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実にきれいな椿でした  マウスを載せれば写真が変わります
 「週末になるとお天気が崩れる」と、本堂の職員が嘆いています。
 「春に3日の晴れなし」という言葉がありますが、2月は5日弱晴天が続くのに、3・4月は3日と続きません。
 「養花天」という言葉は、花や木々の新芽を育てるそんな春の気候を、実にうまく表現したものだと思います。
 今日はおだやかなお天気でしたが、それも明日の午後には崩れてくるようです。
 今日から新年度。昨日と1日変わっただけですが、気分はずいぶん違います。
 新入社員、新入生、新制度、新市町村・・・いろいろなものに「新」という字が付いています。新しい市の名前を言われてもどこかわからないように、様々な「新」に慣れるまで、しばらく時間がかかりそうです。
 そういえば、今日はエイプリルフール。嘘をついても許される日として、かつては冗談を言って楽しみましたが、最近はそんな風習も影をひそめた気がします。時として、場が和む風習でしたが・・・。


       万  愚  節  に  恋  う  ち  あ  け  し  あ  は  れ  さ  よ      安住 敦  


「万愚節」とは、エイプリルフールのことです
きっと桜を楽しみにお越しになったのでしょうが・・・ マウスを載せれば写真が変わります

 先週末頃から、京都には観光の人たちの姿が、急に目立つようになってきました。
 ところが残念ながら、3月31日の開花予定日を過ぎても桜はまだ咲かず。今週、あまりあたたかい日がなかったのが禍したのでしょう。
 ここ数年、桜の開花が早くて3月下旬までには咲きだしたため、先週末頃から各所ではライトアップが始まりました。ところが、この状態。このためライトアップの期間を延長するところも出てきています。
 タクシー会社では、3月中の売り上げが2割程度減ってしまうと嘆いているそうです。お天道様に文句を言ってもしかたがありませんし。
 今日から3日まで、三条大橋〜四条大橋間の鴨川河川敷では「鴨川さくらまつり」が開かれますが、ここにももちろん桜はありません。
 また、琵琶湖疏水の桜を木造船から楽しむ左京区岡崎の「桜回廊十石舟めぐり」も、今日から始まりました。動物園や美術館からせり出す桜の枝の下をゆっくり25分かけて行き来するのですが、こちらもまだ・・・。
染井吉野の蕾。先週とあまり変わらないように思えます/縦皮桜の蕾  マウスを載せれば写真が変わります
 境内の桜は、まだ一輪も咲いていません。
 明日から3日間はまた雨で、火曜日からお天気が回復してあたたかくなる予報ですが、境内の染井吉野の開花は、おそらく月曜日頃になるのではないでしょうか。
 以前にも書いたかも知れませんが、染井吉野という桜の品種が、東京・染井を出て、日本全国に拡がったのは、幕末から明治初年と言われています。
 今、東京の標準木となっている靖国神社の木でさえ、明治初期に初めて植えられ、同20年代頃から東京の各公園などに植栽され始めたそうです。大阪に染井吉野が植えられたのは日露戦争以後。京都はいつだったのでしょう?
 染井吉野が流行する前に自生していた桜は、彼岸桜や山桜などで、それが次第に染井吉野に替えられていったわけです。
 染井吉野が植えられる前の境内はどんな様子だったのだろうと、時々考えます。松食い虫によって松が壊滅する前の、おそらく50年ほど前の写真を見ると、境内には高い松の木が鬱そうと生えていて、今とはまったく違う寺かと思うほどです。
馬酔木もまだまだきれいです/落ちた花まで可愛い  マウスを載せれば写真が変わります
 その陰になって、桜も、もみじもあまり育たなかったのかも知れませんが、松がなくなり、日当たりがよくなってから、真如堂が次第にもみじの名所と言われるようになったのかも知れません。木々にも栄枯盛衰を感じます。
 今、植わっている染井吉野はボクの幼い日の記憶と年齢から推測すると、樹齢70〜80年。染井吉野の寿命の定説よりは長寿だと思います。
 樹齢70〜80年と染井吉野の普及などを併せ考えると、真如堂に初めて染井吉野が植えられた当時の木ということになるでしょう。誰がどういう思いで植えたのでしょう・・・植えたのはたぶん植木屋さんでしょうが。
 以前、植木屋さんに「桜を植えてください」と頼んだ時、染井吉野にするか、他の種類にするかと聞かれたことがありました。最近は、染井吉野以外の桜を植えて欲しいという方も増えているそうです。面白い現象ですね。

いろいろな花や新芽がいぱい!  写真をクリックすると別窓が開きます
 今は桜ばかりが取り沙汰されますが、どうしてどうして、境内では他の花もたくさん咲いています。
 本堂裏の山茱萸さんしゅゆ、本堂左(北)側の馬酔木、元三大師堂前の紅梅などは、いずれも今が見頃です。
 境内のあちらこちらで、赤・白・ピンク、一重、八重など、いろいろな種類の椿が咲いています。
 先日からこの椿ばかりをスケッチしている人がおられたので、「椿がご専門なのですか?」と聞いたところ、「いや、そうじゃないのです。桜が咲かないので」と、花粉除けのマスクの下から、モゴモゴとお応えになりました。
 一見しただけですが、素人技には思えない絵で、蘊蓄のまったくない無口な人でしたから、きっとプロでしょう。素人さんは語りたがりますから。
 次回の更新は、きっと桜満載となるでしょう。でも、桜もいいけど、椿もいいですよ。


      初  花  の  薄  べ  に  さ  し  て  咲  き  に  け  り      村上鬼城