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冬の趣の境内。左端は比叡山。塔の右側に本堂の屋根と大文字山が見えています  吉祥院大屋根より
 今朝はほんのうっすら雪化粧。雪はすぐに消えましたが、比叡山も愛宕山も雪雲の中にすっぽり隠れたまま。時々あたたかそうな陽が差しますが、冷たい風の吹く寒い日になりました。
 檀家のおばあさんは、「今年は暖冬って言ってましたのに!」と、おかんむりの様子。テレビで暖冬だと聞いて喜んでいたのに、今朝の寒さについ愚痴りたくなられたのでしょう。
 溜飲を下げてもらうために、「暖冬といっても毎日暖かいのではなく、寒波も来れば、暖かい日もあります。それを冬の期間で平均してみれば、気温は平年を上回るだろうということなのですよ」と、暖冬の何たるかを気象庁に成り代わって説明しました。
 12月下旬に発表された3ヶ月予報では、これから平年より気温が低くなる確率は20%、平年並30%、高くなる50%で、特に2月が平年より高くなるだろうとなっています。確かに暖冬の予報です。
 昨日は大寒。これから立春にかけてが一番寒い時期です。皆さんに「寒い!」と震え上がってもらってこそ、“冬”も本望というものです。


         大   寒   の   白   々   と   し   て   京   の   町      泉 木犀



冬枯れの沙羅越しの塔/風に揺れる枯れた実が寒さを募らせます マウスを載せれば写真が変わります
 お正月の頃は京都観光に来られている方の姿を多く見ましたが、この頃はすっかり影をひそめました。
 真如堂でも、本堂の拝観者が1日に数人ということが、最近は珍しくありません。
 紅葉シーズンにお越しになった方が今の境内をご覧になったら、その閑散とした有り様にきっとビックリされるでしょう。逆に、人がほとんどいない境内しかご存じない方に、紅葉期に境内が人で埋め尽くされる様子をいくら説明しても、大げさに言っているような顔をされてしまいます。
 昨年は町屋ブームや新選組効果も手伝って、京都の観光客数は4500万人を上回り、過去最大になったそうです。
 そのうち、女性は66.11%で、その女性客の中でも40歳以上が63%。京都を訪れる女性観光客の2人に1人は40代〜50代という計算になるそうです。なるほど・・・。時間にもお金にも余裕ができたお年頃。観光地を回って、京料理を召し上がって、京都グッズを買って、おまけに舞妓変身? それはちょっと無理かも。
 そんな京都の観光客数も、紅葉期がピークで1年の15%を占め、冬には減って、桜の季節に増えていきます。今は一番人が少ない時期でしょうか。
 そういう時期にも観光に来ていただこうと、毎年「京の冬の旅」が企画され、「非公開寺院」なども公開されます。“非公開”といっても常時公開していないというだけで、頻繁に「非公開寺院」として公開されている寺院もあって、正直なところ、あまり目新しさは感じません。でも、せっかくの非公開寺院、訪れないと後悔するかも知れませんよ。
 また、NHKの大河ドラマにあやかったコースも毎年ながら企画されていますが、今年もちょっとインパクトに欠ける気がします。
 それでも、冬の京都には他の季節とはまた違った趣があります。桜や新緑、紅葉などといった“飾り”をとった、観光シーズンシフトではない京都と出会えるのは今の季節が一番だと思います。
 底冷え厳しい京都、足下の防寒や“ババシャツ”をしっかり着込んでお越し下さい。節分の頃などもお勧めです。

こぼれ始めた梅の花     マウスを載せれば写真が変わります
 バイクでルンルン走っていたら、住宅街の中に満開近い白梅を見つけました。自坊の梅はまだ咲き初めたばかりなのに。まだ花色さえ見えない梅もあります。
 「あー、探梅の季節だなぁ」と嬉しくなりました。
 「探梅」、ボクの大好きな言葉です。「どこかに梅が咲いていないかなぁ」と、梅の花を求めて野山などを探し歩くことですが、手元の国語辞典を引いてみたら、「梅林まで行って、梅の花を観賞すること」と書いてありました。正しいのでしょうが、なんとつまらない説明でしょう。
 寒い冬、たった一輪でも梅が咲いているのを見つけた瞬間の喜び。春はまだまだ遠いですが、この寒さの向こうには確かに春があるのだと思えます。また、雪の降る中などに咲いている梅を見ると、「アリガトウ…」と言いたくなったり、「頑張らなきゃ!」と思ったりもします。桜ではそうは思えません。紅梅でもダメかも知れません。清楚な白梅でこそ起きてくる気持のように思います。もちろん、ボクのイメージする「探梅」の対象は一重の白梅です。
 皆さんも、野山などに行かずとも、お近くで探梅をしてみられてはいかがですか? きっと、とても贅沢な時間になりますよ。

      こ  の  道  を  わ  れ  ら  が  往  く  や  探  梅  行      高浜虚子



真ん中がなくなった桜もちゃんと不定根が/こんなに太くなった不定根  マウスを載せれば写真が変わります
 前回に引き続き、木の話題です。今日は桜編。
 桜の古木には、江戸彼岸桜、枝垂れ桜、山桜などが多く、染井吉野はありません。染井吉野は短命で、その寿命は50〜60年程度だといわれます。
 境内の染井吉野にも、古くなった幹が腐って空洞ができ、そのまま枯れてしまう木もあります。でも、「あれっ? 何だか若い元気な枝が出てきているぞ!」と、ビックリさせられる木も少なくありません。
 元気な枝を出し始めた染井吉野をよく見ると、幹の腐ったところに根のような、幹のようなものが生えています。
 「不定根ふていこん」です。不定根は、幹が腐って堆肥のようになったところに向かってヒゲ根のようなものが生えて成長し、それがついには地面に到達して太くなり、やがて幹のような役割をしていくものです。
 染井吉野はこの不定根が出やすく、幹が古くなって終末期を迎えようとしている染井吉野の起死回生策ともいえます。
 ブナなどの針葉樹では「倒木更新」といって、倒れた木が朽ちたところに落ちた種が育って、木が
冬の日差しがよく似合う蝋梅     マウスを載せれば写真が変わります
更新されていきますが、染井吉野の場合は、親の幹が腐ってきたら 、同じ木のまだ元気な部分が根を伸ばし、そのうち幹が入れ替わっていくという更新の仕方をします。
 境内の古木を見て回ったら、幹が空洞になった染井吉野の7〜8割にこの不定根が見られ、それによって更新が進んでいる木はその半分でした。
 寿命が短いといわれる染井吉野ですが、ちゃ〜んと考えているのですね。
 あちこちの細かいことから話題を探す、しばらくはこんな更新が続きそうです。



       蝋  梅  を  透  け  し  日  射  し  の  行  方  な  し      後藤比奈夫