、更新をやめて、ここで寝ころんでいたい!」と何度思ったことでしょう。それほどのお花見日よりでした。 日頃この僧坊をお訪ねいただく方々の入洛も、今日から日曜日頃までがピーク。今日も何人もの方が自坊を訪ねくださり、ご覧になったあちこちの桜の話を聞かせてくださいました。 京都に住む者が他府県から来られた方に京都の桜の話を聞かせていただくのも、妙な気分です。 でも正直なところ、京都の桜の名所の話をお聞きしても、そこに行ってみたいという気持は起きません。都大路は大混雑、桜の名所はどこに行っても人また人。そう想像するだけで、「やーめた」。
それが因果か、いまだに平安神宮にも、二条城にも行ったことがありません。 話が飛躍しますが、墓参でも、近い方がよく参られるかというと、決してそうではありません。遠い方は「お墓参りに行こう!」と意を決して来られるのか、逆に欠かさずお参りされたりします。 ボクも他府県の桜なら、JRに乗っても、飛行機に乗っても、見に行きたいと思うかも知れません。各地の樹齢数百年の桜めぐりをしてみたいです。 ま さ を な る 空 よ り 枝 垂 桜 か な 富安風生 4月8日に降誕会を行っているのは日本だけで、インドやミャンマーなど南方諸国ではヴェーサク月(5月)の満月の日に行われています。 真如堂でも本堂外陣の正面に花御堂をしつらえ、右手で天を、左手で地を指したお釈迦さまの誕生仏をおまつりして、頭から甘茶をそそぎます。 甘茶は、お釈迦さまがお生まれになった時、天の竜王が歓喜して、香水をお釈迦さまの体にかけて清めたという故事によります。 竜王が香水を灌ぐのはインドの仏跡から出土した石彫の仏誕生図にもあり、これが中国や朝鮮半島を経て伝わってきたのでしょうが、甘茶を灌ぐようになったのは江戸時代からだそうです。 甘茶は、額紫陽花の一種で、自坊の庭にも植えてあります。花が咲いたら、また写真をご覧いただきましょう。 今日は、境内も花いっぱい。花祭りにふさわしい佳き日でした。 このお天気も土曜日まで。日曜日から3日間は雨の予報です。でも、まだ散りきったりはしないでしょう。もうしばらくお花見が楽しめそうです。ぜひ、お越し下さい。 山 寺 の 障 子 締 め あ り |